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杉村春子、2度にわたる文学座大量離脱も経験した激動の女優人生 [懐かし映画・ドラマ]

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杉村春子(すぎむらはるこ、1906年1月6日~1997年4月4日)さんの命日です。女優としては大御所中の大御所であり、文学座の総帥でしたが、代表在任中に同劇団は2度の大量離脱騒動を起こしています。今日はそれらを簡単に振り返ってみます。



劇団雲分裂騒動


杉村春子の「感情の起伏が激しい性格と、専横ともいえる劇団への統率ぶり」(Wiki)によって1963年、文学座の文芸部員で評論家の福田恆存が脱退して現代演劇協会を設立しました。

同協会が運営する劇団雲に、文学座の中堅俳優だった芥川比呂志、高橋昌也、三谷昇、岸田今日子、仲谷昇、神山繁、文野朋子、加藤治子、名古屋章、橋爪功、小池朝雄、内田稔、新村礼子、谷口香ら、“働き盛り”がごっそり移籍しました。

これは杉村春子も、劇のキャスティングに困ったと思います。

しかし、福田恆存も結局は専横的な劇団運営を行ったために、劇団雲は解散しています。

プヲタとしては、ジャイアント馬場夫人の元子さんに不満を持った仲田龍リングアナが、主力レスラーの三沢光晴を焚き付け、ほとんどのレスラーと社員がごっそり抜けた、ノア離脱騒動と重なります。

結局、ノアも仲田龍の専横的な運営で会社本体は倒産。

別会社に事業譲渡して、団体としてだけはかろうじて残っている有様です。

この手の分裂はよくあるのですが、分裂した方も同じことを繰り返す事が多いですね。

結局、代表がワンマンだからという分裂は割れた方も同じことをするだけなんです。

杉村春子は、たもとを分かった人は文学座復帰はもちろんのこと、テレビドラマや映画の共演も拒絶したといいます。

たとえば、“刑事コロンボ”の小池朝雄は、自分が亡くなるまで毎年杉村春子の誕生日に花を送ったそうですが、それでも杉村春子は許さなかったそうです。

その人たちは70~80年代のドラマの売れっ子揃いですから、自分にとっても得策ではなかったと思いますが、私は杉村春子の、そのような頑ななところに惹かれます(笑)

逆に、そういうブレないところに、人としての信念を見て信頼できると思った人が残ったのでしょう。



ちなみに、ジャイアント馬場も、やめた日本人レスラーは2度と自分の団体のリングには上げませんでした。

喜びの琴事件


三島由紀夫が書いた『喜びの琴』という劇が、反共主義思想を信じる主人公として描かれていた政治色の強い作品であったために、キャスティングされた北村和夫がセリフの一部を拒絶しました。

杉村春子ら幹部は上演中止とし、三島由紀夫は退団。

すると、三島由紀夫に心酔していた大幹部の中村伸郎を筆頭に、青野平義、奥野匡、荻昱子、賀原夏子、北見治一、丹阿弥谷津子、寺崎嘉浩、仁木佑子、真咲美岐、南美江、宮内順子、水田晴康、村松英子ら、これまた知名度のある俳優が大量に離脱しました。

これは、左翼的立場にある杉村春子が、劇に政治を持ち込み三島由紀夫を切ったようにいわれますが、それは三島由紀夫の側にもいえる“お互い様”で、杉村春子側を一方的に悪く言うのはおかしいと思います。

現に、離脱した1人の村松英子は現在も日本会議側の人であり、同劇は浅利慶太によって公演が行われている以上、三島由紀夫の確信犯的「踏み絵」であり仕掛けた分裂だったと思います。

しかし、北村和夫は杉村春子ほどは頑なではなく(笑)、その後、田宮二郎版『白い巨塔』では、財前五郎側の代理人になり、東教授役の中村伸郎と対決しています。

また『俺たちの旅』では、南美江や名古屋章とも共演しています。

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舞台、映画、テレビドラマで幅広く活躍


過去の作品では、成瀬巳喜男監督の『流れる』(1956年、東宝)で、高峰秀子、山田五十鈴、岡田茉莉子、栗島すみ子、田中絹代との六大女優共演を果たしています。

ちなみに、栗島すみ子は淡島千景や池内淳子などの日本舞踊の師匠であり、プロマイドがたくさん売れたという、松竹の大女優です。

栗島すみ子の墓は、池上本門寺の児玉誉士夫の墓のすぐ近くにあります。

1945年に初演してから、1400回以上上演されてきた文学座の『女の一生』は、杉村春子の自他ともに認める代表作でした。

テレビドラマでは、石井ふく子Pのホームドラマ『女と味噌汁』『ありがとう』『明日がござる』などに出演していました。

演じる役は、気さくな役や抜けている役が多く、親しみがある人を演じていました。

中村雅俊は、ドラマ出演2作目の『つくし誰の子』で共演して、「あなたも文学座だったの」といわれたそうですが、まさか杉村春子が、テレビドラマで主演に抜擢された座員を知らないはずがありません。

これは、野村克也さんの「三流は無視、二流は称賛、一流は批難」ではありませんが、中村雅俊に対する“評価の始まり”を“啓示”したのだとおもいます。

自身の女優としての能力だけでなく、役者を育てる力も優れた人であることを感じます。

杉村春子さん、どんな作品を覚えておられますか。

女の一生―杉村春子の生涯
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忘れられないひと、杉村春子

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  • 作者: 川良 浩和
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: 単行本



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末尾ルコ(アルベール)

杉村春子、2度にわたる文学座大量離脱も経験した激動の女優人生・・・杉村春子はしょっちゅう観ますので、亡くなっているという感じがしません。小津安二郎作品を始め、大好きな映画へたくさん出演しておりますし、主役でなくても、そして美女でなくてもあの風格、カリスマ性はまさに不世出の大女優の一人ですね。いつでも惚れ惚れします。俳優仲間たちからのリスペクトも尋常ではないですね。そして関わった映画監督たちも小津安二郎、黒澤明、成瀬巳喜男ら頂点の超大物であるのはもちろん、今夜のお記事の三島由紀夫、福田恆存ら超大物とのすったもんだもエキサイティングです。わたしは演劇には明るくないのですが、福田恆存の著書はけっこう読んでおりますし、翻訳もかなり手にしております。特に好きなのが、ソポクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王・アンティゴネ』で、とりわけ『アンティゴネ』を愛しております。

>そのような頑ななところに惹かれます(笑)

それは言えますね~。人生の中で憎悪した相手を「許す」というのも時には有りだとは思いますけれど、「決して許さない」という頑なさも有りだと思います。わたしにもおりますね~、絶対に許せない手合いが何人も。まあなかなか会うことはありませんけれど、ぜひ「不幸になっていてほしい」人たちです。

・・・

>冷凍食品の炒飯や炊き込みご飯

便利ですもんね。わたしも先週から今週に渡って、冷凍炒飯と冷凍スパゲティ(ボロネーゼ)を利用しました。しかも安いですよね。スパゲティとか、コンビニだと500円くらいするものが、概ね冷凍ものは200円以内で売られています。冷凍食品はいままであまり利用してなかったので、今後はいろいろチェックしてみたいと考えております。

高知赤十字病院は消灯が午後9時だと言っておりました。

>つけたまま寝てしまうと

これって巡回の看護士は消さないのでしょうかね。先にも書かせていただきましたが、高知赤十字病院の場合は、病室へ行くとテレビがついていることが多く、母はカードの利用法などを知らないので看護士がつけているのは間違いないですが、20時間で1000円もするものを勝手に(母に尋ねているのかもしれませんが)使うのはどうなのかなあと、セコいこと(笑)考えております。

>機会に自分の生活を変えようという、きっかけになりました。

確かにそうですよね。どのようなことでも、「いいきっかけ」にできるわけですから、利用しない手はありません。実はわたしもいつも、(この日曜を区切りに)とか(ついに来月からは)とか、そんなことばかり決意しておりますが、なかなか変われません。この春は母の入院という大きな困難に見舞われ(今夜の記事にはまだ書いておりませんが、今日も回復傾向なのですけれど、腸の感染症に罹ってしまい、その薬も服用しております。軽症だといいのですが)、「人生、ここで変わらず、いつ変わる」という状況なのだと理解しております。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-04-04 03:04) 

犬眉母

文学座というのは、杉村春子さん筆頭に
すごい俳優さんばかりなんですね。

by 犬眉母 (2019-04-04 05:44) 

Rinko

杉村春子さん、こんな前にお亡くなりになっていたんですね。
お顔立ちやしゃべり方が叔母に似ているので、勝手に親しみを覚えていた女優さんです。
by Rinko (2019-04-04 07:43) 

pn

名前は覚えるけど作品記憶にないなぁ(^_^;)
曲げない信念、見習いたいです。
by pn (2019-04-04 09:32) 

えくりぷす

>代表がワンマンだからという分裂は割れた方も同じことをするだけ
教訓になります。小さな団体から国家まで、当てはまりますね。
杉村春子さんの作品は『東京物語』しか見たことがないのですが、すごい方だということがわかりますので、これから観たいと思います。
by えくりぷす (2019-04-04 09:41) 

Take-Zee

こんにちは!
あまり好きくない女優さんでした・・・
by Take-Zee (2019-04-04 15:02) 

ヨッシーパパ

私が知った頃は、母親ぐらいの年齢だったようですね。
by ヨッシーパパ (2019-04-04 17:22) 

ナベちはる

ワンマンが原因での分裂、肝に銘じないといけないですね。
by ナベちはる (2019-04-05 00:56) 

旅爺さん

昔杉村春子さんの映画は沢山見ましたよ。
by 旅爺さん (2019-04-05 13:18) 

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