『極上の孤独』たまには一人になりたいという苦労知らずの独白? [社会]

『極上の孤独』(下重暁子著、幻冬舎)が話題なのでを読みました。現代では「孤独=悪」というイメージが強いですが、そんなことはありませんという書籍。書かれていることはもっともなのですが、読んでも胸にストンと落ちないのは、著者自身が、そこからもっとも遠いところにいるからでしょう。

本書『極上の孤独』(下重暁子著、幻冬舎)の概略はこう説明されています。
現代では「孤独=悪」だというイメージが強く、たとえば孤独死は「憐れだ」「ああはなりたくない」と一方的に忌み嫌われる。しかし、それは少しおかしくないか。そもそも孤独でいるのは、まわりに自分を合わせるくらいなら一人でいるほうが何倍も愉しく充実しているからで、成熟した人間だけが到達できる境地でもある。
このブログはこれまでにも、ネットによるうわべのつながりに警告を促し、徒党を組まないことが社会から切れているかのような、間違った認識を注意する書籍やWeb記事を何度もご紹介してきました。
⇒『縁の切り方 絆と孤独を考える』人生は「友人」棚卸しの連続
⇒一人ぼっちでも大丈夫?改めて日本人の“群れたがり気質”を嗤う
にもかかわらず、いまだにこうした書籍が出続けるのは、形式的でも人とかかわらなければいられない現代人の弱さが、深刻であることを示しているのでしょう。
「いつも他人と群れてばかりいては成長するはずもなく、表面的に付き合いのいい人間が出来上がるだけではないだろうか」(本書より)
この限りではもっともすぎる程もっともです。
本書はこんな指摘に満ちており、その意味では、社会的に一石を投じる良書のはずです。
……が、私はそのような境地にはなれませんでした。
なぜか。
下重暁子さんは以前も、自分の父親を恨み、自分の幼年時は恵まれなかったと回顧した『家族という病』という書籍を出しているのですが、
⇒『家族という病』ろくでなしと思っていた親がそうでないかも……
私には、著者の実感とはかけ離れた、というか全く逆の『豊かな生い立ち』しか感じませんでした。
では今回の著者はどうか。
子供時代、無器用と健康に自信がないことから、人と上手に交われないことが多かったものの、孤独の中で楽しみを見つけた。
だから「孤独」はいいものだ、孤独から逃げるな、という話ですが、そのわりには、やたら友だちの名前が出てくる(笑)のです。
たとえば、句を読む友人として、小沢昭一、永六輔、渥美清、岸田今日子、和田誠、色川武大……
NHKアナの同窓で再会を約束していた野際陽子……
むしろ私は、友達自慢と読めました。
本当は友人が欲しかったくせに、子供の頃それができなかったことを81歳なって悔しく振り返り、正当化するために「孤独はいい」と言っているようにしか読めませんでした。
孤独って、そんなに軽いものではないのですが。
以下のレビューが、核心をついていると思います。
なんだかこの著者にとっての「孤独」とは「一人で自由に過ごす」ということに思えて仕方ありませんでした。「孤独」というからには、おひとり(独身)の方なのかなと思っていましたが、「つれあい、つれあい」とでてくるし、豊かな生活をなさっていて、「たまには一人になりた~い」と言っているように読めてしまって・・・。「孤独」になりたくないのに災害などで「孤独」になってしまった人々のことを考えてしまい、この本は好きになれませんでした。https://bookmeter.com/books/12754233 より
書籍に著者自身が書いている限りにおいても、下重暁子という人は、何不自由ない恵まれた「人脈」の持ち主であることがわかります。
著者は子供時代両親健在だった。
とくに母親が、過剰なくらい自分を大事に育てて、大学まで行かせてもらってNHKに就職。
今も元同僚とのつながりもある
一人暮らしの経験がない。
夫とは普通に結婚している
「夜の食事の時間だけは、誰かにいてほしい」←どこが孤独好き?
スマホのLINEで「うまくつながらない時の辛さといったらない」
夫にもいわない仕事部屋をやっと作ったが、「この部屋で何が出来るか、試されているのだ。」
いったい、こんな言いぐさで、どこに「孤独」があるのでしょうかーっ
そもそも、孤独がいい人がLINEなんてやりませんし(大笑)、相手の要求でやむを得ずやっても、むしろメッセージが入ると見なければならないので、私などは面倒で憂鬱になります。
人は承認欲求のかたまりなのか
こんな苦労知らずのおばあさんの、道楽のような「孤独」夢想がなぜ受けるのでしょうか。
ひとつには、著名人が書いたものは何でも正しいのだという、無知蒙昧のありがたがりがあるとおもいます。
もうひとつは、こんな程度の話すら新鮮に感じるほど、現代人は上辺のつながりに必死にぶらさがっている暮らしをしているということではないでしょうか。
スマホを手放せず、ネットのつながりに一喜一憂し、お義理の集まりも声をかけてもらわないと寂しくなる。
そういう人がいかに多いことか。
まとめ
繰り返しますが、本書はたしかにいいこともたくさん書いてあるのです。
しかし、肝心の書き手の人格や生き様に、それに見合う陰翳を感じなかったので、建前だけの薄っぺらいものに感じてしまったのです。
書籍の価値というのは、著者自身を表現したものなのだ、ということも今回改めて考えさせられました。
『極上の孤独』。もう読まれましたか。

極上の孤独 (幻冬舎新書)
世の中には、独居老人とか、孤独が物理的に
生活の困難に直結する人もいるのですが、
ご主人がいらっしゃるお幸せな身には、
わかりにくいのかもしれませんね。
by 犬眉母 (2019-04-05 01:58)
『極上の孤独』たまには一人になりたいという苦労知らずの独白?・・・「孤独」とか言って、いかにも「孤独」を知っているようにアピールしてカッコつけたい人という感じなのでしょうか。この人の著書は読んでおりませんが、テレビでトークしているのを見たことがあります。その時は何やら独善的な雰囲気を感じたくらいでしたが、しかも司会が久米宏だったので、それがまたどうにもでしたが。
>やたら友だちの名前が出てくる
しかも各界の超一流がズラリですね。率直に言って、下重暁子には相応しくない友人を多く持っていた(笑)という感想は少々意地悪でしょうか(笑)。でもこの人に渥美清の名前を出されても・・・とは感じます。
>孤独って、そんなに軽いものではないのですが。
結局この人の人間性の芯の部分にスノッブが定着しているようにも感じます。「孤独の礼賛」ぶりが、「自分は希少な高級ワインの味が分かるんだぞ」と自慢している手合いと共通しているようにも感じます。
>今も元同僚とのつながりもある
>「夜の食事の時間だけは、誰かにいてほしい」
>「うまくつながらない時の辛さといったらない」
↑
このあたり、畳み掛けるような(笑)すごさですね~。これで「孤独」を語るとか、最早JAROに判断を求めるべきレベルですね~(笑)。「いい子ちゃん」として生涯を過ごしている人が、ここへ来て「ちっとワルぶってる」とか、そんなうすら寒い感じもあります。「わたしもけっこうワルだったのよね~」「こらこら、嘘つくな!」とか、そんなツッコミの一つも入れたくなります。
>現代人は上辺のつながりに必死にぶらさがっている
これはもう、おっしゃる通りでして、多くの現代人は本当にいかなることでも「上辺」だけしか知りません。簡単に申せば、大きな湖があったとして、「水面しか存在しない」と信じている人大多数です。そういう人たちには同書のような内容でも、(うわっ、すごいこと書いてある)になるのでしょうね。
・・・
>「グリコワンタッチカレー」
ありましたね!「ワンタッチ」という響きが子ども心に心地よかったですが、思い返せばカレーの商品名にはどうなのかとも、今となっては感じます。
>S&Bのカレー粉
わたしも常備したいと思います。いろんな味付けに使えそうですね。いずれにしても、家庭料理も大きく見直すべきだと自覚しておりますので、いろいろ研究(←大袈裟 笑)してみます。カレー粉もそうですし、料理については、手早く、リーズナブルに、栄養価も高く、より美味しくというものを今後いろいろ身につけていかねばと思ってます。今まであまりに大雑把でした。
>検査入院で1晩入院
わたしは就学以前は今より虚弱でして、腸炎などで何度か入院しております。腸が虚弱なのはその時以来なのですね。これも改善したいとずっと思っておりますが、体質を変えるのは難しいですね。このところも腸の働きが不安定で、もちろん大きなストレスがかかりっぱなしの状態が続いているので致し方ない部分はありますが、それ以前に鏡を見ると、腹回りから腰、そして大腿部が細いのです。(こりゃあ、虚弱だ)と自分でも感じてしまいます。ここも早急に改善したいのです。
母の嘔吐の原因はよく分かりませんが、今夜の記事で触れている感染症と関係しているのかもしれません。そもそも「クロストリジウム・ディフィシル感染」は大きな手術後や長期の入院患者など抵抗力が弱っている人に発症するということなので、現在同感染症への薬物療法をやっておりますが、当然ながら体力・抵抗力などの回復が大きな目標となります。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2019-04-05 02:55)
アレもコレも言いたい事は沢山ありますが、単純に本当の孤独を味わった人間は孤独になりたいとか一人になりたいなんて事は言いません。
現に自分も親や、家族関係、親類や友人知人関係、仕事仲間からも外れて完全な孤独のループに入った事があります。
元々人って家族などの最小単位の共同生活をしていても『集団の中の孤独』は付いてまわるものですが、それをいつも気にしているかと言えば、していない。
四面楚歌になり、助けてくれる人も相談出来る人もいなくなりそこで初めて孤独を意識するのであって。
意識的に簡単には孤独にはなれないものだと思っています。
by kame (2019-04-05 03:52)
贅沢で愉快と書いている時点で怪しい(笑)
孤独と単独って違うもんだと思うんだけどなぁ。
by pn (2019-04-05 06:17)
みんな孤独だと思います。そうなんだと思うとき
周りに配慮し助け合う心が出てくるのではないでしょうか。
by 斗夢 (2019-04-05 06:35)
看護師さんのブログにも本はたくさん読んだ方がいいと書かれていましたが、さっぱりです。
人は社会の環境の中にいます。究極の孤独になるともはやその人は人間ではなくただの動物になってしまいますね。
by ヤマカゼ (2019-04-05 07:08)
「孤独」という言葉の捉え方が根本的に違っているのでしょうね。
歳を重ねても見えない事ってあるんだなーと感じさせられました。
by Rinko (2019-04-05 07:39)
これを読む方も同じようなべつだん不自由のない方ならいいかもしれませんが、孤独でない方に「極上の孤独」と言われても「何言ってるんだ」とは思いますね。
編集者の目の付け方がうまい、ということでしょうか。
by 足立sunny (2019-04-05 07:51)
こんにちは!
若いころは綺麗なアナウンサーでしたね!
by Take-Zee (2019-04-05 12:43)
孤独感はよく味わっていますが、一人になりたいときもよくあります。
by ヨッシーパパ (2019-04-05 19:03)
孤独と「独りで過ごしたい」では、意味が全く違いますよね…
by ナベちはる (2019-04-06 00:41)
てっきり著者さんの身の上になにか変化があって、孤独なのかと思いました。
なんと優雅なお暮らしなのですね~!?
by sana (2019-04-06 01:32)
『極上の孤独』読んでいませんが、この記事を拝読したら、内容はわかるし、それ以上に得るものがありますし、他の読者が感じられた嫌な気持ちにもならないので、もう読まなくて良いなと思いました(笑)
by えくりぷす (2019-04-06 10:14)
本当の孤独を味わいたかったら、孤島に流されてみることでしょう。人間の手の入らない自然の中だけで生きていくことが、孤独を感じられるのだと思います。
この著者が言いたいのは、「たまには、ひとりになるのもいいよ」程度だと思います。
by レインボーゴブリンズ (2019-04-06 22:59)
この本を読んでいませんが
新書版のタイトルに惹かれて
肩すかしを食らった経験はよくあります。
by そらへい (2019-04-14 17:17)
私もいっぷくさんに全く同感です!
by 風の友 (2019-04-16 01:35)