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森崎東、『喜劇女は度胸』など群集劇としての人情コメディ監督 [懐かし映画・ドラマ]

森崎東、『喜劇女は度胸』など群集劇としての人情コメディ監督

森﨑東さん(もりさきあずま、1927年11月19日~)の生まれた日です。脚本家、映画監督として1970年代までは松竹、それ以降はフリーで活躍しています。松竹入社後は、山田洋次監督や、野村芳太郎監督のもとで助監督をつとめてきました。(劇中画像はDVD『喜劇男は愛嬌』より)



そして、いよいよ監督として独り立ちした第一作目が、先日もご紹介した羽田を舞台とした『喜劇女は度胸』。

喜劇 女は度胸
DVD『喜劇女は度胸』より

倍賞美津子の主演第一作でもありました。

次に撮ったのが、『男はつらいよ フーテンの寅』。

男はつらいよ フーテンの寅

男はつらいよシリーズの第3作目でした。

そして、3作目が『喜劇男は愛嬌』(1970年、松竹)です。

『喜劇男は愛嬌』


男は愛嬌
DVD『喜劇男は愛嬌』より

冒頭から、いきなりインパクトのあるシーンが出てきます。

20歳の設定だった春子(当時23歳の倍賞美津子)が、少年院を出所する日になり、入院したときの服に着替え始め、白い下着姿になるのです。

倍賞美津子

いきなり服を脱ぐ衝撃は、宮崎美子のミノルタのCMがよくとりざたされますが、松竹に入りたての倍賞美津子は、このシーンで、看板女優としての地位をつかみとったと言っても過言ではないかと思います。

倍賞美津子

そして、映画の舞台になるのは神奈川県川崎市川崎区の、おそらく桜本でしょう。

日本の高度経済成長のカナメである京浜工業地帯の中核だった川崎・鶴見(横浜市)ですが、そこ(浜川崎線)を、なんと蒸気機関車が走っています。

浜川崎線を蒸気機関車

制作されたのは、昭和40年代なかばですよ。横浜はすでに百万都市でした。

このシーンは、日本の重化学工業を牽引してきた真っ先に近代化されてもいい地域のはずなのに、実はそうではなかった、ということを表現しているのだと思います。

このへんの風刺精神は、山田洋次監督譲りです。

倍賞美津子に密かに思いを寄せる、BBS連盟(非行少年更生のボランティア青年組織)員の民夫(寺尾聡)は、首都高横羽線が通り、運河がある工場で働く地元の溶接工です。

その兄が渥美清。マグロ船に乗って1年以上留守にしますが、映画ではちょうど帰ってきたところです。

寺尾聰によると、倍賞美津子は、渥美清によって不良にさせられたとか

渥美清は寺尾聡から責められると、倍賞美津子に大金持ちの結婚相手を探してやると啖呵を切ります。

しかし、宍戸錠、財津一郎……など、いずれもまとまりません。

とにかく、倍賞美津子の若さあふれる活躍が見どころです。

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野村芳太郎、山田洋次、森崎東、三者三様


野村芳太郎、山田洋次、森崎東監督とも、1960~70年代の松竹映画が看板とする人情喜劇を撮っています。

野村芳太郎監督はブラックユーモアの世界で、山田洋次監督は叙情的な描き方に力点をおいており、森崎東監督は、より大衆的で、ナンセンスも交えて登場人物がみんなで賑やかに盛り上げている群集劇的な描き方です。

本作『喜劇女は度胸』でも、酔っぱらい運転でトラックを倍賞美津子の家に飛び込ませ、そのままの状態で住んでいるのです。

喜劇女は度胸
後ろに突っ込んだままのトラックが……

少なくとも、『男はつらいよ』ではこういうシーンは出てきません。

そして、その3監督いずれも主演をつとめたのは渥美清。

どの監督からも必要とされ、またそこできちんと仕事をした渥美清の役者としての大きさが、そんなところにも感じられます。

映画も、ストーリーを追うだけでなく、監督の表現したいものは何かを考えながら鑑賞すると、より興趣が深まると思いますよ。

ご贔屓の監督はいらっしゃいますか。

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森崎東党宣言!

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コメント 11

犬眉母

ドタバタ喜劇ということかな。
by 犬眉母 (2018-11-19 02:09) 

末尾ルコ(アルベール)

森崎東、『喜劇女は度胸』など群集劇としての人情コメディ監督・・・『喜劇女は度胸』は録画しておりまして、まだ観てないのですが、もうすぐ観ます(笑)。
森崎東監督の作品をあらためてチェックしてみましたが、現在90歳なのですね。そして2013年には『ペコロスの母に会いに行く』が映画賞をほぼ独占しました。とても瑞々しいタッチの作品で、岩松了、赤木春恵、加瀬亮らのパフォーマンスも素晴らしく、この作品を80代で撮っているんですね。1985年の『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』も文化シーンを席巻していた記憶があります。この作品も倍賞美津子と組んでおり、相性がよかったのでしょうね。また観てみたいです。

>白い下着姿になるのです。

これはしかしあれですね(笑)、やはり女性の下着の「基本は白」というのがわたしの揺るがぬ思いでして(笑)、もちろん他の色でもいいのですが、Tバックとかは興覚めで・・・といったお話は映画の本質とは外れますので、ここまでにしておきます。

>このへんの風刺精神は、山田洋次監督譲りです。

一級の監督作は、一瞬のシーンでも観逃せませんよね。それにしても、70年代の作品のインパクトが強烈な野村芳太郎監督が、コント55号の映画を多く撮っているのも新鮮です。
そしてこの3人の中でしたら、今では山田洋次監督を挙げます。もちろん3人とも素晴らしいという前提においてですが、これだけ長年の渡り、映画ファンにも、一般の方々にも愛され続ける手腕は凄まじいものだと思います。

メイウェザーが昨年UFCのスター コナー・マクレガーとボクシングルールで対戦して莫大な報酬をせしめたことで格闘技界のバランスが大きく歪んでしまい、諸悪の根源のように捉えておりますが、今回のRIZINとの絡みについては、わたしは日本側のやり方があまりに醜いなと憤っております。そしてここには、日本の格闘技ファンと言いますか、RIZINから観始めたようなニワカファンが世界格闘技状況についてあまりに無知で、いろんな部分でおかしな状況になっていると思うのです。
ところでこの前、RIZINの榊原氏が帰国会見を行っているのですが、これがまた酷く、年末までしらを切り通そう、誤魔化し通そうという気持ちがありありと伝わってきました。

「あみん」ではなく(笑)、「あいみょん」は若い女性シンガーソングライターですが、なかなかいいです。「あみん」って、あの異様な雰囲気もさることながら、彼女たちが人気絶頂期にはどうしてもアミン大統領が脳裏に上ってきたものでした。『高知新聞』にも、「猪木、今度はアミン大統領と対戦か?」とか載ってましたから(笑)。今のプロレスラーや格闘家が本当に世界的な注目を引きたければ、サウジの某皇太子との対戦をぶち上げるとか・・・まあこれはあまりにブラックなユーモアかもしれませんが(笑)。CIAも吃驚という。
ユーミン出場も不思議ですね。本人の気が向いたのでしょうか。今年の夏の野外フェス出演の映像を観たのですが、ずいぶん声が出てないなという印象でした。まあ、ユーミンの動向をずっと追っていたわけではありませんので、声の状態を正確に把握しているということではありませんが。
五木ひろしと石川さゆりは歌える限り出続けていただいていいと思いますが、『紅白』や『大河』自体に否定的なわたしがこんなこと言うのもなんですけれど(笑)、松田聖子はずっと出ない時期があったのに、このところまたしょっちゅう出るようになったというのもおかしな話ですね。毎回細かく視聴率を採って、そのデータも出場者の顔ぶれに大きな影響を与えているのは間違いないと思いますが、受信料とりながら視聴率とか、馬鹿馬鹿しいですよね。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-11-19 02:43) 

ヤマカゼ

あまり脚本家さん知らないのですが、いろんな方々が映画に関わっているんですね
by ヤマカゼ (2018-11-19 06:14) 

pn

重化学故に煙が出てても構わないと思ってたとか?そんな訳無いか(^_^;)
by pn (2018-11-19 06:16) 

kou

やっぱり渥美清のイメージは寅さんしか思い浮かびません。
でも、この映画は配役が凄いですね。
by kou (2018-11-19 09:51) 

Take-Zee

こんにちは!
横浜線には昭和43年ごろまでSLは
走っていました(記憶では)

by Take-Zee (2018-11-19 10:37) 

なかちゃん

倍賞美津子の下着姿、こういうのがあったんですね。
ボクは監督に贔屓はありませんが、役者ならやっぱり渥美清かな?
男はつらいよの50作、早く見たいです(^^)

by なかちゃん (2018-11-19 13:03) 

Orange_blancオレンジブラン

ひゃー。骨太な内容のブログだな、と思ったら、
学問テーマ1位のブログでしたか。
すごいです。そして納得。
by Orange_blancオレンジブラン (2018-11-19 14:07) 

ヨッシーパパ

凄いですね。
倍賞美津子もこういう役柄もしていたんですね。
by ヨッシーパパ (2018-11-19 18:32) 

ナベちはる

倍賞さんも昔は下着姿になるシーンがあったとは…驚きです。
by ナベちはる (2018-11-20 00:35) 

えくりぷす

沢木耕太郎の本に、松竹の映画で脚本が直されないのは(チェックされない)山田洋次と森崎東だけということが幹部の話としてあったような…
贔屓の監督は、思いつきませんが、いまはビリー・ワイルダーが気になっています♪
by えくりぷす (2018-11-20 13:52) 

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