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道下美里選手、ロンドン・マラソン3連覇を成し遂げた最強の戦略 [スポーツ]

道下美里選手、ロンドン・マラソン3連覇を成し遂げた最強の発想

パラ陸上・視覚障害者マラソンの道下美里選手特集が、昨晩のサンデースポーツ(NHK)で放送されていました。

2020年の東京パラリンピック女子マラソン(視覚障害)で、2大会連続のメダル獲得を狙う道下美里選手(三井住友海上)。

先月の28日に行われたロンドン・マラソンで、3連覇を達成しています。(上の画像はGoogle検索画面より)



同大会で、4位以内に与えられる東京パラリンピックの出場枠をすでに獲得したわけです。

特集は、ガイドランナー(伴走者)にも焦点があてられました。


伴走ですから、誰でも出来るわけではなく、マラソン経験が必須です。

今回の伴奏者は、公務員ランナーとしてネットでも話題になった青山由佳さんと、東海大学時代に箱根駅伝3回出場、世界ハーフマラソン(メキシコベラクルス大会)日本代表などの実績をもつ志田淳さんでした。

今回のロンドンのコースには、自動車の加速防止のデコボコがあります。

視覚障害のある人にとって、段差はやはり難所です。

志田淳さんは、それを「チャンス」と表現し、練習コースに勾配のある道を選びました。

もちろん、難所であることは道下美里選手にとっても同じことです。

ですが、だからどうしようという消極的な考えではなく、みんながピンチの時はチャンスなんだ、という発想がいいなと私は思いました。

普通は、どうやってタイムを落とさないようにしようか、という守りの対策にはしるところを、逆にどうやってタイムを伸ばそうか、という前向きな考えで挑んだのでしょう。

これはポジティブシンキングとは違って、合理的な考えですよね。

つまり、みんなが弱いところで頑張れば、差をつけられるという、ごくごく順当な戦略です。

レースは、拮抗していた2位のブラジルの選手を、狙い通りデコボコのたびに引き離し、大差で勝ちました。

私たちも日常、よくいいますよね。

ピンチはチャンスなんだと。

中には精神論でしかない場合もありますが(もちろん自己暗示などを否定はしませんが)、客観的な分析と前向きな目標設定を求める考え方でありたいですね。

私たちも、身の回りの“ピンチ”を、もう1度見直してみましょう。

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明暗の分かれ目は、やるかやらないか


道下美里選手については、これまで2度書かせていただきました。

『いっしょに走ろう』中途視覚障がいから“人生を生還”させた
道下美里選手(中途視覚障害)がパラリンピックで銀メダル獲得

『いっしょに走ろう』(芸術新聞社)という、道下美里選手の人生の歩みを書き留めた書籍によると、、

道下美里さんは小学校4年の時に目の異変に気づき、中学2年で右目の視力を失いました。

短大を卒業後の25歳で、左目にも右目と同じ症状が出たため職場は退社。

現在左目も色の見分け程度しか見えないそうです。

遺伝子の検査で判明した病名は、膠様滴状角膜ジストロフィーという難病でした。

視覚障害の支援学校に入学後、ダイエットがきっかけになった放課後のランニングから、パラマラソンランナーとしての歩みが始まったといいます。

道下美里さんのような活躍に対して、障碍者の親御さんは、大きく分けると2通りの反応があります。

ひとつは、素直に朗報として受け止め、自分(の家族)への励みとする方。

もうひとつは、道下美里さんは確かに快挙だけれども、それはたまたまマラソンと巡り合ったからであり、そして天賦の才があったからであり、大半の「普通の障害者」がそうなれるわけではないから、それをもって「障がい者でもできる」と過剰な期待をもたれるようなことがあると困る、と“困惑する”意見です。

もちろん、障碍者はハンデがあるから普通の人以上に頑張って当たり前なのだと、一面的に考えるのは偏見や思い込みにつながる短絡的な見方です。

だからといって、道下美里さんのような人を一方的に「特別な人」と棚上げして、そのすべてを見ないようにするのもまたおかしなことだと思います。

私が、先日の『さくらももこさんと水木しげるさんをADHD扱いする記事の問題点』で書いたように、そして、この記事の前半の「ピンチをチャンスととらえる」考え方でも言えますが、障害のあるなし関係なく、要は人生、

前向きに進んでみるか、それともそこから逃げて進んでいる人の中傷で自己正当化しているか

どっちを選びますか、という話です。

今をどういう価値観で生きるか、という命題からしか明日の展望はうまれないからです。

がんばらなければいけませんが、でもこれこれこういう理由があり、むずかしいところです。

……なーんて評論家を気取っている人は、結局何もできず、できないことのいいわけに走るしかなくなるのです。

たとえば、私は支援学校高等部と決めつけている障碍者の親御さんに対して、広域通信制高等学校という選択肢もあると、具体的な学校紹介で提案しました。

それに対して一部の発達障害のある子弟の親御さんからは、「発達障害の子の親ではないみたいだ、あなた何者なんだ」と、発達障害の親として偽物扱い(笑)されました。

つまり、自分ができない(する気のない)提案をするやつは自分と違う考え方の持ち主だから偽物だという、独善にも程がある論理です。

とうとう、中傷もそこまできたかと。

道下美里さんは、正真正銘の、成人してから走るようになった視覚障害者ランナーです。

人生、言い訳や中傷よりもまずチャレンジしよう。

道下美里さんからはそう教わったような気がします。

可能性は無限大―視覚障がい者マラソン 道下美里 (パラリンピックのアスリートたち)
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コメント 8

犬眉母

前向きな人へのヤキモチもあるかもしれませんが、
もともと、がんばらない自分が気に入っているから、
頑張る人が目障りで攻撃的という気もしまます。
by 犬眉母 (2019-05-13 02:13) 

末尾ルコ(アルベール)

道下美里選手、ロンドン・マラソン3連覇を成し遂げた最強の戦略・・・逆境をチャンスに変えるのは至難の業ですが、そこに渡来しないことには人生の中で向上や前進はあり得ませんよね。現在のわたしの置かれた状況も、わたし自身の人生の中ではとてつもない、あるいは今までで最大の逆境であり、毎日不安でたまりません。しかしふと感じる瞬間もあるのです、(こんな濃密な時間は初めてだ)とも。母の入院からほぼ2か月、体力的にも、そして精神的にも我ながら、(よく倒れてないな)という状況が続いているのですが、その中でどれだけのことを学べているか、それは計り知れません。わたしも安易なポジティブシンキングは大嫌いですが、「逆境のない人生なんて意味はない」というのは本当だと思います。少なくとも本当に苦しい逆境あってこそ人生が深まるし、それがない人は残念ながら、人間的にも浅くなってしまうのではと思います。
>客観的な分析と前向きな目標設定を求める考え方でありたいですね。

おっしゃる通りです。」同時にやはり、「気持ち」は大切でしょうね。あるいは「気力」とでも申しましょうか。単純すぎる比較となりますが、「客観的な分析と前向きな目標設定」と気力を兼ね備えている人と、「客観的な分析と前向きな目標設定」はあっても気力に欠ける人であれば、普通は前者に大きく分があるのだと思います。そして、「客観的な分析と前向きな目標設定」を作るのにも気力は必要でしょうし、「毎日の努力」という実に困難な事業を可能にするにも気力が必要です。もちろん、「気合で何でもできる!」なんていう精神論一辺倒は論外です。

>発達障害の親として偽物扱い(笑)

世の中、下卑た方向へ考えが向かいがちな人がけっこう多いですよね。わたしが勤めていた進学塾にも、どんなことでも勘ぐって、裏読みしているつもりの人間がおりました。以前にも書かせていただいたかと思いますが、すぐに「読めたで」とか言い出して、見当外れな愚言ばかり弄する男です。元来日本人は、「チャレンジ」する人間を白い目で見る傾向も強いですよね。

・・・

>左目のまわりがしばらく真っ青でした。

わたしの母が現在この状態です。打って出血したのは額なのですが、本当に内出血が目の周りに下りてくるんですね。事故直後には目の周囲はきれいだったのに、二日目から見る見る青くなってきて、その後「赤黒」「紫」「黄」などいろいろな色になってきました。母によくなってもらいたい一心で、こうしたトラブルの折にはついきつい対応になってしまいますが、入院生活も二か月になろうとしており、体はかなり動け出したけれど、まだ自力では歩けないという状況の母の気持ちをもっともっと考慮しながら安全面も考えねばと痛感しております。ただやはり「いつ転倒するか分からない」という状態はキツいです。ただ退院したらもっと危険な状況になるわけですから、腹をくくってあらゆる対策を検討しなければ、というところです。

>考えていなかった出費や損失

なるほどです。つまりわたしは「70円のドリンク」を買おうとわざわざその自販機まで足を運んだのに「100円」を押してしまったという、この心理過程が「悔しさ」の正体なのですね。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-05-13 03:03) 

ヤマカゼ

ピンチをチャンスにはなかなかできないですね。

by ヤマカゼ (2019-05-13 06:15) 

pn

まあ出来ない言い訳の方がポンポン出せるからねぇ。だからこそどうしたら出来るか考えるものだとおもうんだけど、と弊社のじじいを見て感じます。
by pn (2019-05-13 07:23) 

Rinko

まさに「可能性は無限大」ですね。
柔軟な心でものごとを見て行きたいなーと今更ながら思いました。
やっぱりガイドランナーの方々もそれなりに実力のある方たちなんですね!!
by Rinko (2019-05-13 08:14) 

Take-Zee

こんにちは!
何もデコボコ道を走らせなくても・・・
目がご不自由なんだから平坦なコースを
用意してあげれば良いと思います。

by Take-Zee (2019-05-13 15:11) 

足立sunny

自分も左目を失明しているからいうわけでもないのですが、両目が見えないのに「マラソンを走る」のは、伴走があったとしても容易にできるものではなく、道下さんのマラソンチャレンジ&その走りはほんとうに素晴らしいと思います。
両目をつぶって走れと言われて、走れる人はまずいません。
by 足立sunny (2019-05-13 15:18) 

ナベちはる

ピンチなときはみんながピンチなはずなので、そこをチャンスにして…というのは難しいですが、ハイレベルな勝負になればなるほど、そうしないと「その先」がつかめないといけないですよね…
by ナベちはる (2019-05-14 01:01) 

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