『食キング』という土山しげさんのマンガが、先日ご紹介した『
マンガ図書館Z』で、今月いっぱい全巻公開されているのでご紹介します。再建人がつぶれかけた大衆的な食堂を立ち直させる話ですが、料理は食べて貰う人を第一にという作者の考え方が心地よい作品です。
同サイトの作品群は多くの力作・名作がありますが、取り急ぎ今日、ご紹介したいのは、土山しげるさんの『食キング』です。
なぜ「取り急ぎ」かといいますと、『マンガ図書館Z』の公式サイトにこう記載されているのです。
本作品は2019年09月30日にて掲載を終了しますので、お早めにお読みください!「お気に入り本棚」に登録されている場合には終了日に自動で削除されます。
同サイトの広告収入は、一応著作権者に支払われるようですが、その金額が少ないからか、いったん公開された作品が、また削除されてしまうことがあります。
作者の土山しげるさん(1950年2月20日~2018年5月24日)は、現役のまま亡くなったため、連載中のまま絶筆となった作品がいくつもあります。
今回の『食キング』は終了していましたが、私個人としては、土山しげるさんのマンガの中ではいちばん好きな作品なので、ご紹介させていただきます。
メールで依頼を受ける再建人
函館一と呼ばれる老舗レストラン、五稜郭亭の創業者・北方清次郎の孫である北方歳三が主人公です。
五稜郭亭の料理長として、伝説のシェフとまで呼ばれた名料理人ですが、採算や利益などの数字しか重視しない弟と対立。
北方歳三は五稜郭亭から身を引くことに。
そして、メールで依頼を受け、全国各地の庶民向けの飲食店を立ち直らせる再建人になった話です。
高級店ではなく、ラーメン店やうどん店、餃子の店など大衆的な店が対象になります。
しかし、すんなり依頼を請け負うのではなく、まずはその飲食店のダメなところを指摘します。
店主が、反発したり、勘違い解釈したりすると、激怒していったんはその場から退き様子を見ます。
そして、店主がいよいよ息詰まるとまた出てきて、修行が始まります。
ただ手を差し伸べるのではなく、ギリギリまで追い詰めて考えさせているわけです。
また、正式に引き受けるにあたっては、どんなにダメな店主でも、何か一ついいところを見つけて「まだ脈がある」と解釈してから修行を始めます。
たとえば、お茶は出がらしではないとか、お客のために作ることの喜びを忘れないとか……。
店主に対しては大きく2つの修行があり、前半は一見料理とは無関係な特訓をさせます。
しかし、実際には再建の為に必要な特訓であることがあとからわかります。
お客を見る料理人にする
特訓の前は、店主が質問しても、北方歳三は「質問は一切受け付けん!!」と、問答無用に従わせます。
そして後半は、実際に料理をさせます。
その結果、できたものは見違えほどよくなっている、というストーリーです。
人が食べて、おいしいという表情が、ハナを垂らしてくずれた相好の無防備な描き方をするのも土山しげるさんの作風です。
北方歳三が重視しているのは、
1.材料が、市販の調味料など安易なものにはしらない
2.お客が喜ぶために作っているということを忘れない
「1」は、オーガニックでなければダメだ、などというグルメ漫画にありがちな教条主義ではありませんが、要するに手を抜くな、ということです。
「2」では、たとえば注文は相手の顔を見て受けて、できあがったら相手の顔を見てにっこり配膳することを教えています。
つまり、自己満足を徹底して排除し、お客と向き合うことを唱えています。
これは、私がブログを書くときにも肝に銘じているところで、誰に対して何を書きたいのか、ということをいつも考えながら記事を書いています。
この場合の「誰」というのは、たとえば5年前の自分であったり、アンケート調査でトップになった回答であったりします。
やはり、人を見ない「ものづくり」は、独りよがりになってしまうものです。
といっても、So-netブログの誰々さん……のような実在の人物を特定するのは、記事の作り方にもよりますが私信にならざるを得ないので、それはそれで不特定多数に発信するブログ記事としてはいかがなものかと思いますが……。
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悪者が出てこないホッとする話
食べ物の話といえば、『孤独のグルメ』が当たりました。
一部では、「中年のオヤジが独白して飯を食うだけで何が面白いんだ」ともいわれますが、人間の「善」の部分だけが表現されて悪役がいないので、この殺伐とした現代では見ていてホッとするのです。
『食キング』にしても、主人公の弟は儲け主義ではありますが、人を陥れたり、人に手をかけたりする悪者が出てこないし、葛藤の末立ち直っていく前向きな話なので、安心してみていられるところですね。
たくさんのマンガが公開されていますが、まだご覧になったことのない方は、おススメします。
食キング 1
食の漫画でこれまで読んだのは、美味しんぼとクッキングパパかな?
by ヨッシーパパ (2019-09-12 18:43)
今晩は。この作者の描く食べ物はとても美味しそうに
見えます。
by mistta (2019-09-12 21:49)
土山しげるさんのマンガはたくさん読みました。
どちらかというと大食いのものばかり憶えていますが、どれを読んでも面白いですよね。
ただ、どれも後には残っていないんです。もう一度読みたいというふうにはならないんです(^^;
by なかちゃん (2019-09-12 23:09)
食べてもらう人を第一に、かぁ。「もらう」んだもんね、頑張らないとなぁ。
by pn (2019-09-12 23:15)
悪役が出るとそれだけでも「もやッ」とするものが出てくることがありますが、そういうものが出てこないというだけでも安心して読めますね。
by ナベちはる (2019-09-13 00:48)
9月30日までとは、随分期間が短いですね。
痛快、爽快そうな内容のようですね。
by ヤマカゼ (2019-09-13 07:28)
料理系の漫画や小説はなぜか心惹かれます^^
これは読んだことないので、ぜひ探してみたいです。
「自己満足を徹底して排除し、お客と向き合うこと」、どのサービス業に対してもいえる事ですね。少し分野は違いますが自分のヨガクラスを行っていく上でも大切な事だと思いました。
by Rinko (2019-09-13 08:07)
こんにちは!
ぐっと涼しくなりましたね!
by Take-Zee (2019-09-13 14:49)
孤独のグルメはBSの再放送を録画して見てます。ホッとする漫画(ドラマ)です。
他に読んだ色に関する漫画はやはりクッキングパパでしょうか。別冊本は2冊ありますが、調理方法が詳しく載っているのでかなり参考にさせてもらいました。
by kou (2019-09-13 18:27)
漫画チックと言えばそうなのですが、
再建される料理人に、良心が残っているのが
ホッとしますね。
by 犬眉母 (2019-09-14 15:29)