『喜劇駅前団地』(1961年、東京映画/東宝)。喜劇駅前シリーズは1958年~1969年まで全24作上映されましたが、その2作目がBS11で10月2日よる7時00分~8時52分に放送されます。これまで社長シリーズを放送してきた枠で、いよいよ今月からは喜劇駅前シリーズも放送されるわけです。(画像は断りのない限り劇中から)
世相を描く社会派群像喜劇『
喜劇駅前団地』は、神奈川県川崎市百合ケ丘を舞台にしています。
神奈川県川崎市百合ヶ丘といいますと、ちょっと高級なベッドタウンとしておなじみです。
このブログをご覧の方の中にも、百合ヶ丘にお住まいの方がおられるかもしれませんね。
その開発が行われたのが、ちょうど本作の制作された頃。
高度成長を支える会社員たちのために、公団団地が開発され始めたのです。
そこで本作『喜劇駅前団地』は、小田急線百合ケ丘の、新駅開業を巡る土地高騰によって、地域住民が翻弄される様子が描かれます。
まず、農地を持っていた人たちは、土地成金になります。
その役は伴淳三郎が演じています。
妻は森光子、息子は久保賢。
左は久保賢、右は黛ひかる
後の日活青春スター、山内賢です。
山内賢は、東宝スターの久保明の弟なので、スタートは東宝だったわけです。
山内賢の役どころは、伴淳三郎の成金に批判的で、初心に帰って農業を行うことを望んでいます。
森繁久彌は、父親(左卜全)の代からの医者の設定。
夫人に先立たれ、小学生の息子(二木まこと=二木てるみの実弟)がいます。
百合ヶ丘に新しく作られる団地を当て込んで診療所を作ろうともくろんでいるのですが、そこへ団地医院を作ろうとしている淡島千景と対立しつつ、
そのうち2人はお互いを理解し合うという、社長シリーズとはうってかわってツンデレの展開です。
フランキー堺は、淡島千景をたきつけるブローカー役。
近くの飲み屋の女将が、やはり団地建設による集客を当て込んでいる淡路恵子です。
当時の東宝は、森繁久彌の社長シリーズ、クレージー映画シリーズ、若大将シリーズなどとともに、この喜劇駅前シリーズを年間興行の柱と位置づけており、まさに東宝昭和喜劇黄金時代の一翼を担っていました。
脚本は長瀬喜伴、監督は庶民の目線で時代を描く久松静児です。
中央が久松青児監督(『東宝昭和の爆笑喜劇Voi.24』より)
喜劇とは付きますが、ギャグを散りばめて爆笑するのではなく、人間の業や価値観などを描いて、「人間というやつは……」というおかしみを表現しています。
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他にも興味深い出演者
そして、冒頭のシーンに、ズンタタッタを唄いながら登場する“洗濯屋の九ちゃん”は坂本九。
Google検索画面より
歌手のカメオ出演ではなく、本格的にストーリーに絡んでいます。
このシリーズは、王貞治、
ジャイアント馬場など、他分野の出演者だからといってお客様扱いせず、ストーリー展開の重要な役どころを演じさせています。
小田急線の踏み切りがなっているのに渡ったとして、坂本九を咎めた警官が、三木鶏郎グループの一員であった千葉信男です。
三木鶏郎グループというのは、戦後の一時期活動したというコーラス喜劇団で、三木のり平、丹下キヨ子、小野田勇、旭輝子(神田正輝の母親)、有島一郎、楠トシエなど、その後俳優や劇作家として活躍した人々が所属していました。
Google検索画面より
私はもちろんその活動時期をリアルでは見ていませんが、伝説のグループで、楽しそうですよね。
こういう音楽を使ったコントグループは、1980年代に活動したキモサベ社中を最後に、私は少なくともテレビでは見ていないのですが、たぶん、今はそういう人たちがいてもライブ活動が中心なのでしょう。
それはともかく、高度経済成長の始まりを垣間見ることができる社会派喜劇、ぜひご覧ください。
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喜劇駅前団地、神奈川県川崎百合ヶ丘の土地高騰を描く社会派喜劇・・・ついにこのシリーズも放送されるのですね!これは本当にありがたいです。BS12は文化的貢献度が高いですね。今度観たい映画のリクエストでもしてみようかなあ・・・。そしてこのような作品は若い人たちにもできるだけ観ていただきたいですね。
神奈川県には何度となく行ったことがありますが、だいたい横浜、鎌倉あたりだけです。川崎へは止まったことないのです。このような作品で当時の街の様子が具体的に描き込まれているのは大きな愉しみですよね。そう言えば昨今の日本映画って、そんなロケの愉しみも希薄なものが多いような。映画って多様な愉しみを贅沢に取り込めるものですから、作る側も極力そのような意識はしていただきたいものです。
森光子は基本、顔の造作が高齢になっても変わらなかったですね。人間もちろん顔の造作が変わる人の方が多く、それもまた人生や年輪というものであり、否定すべきではないですが、俳優としてはなかなか(難しいな)という変わり方をしてしまう人たちもおりますね。俳優にとって「顔」も表現の一つであり、もちろん商売道具でもありますから、変わってしまうとキツい場合も出てきます。この前のいしだあゆみもそうでしょうし、浅丘ルリ子なんかも比較的若いうちにかなり変わりました。高齢なので致し方ない部分はありますが、最近インタヴュー番組で見た山本富士子も、そう言われなければ分からない感じでした。若尾文子や富司純子は若き日の面影が十分残っております。
喜劇駅前シリーズ、今夜からですね。できるだけ多く鑑賞したいと思います。
今夜のブログにも書きましたが、こちらも雨はさほどでもなかったのですが、風が強かったです。「瞬間最大風速60m」なんてアナウンスされると、(家は倒れないかな・・・)とさえ懸念してしまいます。まだ10月になったばかりで、今も25号がありますし、まだまだ油断できません。かと言って、すぐに寒くなっても困りますし。
わたしもVHSビデオにいっぱいいろいろ録画していたのですが、ただでさえDVD/BrayプレイヤーのHDDにいつも一杯の映画などがありまして、wowowは連日何本も新作・旧作含めて映画を放送しておりますので、とてもビデオテープを観返す時間はなさそう・・・と、ある程度諦めて処分しつつあります。どんどん新製品を出してくる業界の方法に憤りはありますが。特にレーザーディスクなんかかなり高いお金を出して買ったのに、現在は納戸に据え置きですからね。
キラー・カーンは確かに大味でした。だからこそ、MSGなどで人気だったのでしょうね。分かりやす過ぎると言いますか、だからこそ米国でスターになれたというのはありますね。カーン自身は陰翳のある人間性だったと思いますが、リング上ではほとんど陰翳が見えてきませんでした。
馬場VSキニスキーをはじめ、馬場の若い時期の試合はもっと何度も観なければと思っております。そう言えば、『Number Web』で飯伏幸太が「棚橋に猪木を感じた」的な話をしておりますが、棚橋にどれだけ猪木的な要素があるかはさて置いて、今の若いレスラーたち、もっと謙虚に昭和のレスラーの試合を研究し、取り入れていくべきですよね。昭和のプロレスを知らないライターやファンい持ち上げられて(これでいい)と思い込んでいてはいけません。これはプロレスに限らずどのような分野でも、ある程度その分野が辿ってきた歴史を概観できるくらいになってからようやく「語る」ことができるし、それ以上に当事者は過去の研究を怠ってはならないですよね。ついいつも例に出しますが(笑)、KFCカズチカの試合ぶりは本当に味がないし、これまた語り草にしておりますが(笑)、VSバッドラック・ファレなんて放送事故と言っていいくらいヘタな試合でした。しかし観客はそれで満足していますが、そんな観客に「満足」していては進歩がないと思うんです。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2018-10-02 03:27)
いつも懐かしい俳優さんをご紹介いただき嬉しく思っています。またいっぷくさんの情報量の多さにも感服しています。ありがとうございます。
by wildboar (2018-10-02 05:29)
ここに出てくる人達の映画は大分見てると思います。
※ 爺の白い飲み物は牛乳にコーンを入れて沸かしてます。
家内は豆乳なんです。
by 旅爺さん (2018-10-02 06:17)
おなじみの面々のシリーズですね。
by ヤマカゼ (2018-10-02 06:34)
新百合ヶ丘があるんだから百合ヶ丘もあるのは当然か。新百合ヶ丘のイメージしかないのは何でだろう?(^_^;)
by pn (2018-10-02 07:19)
昔の喜劇は観ていてほっこりしそうです^^
by Rinko (2018-10-02 07:49)
タイトルは存じ上げませんが、出演者の10人中7人は知っています。^_^
by ヨッシーパパ (2018-10-02 18:38)
淡島千景さんを最近見ていないですね、綺麗な方でしたね。
駅前シリーズや社長シリーズよく観ました。
by 馬爺 (2018-10-02 18:45)
こんばんは!
今日は誰かなと開いています!
非常に珍しい人がはじめの1枚に。
その名は千葉信夫・・太ったお巡りさんです。
by Take-Zee (2018-10-02 19:25)
森光子さんはあのり変わらなかったですね
by うつ夫 (2018-10-03 00:08)
>歌手のカメオ出演ではなく、本格的にストーリーに絡んでいます。
今だと「特別出演」ということでストーリー絡むのは"ほんの少しだけ"ということはたまにありますが、そうではないのが斬新に感じます。
by ナベちはる (2018-10-03 01:04)
黛ひかるさんて、後の山崎努夫人ですよね。
by 犬眉母 (2018-10-03 01:55)