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8億9千万を貢いだ女~お局銀行員、狂恋の果てに~ [戦後史]

8億9千万を貢いだ女~お局銀行員、狂恋の果てに~

滋賀銀行9億円横領事件を描いた『8億9千万を貢いだ女~お局銀行員、狂恋の果てに~』(神崎順子、ユサブル)を読みました。35歳の女性銀行員が、10才年下のタクシードライバーの男性のために約9億円を横領した事件です。膨大な金額ですが、自分のためではなく、ひたすら1人の男に貢いだというのが切ない話です。


滋賀銀行9億円横領事件は、1973年10月21日に発覚した横領事件です。

地味な女性銀行員が、たまたま乗ったタクシー運転手が競輪狂でした。

金を無心され、架空名義による定期預金の支払伝票を偽造する方法によって、足掛け6年にわたって金を引き出し続け、その金額は約9億円になりました。

戦後の“女性銀行員3大横領事件”と数えられている中でも、横領額はダントツです。

その金額から当時は大変な話題になり、私も覚えています。

TBS系列のバラエティ番組『爆報!THEフライデー』で特集されたそうですね。

Amazonkindle、マンガ図書館などからオンラインで閲覧できます。



あらすじ


ある日、主人公の女性行員が利用したタクシーで、つい愚痴ったのを聞いてくれた運転手が相手の男でした。

連絡先はわかったものの、交際したいとうまく言えない女性行員は、男に「預金してください」とセールスの電話を繰り返しかけます。

いくら何でも、セールスはないだろうと思いますが、そういう不躾で不器用なところを男は見透かして、甘えておだててお金を引っ張るようになります。

最初は競輪で遊ぶお小遣い。

女性行員は、戻ってこない金と思っていますが、ポケットマネーですし、男と一緒にいられるだけで幸せと思っています。

ところが、要求はだんだん額が大きく頻繁になり、女性の定期預金を解約するだけでは間に合わなくなってきます。

それでも、男に捨てられたくないという強い思いから、女性はノーといえません。

彼女を気に入って大金を定期にした客の偽装証書を作り、お金を引き出してしまいます。

そして、いったん客の金に手を付けてしまうと、「これっきり、これっきりだから」と思いながら同じことを繰り返します。

足掛け6年間で1300回に渡って偽造証書を作り、合計8億9000万円を横領。

そして、どうにもならなくなった頃、転勤の話が。

他の人が担当すれば横領がバレてしまいます。

女性は、男に一緒に死のうと自宅に押しかけますが、なんと男はその6年の間に別の女性とこっそり結婚。

妻子がいることがわかりました。

警察はまず、男を贓物収受容疑で逮捕。

男は簡単に女性の居所をウタい、女性も逮捕されました。

女性は懲役8年、1000万円の賠償。

男は懲役10年、3000万円支払うことになりました。

家庭が過干渉のベテラン銀行員が翻弄された運命




冒頭に、“女性銀行員3大横領事件”と書きましたが、具体的には、

滋賀銀行横領事件(1973年10月)8億9000万円
足利銀行詐欺横領事件(1975年7月)2億1000万円
三和銀行詐欺横領事件(1981年3月)1億8000万円

のことです。

いずれも検索すると、詳しい内容がわかります。

中でも、伊藤素子という人のしでかした三和銀行オンライン詐欺事件が有名で、大谷直子と江本孟紀でドラマ化されたこともあります。

しかし、冒頭の繰り返しになりますが、金額の大きさが、本書で描かれた事件はその比ではありません。

家庭が過干渉のベテラン銀行員が翻弄された運命


三大横領事件の女性たちに共通して言えることは、

1.親が過干渉で人生観がオクテであること(要するに毒親)
2.それまでは真面目につとめあげていたベテラン銀行員であったこと
3.背後に金を求める男性がいて、女性たちはその男性から離れられなかったこと
4.自分自身は横領した金で何一つ楽しい思いはしていない「貢ぐだけ」だったこと

があります。

この当時はまだ、女性の幸せは、どんな星の王子様を捕まえられるか、という価値観の刷り込みがありました。

そのおおもとは、親から子に強引に言い聞かせられます。

いい学校へ行きなさい、安定した会社に入って真面目に働きなさい、いい年になったら結婚しなさい……

もちろん、ちゃらんぽらんではなく、真面目に勤務するのは悪いことではありません。

が、自覚的なものではなく、親に言われたから、世間がそうだから、という他動的な場合は、たとえ勤続何年であろうが、ひとたび「脱落」するきっかけがあれば、こんな事件に発展してしまうこともあり得る、ということだと思います。

ただ、彼女たちも、こんな湯水のごとくカネを使うようなダメ男ではなく、別の男性と知り合っていたら、たぶんこんな事件は起こさなかったのでしょう。

過干渉の「ほしのもと」といい、出会った男といい、人生を翻弄するのは運なんでしょうか。

いずれにしても今は、銀行のセキュリティもしっかりして、何より演歌の歌詞にでてくるような「男ーしかもだらしない男ーに賭ける言いなり女」という生き方自体がお目にかかりにくくなったので、本書で描かれた事件はもうないかもしれません。

ただ、いったん悪事に手を染めると、「慣れ」という「麻痺」によって加速度をつけて転落するというのは、今も生きている教訓といえるでしょう。

8億9千万を貢いだ女~お局銀行員、狂恋の果てに~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
8億9千万を貢いだ女~お局銀行員、狂恋の果てに~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)




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扶侶夢

>「男ーしかもだらしない男ーに賭ける言いなり女」という生き方自体がお目にかかりにくくなった
近頃は“毒婦に貢ぐ言いなり男”に様変わりかも知れませんね。犯罪の基本的な構図は変わりませんが。
私が一番記憶に残っているのは、三和銀行の伊藤素子の事件ですね。これも哀れな事件でした。様々な偶然が重なって犯罪に手を染める…翻弄されて終える人生とは何か考えさせられます。
by 扶侶夢 (2019-10-10 10:49) 

なかちゃん

預貯金の通帳や証書なども手書きや機械で手作りした頃のお話かと思います。
この世の中で一番許せない部類の男ですね。
でも、もしかしたらこの銀行員ももうちょっとしっかりしてたらこの男もここまでの犯罪を犯さなかったかもしれませんね。やっぱり悪いのは毒親かな?

by なかちゃん (2019-10-10 12:50) 

pn

貢がれてみたい(笑)
アニータだっけ?チリの女性に貢いだ男、あれも億レベルだったよね確か。
by pn (2019-10-10 14:03) 

Take-Zee

こんばんは!
この類の事件は取る方も取られる方も
悪いです。

by Take-Zee (2019-10-10 18:10) 

kou

こんな事件もありましたね。凡人には理解できません。

by kou (2019-10-10 18:23) 

ヨッシーパパ

シリーズ化されているんですね。
by ヨッシーパパ (2019-10-10 19:01) 

藤並 香衣

親の言う「良い子」に育ってきたために
人を見る目が育たず結婚もできないまま
周囲が人並の幸せをつかんでいくのを見ると焦りから
たまたま縁があった男がどんな男であろうと
逃したくないと思うのかもしれません
by 藤並 香衣 (2019-10-10 23:08) 

そらへい

心の弱みにつけ込まれるのは、
女性に限ったことではない気がします。
このような大金の横領事件にはならなくても
いつでも誰にでも起こりうることかも知れません。
by そらへい (2019-10-10 23:30) 

ナベちはる

8億9000万、信じられない額ですね…
by ナベちはる (2019-10-11 00:45) 

ヤマカゼ

昔、そんな事件ありましたね。金額の額が半端じゃないですね。
by ヤマカゼ (2019-10-11 06:37) 

Rinko

今でも9億円はすごい額なのに、1973年でその額とはスゴイですね。
人生を翻弄するのは「運」だけでしょうか・・・うーん。違うと思いたいです。
by Rinko (2019-10-11 08:13) 

犬眉母

9億ぐらいになると、もう感覚的に
わからなくなってしまうんでしょうね。
by 犬眉母 (2019-10-14 00:30) 

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