村上冬樹さん(むらかみふゆき、1911年12月23日~2007年4月5日)の生まれた日です。東宝の俳優として、喜劇や特撮映画などに出演。『ゴジラ』(1954年、東宝)の田畑博士や、『虹の岬』(1999年、東宝)の名誉教授役など、学者や管理職役などを演じました。(画像は劇中から)
村上冬樹は、東京帝国大学経済学部卒業後、新築地劇団の研究生から俳優活動を始め、映画では東宝と契約して喜劇や特撮映画などに出演しました。
自身の学歴からそのような役が割り振られたのか、物静かで知性を感じる風貌がそうした役にあっていたのかわかりませんが、多くが学者や管理職役でした。
ただ、そうした役のイメージが強いと、なかなか非常識なキャラクターを演じにくくなり、それが大きな役を演じる足かせとなったようにもおもいます。
これまでご紹介した作品から、村上冬樹出演作の印象に残るものをいくつかご紹介します。
『浮雲』
『
浮雲』(1955年、東宝)は、成瀬巳喜男監督、高峰秀子と森雅之の主演作品です。
映画雑誌『キネマ旬報』の創刊95周年記念に行われた『日本映画の男優、女優ベスト10』で、高峰秀子が1位、森雅之が2位でした。
評論家や映画人ら181人のアンケートで、男優は順に三船敏郎、森雅之、市川雷蔵、勝新太郎、高倉健、原田芳雄、松田優作、役所広司、三国連太郎、志村喬という結果が、女優は高峰秀子、若尾文子、富司純子、浅丘ルリ子、原節子、山田五十鈴、岸恵子、安藤サクラ、田中絹代、夏目雅子という結果が出たそうです。
それはともかくとして、村上冬樹は高峰秀子の仏印(インドシナ東部地域)勤務時代の上司役です。
同僚に、なんとなく面影のある金子信雄が出ています。
『仁義なき戦い広島代理戦争』の金子信雄
『電送人間』
『
電送人間』(1960年、東宝)は、1960年代前半の東宝映画で『怪奇空想科学映画シリーズ』と銘打たれた作品です。
犯人の姿が見えない銃剣魔連続殺人事件が発生し、新聞記者である鶴田浩二が、犯人の遺留品に真空管らしきものがあることを発見。
それは、瞬時にあらゆるところに移動できる物体電送機の部品でしたが、その科学的性質を教えてくれた博士を演じたのが村上冬樹でした。
『クレージー作戦先手必勝』
『
クレージー作戦先手必勝』(1963年、東宝)は、全部で30作ある東宝クレージー映画のひとつです。
植木等の主演映画が続けざまに当たったことで、今度はクレージーキャッツ全員が出演する映画も東宝と渡辺プロ提携によった作られることになり、その第一弾です。
村上冬樹は、クレージーキャッツの面々で始めた『まとめや』という喧嘩の仲裁や集金をする会社が、仕事を誤り詐欺で告訴されてしまい、逮捕状を持って乗り込んだ刑事のリーダー役です。
そして、順位をつけるのがあまり得意でない私が、テレビ時代劇のなかでは一番ではないかと思っているのが、『長崎犯科帳』(1975年4月6日~9月28日、ユニオン映画/NTV)です。
『長崎犯科帳』
『
長崎犯科帳』の第12話『刃には刃 眼には眼を』(1975年6月22日放送)に村上冬樹は出演しています。
役は、隠れキリシタンのリーダーです。
隠れキリシタンたちが、オランダの要人の娘を誘拐して人質に。
キリシタンのため投獄されている、村上冬樹を釈放しろと要求してきました。
長崎奉行(萬屋錦之介)は、村上冬樹と話をし、仲間にオランダ娘を返すよう説得することを依頼して釈放を決め、村上冬樹もそれを承諾します。
しかし、隠れキリシタンを利用して、オランダ娘を売り飛ばそうと企んでいた連中はそれでは都合が悪いので、牢番に村上冬樹を殺害させます。
最後はもちろん、闇奉行がその連中を斬ります。
面白い時代劇でした。
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インテリは三島由紀夫に弱かった?
村上冬樹は、1968年に三島由紀夫、中村伸郎らと劇団『浪曼劇場』を結成します。
中村伸郎と言えば、杉村春子と文学座を作った、同劇団の大重鎮です。
『白い巨塔』では東教授を演じました
その座を捨てて、これからどうなるかわからない三島由紀夫一座の旗揚げに馳せ参じました。
ところが、2年後に三島由紀夫は割腹自殺してしまい、劇団も解散の憂き目に。
中村伸郎もインテリの役が多かったのですが、インテリは三島由紀夫に弱いということでしょうか。
村上冬樹の同級生たちはきっと、多くの人が、官僚や大きな責任を担う社会的立場にたったことでしょう。
映画のバイプレーヤーだった村上冬樹とは、余計なお世話ですが、生涯年収もだいぶ違っていただろうと思います。
それでも打ち込める自己実現が、芝居の世界にはあるのだろうと思います。
人生とは何か、を考えさせてくれます。
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村上冬樹、東宝特撮映画で学者や管理職役を演じたバイプレーヤー・・・『ファンシイダンス』や『シコふんじゃった。』などにも出演しているのですね。そして95歳まで生きておられた。出演作の多くを観ているのですが、「村上冬樹」という名前は今回のお記事を拝読させていただくことで知りました。
『日本映画の男優、女優ベスト10』はわたしも読んでおりますが、三船が1位というのは(あれっ?)と感じました。もう少し前の氷菓であれば、もちろん歴史的大俳優ですが、「1位」とまではいかなかったような。評論家らもかつてのように淀川長治、蓮實重彦、山田宏一らのような重鎮がおらず、お軽い「映画ライター」とかいう人たちがほとんどになっいて、こうしたランキングにも不安がなくはないですね。ただ、ここに挙げられた俳優たちはすべて好きではありますので、さほど異論はありません。
特に高峰秀子、若尾文子、富司純子のトップスリーは、わたしが好みで歴代日本女優を選んでもこうなる可能性大です。ただ富司純子の場合、任侠物でのスター性たるや群を抜いておりますけれど、その他の役どころはとなると、高峰秀子、若尾文子らと比較するのは難しい気がします。三國連太郎は雷蔵の次あたりに来てほしいですね。
>多くが学者や管理職役でした。
最近は東大出として香川照之が活躍しておりますが、日本の芸能界の場合、東大や強大などの出身俳優が少ない、あまり活躍しないという特徴がありますね。英米の俳優であれば、ケンブリッジ、オックスフォード、ハーバード、イエールなど出身の大スターがごろごろいます。この違いの理由としてはいろいろと考えられますが、やはり日本社会の基調として、どこか「芸能」を軽視している、そこに問題があるという気がしております。ほとんどの「大人」は映画やドラマ、そして俳優たちについて正面切って語り合ったりしませんよね。誰しも好きな俳優や映画などについて、勝たれるようであればいいのですが、なかなかそれができる大人はおりません。その点を見ただけでも、日本社会は「本当の豊かさ」に欠けるなあとはいつも感じてます。
インテリは三島由紀夫に弱かった?・・・それは絶対あるでしょうね(笑)。三島の文体については好き嫌いはかなり激しく分かれますが、あれだけ念入りな文章を書く作家はいまだおりませんし、しかも長い人生ではなかったのに、作品数も多いです。特別な天才としか言いようがないとは思います。あまりに計算され尽しているので、解放感に欠けるところはありますが。わたしは比較的早く三島の文章に馴染んだのですが、その後に夏目漱石などを読むと、ちょっとかったるく感じたものです(笑)。
>それでも打ち込める自己実現が、芝居の世界にはあるのだろうと思います。
素晴らしいですね!このような生き方の方がいると、心がわくわくしてきます。特に日本の場合、前記させていただいたように、英米仏と比べると、社会的に俳優の仕事に対しての理解が欠けているのに、敢えて選んだわけですからね。素敵な俳優さんだと思います。
>卒寿を過ぎても
本当に素晴らしいですね。心から尊敬いたしますし、勇気が湧いてきます。お母様のそうしたご状況も、いっぷく様の絶え間ないご努力あってのことと、あらためて感服いたします。昨今わたしは、ご高齢の方が通りを歩いておられる姿を見かけただけでも感動してしまいます。
またしてもプロレスの記事ですが(笑)、次のようなものを見つけました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181221-00010004-spht-fight
猪木関連本が強いというのは当然かもしれませんが、ふと思ったのが、今のプロレスがおもしろくないのと同時に、今、そして今後のプロレスに関する本や文章もどんどんつまらなくなっていくに違いないということです。プロレス自体に陰翳がなくなっているので当然かもしれませんが、内館牧子や西加奈子、あるいは他の女性の書き手たちは自分らの好きなレスラーを絶賛するだけですし、男の書き手も熱血で(笑)似たような感じになっているのが多いです。今の新日に誰かを襲撃する計画とかもなさそうですし・・・というのはやや悪い冗談となりますが(笑)。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2018-12-23 03:19)
申し訳ありません髪の毛がある金子信夫のインパクトが強くて(笑)
by pn (2018-12-23 06:15)
あの世に、地位やお金は持っていけませんから、
生きがいが第一で良いのではないでしょうか。
by 犬眉母 (2018-12-23 06:24)
高学歴の俳優さんだったんですね。当時としては異例だったのではないでしょうか。
映画は殆ど覚えているのですが、本人はなかなか思い出せません・・・。
by kou (2018-12-23 07:36)
この方の名前は知らなかったけど
ドラマに出られていたのはよく覚えてます。
by poko (2018-12-23 10:38)
こんにちは!
博士や教授とかそんな役が多かったですね。
by Take-Zee (2018-12-23 15:41)
男優は順に三船敏郎、森雅之、市川雷蔵、勝新太郎、高倉健、原田芳雄、松田優作、役所広司、三国連太郎、志村喬という結果が、女優は高峰秀子、若尾文子、富司純子、浅丘ルリ子、原節子、山田五十鈴、岸恵子、安藤サクラ、田中絹代、夏目雅子という結果・・・
これには私も異存があります。
映画、テレビと長く出演したのは三船ですけど、森雅之、市川雷蔵、勝新太郎…辺りとは出演作品、演技や存在感に大きな違いがありますし。
女優陣に、安藤サクラ、夏目雅子…と、その上田中絹代より上で喜んでいるのは、本人とその周辺だけではないでしょうか。格が違いますもの。
大晦日の紅白の出演者の人選みたいと感じてしまいました。
by hana2018 (2018-12-23 17:27)
この方は、存じ上げません。
by ヨッシーパパ (2018-12-23 18:57)
残念ですが、思い出せません。電送人間見た記憶はあるのですが。
by ヤマカゼ (2018-12-23 22:35)
村上春樹のずっと前に
村上冬樹と言う名前の役者さんがいたとは知りませんでした。
確かに冬が来ないと春も来ませんが。
by そらへい (2018-12-24 21:16)