『テトラポッドに札束を』(幻冬舎)という書籍を読みました。著者は、そのテトラポットに13歳の時に頭からぶつかり、頚椎を損傷して首から下が動かない車椅子生活となった和佐大輔氏です。今はネットビジネスの世界で活躍していますが、現在に至るまでを振り返るとともに、世界観やビジネスの基本的な姿勢などを述べています。
私がFacebookのアカウントを作って、最初に何人かの友だち申請をした時、まあたまたまのタイミングだったと思いますが、一番最初に承認の返信をしてくれたのが、実はこの和佐大輔氏でした。
私にとっては“最初の友達”というわけです。といっても年齢は親子ほど離れているんですけどね。
和佐大輔氏は高知の出身。中学生の時に事故で首から下の運動機能を失いながら、17歳でネットで収入を得るようになり、現在25歳。収入は今も右肩上がりでネットビジネスのカリスマと呼ばれています。ギリギリで“昭和生まれ”です。
同書では、そんな彼が、明日を求めて試行錯誤した青春時代、ネットビジネスで成功したときの発想、そして今の世の中に求められているものが何かを独自の視点で語っています。
ネットビジネス。具体的には情報商材といわれるものを販売したり、会員料をとってセミナーを開いたりしています。
まあ、この手の人達には、必ず詐欺だの騙されただのという話が出てくるのですが、和佐大輔氏の場合は、そもそも具体的なノウハウというのは一切教えていません。だから、そこに入れば、商材を買えば稼げる、ということはないでしょう。
『テトラポッドに札束を』もそうですが、彼は抽象的な世界観、ビジネス観などを述べているだけで、会員はたぶん、個別的具体的なノウハウを教わるのではなく、彼のことが大好きな信者なのでしょう。だから彼の話を聞くだけで満足なんだろうと思います。
たしかに、彼のメールマガジンや無料セミナーなどを読んだり聞いたりすると、なぜかわからないけれど元気が出てきて、前向きに頑張ってみようか、という気がしてきます。
私のような、他人に対して神経質で不寛容で用心深い人間にそう思わせるのですから、大したものです。
彼はそんな“自分づくり”のコツを、同書でこう述べています。
1.最初に自分をキャラクター化する
2.最初にコンセプトとストーリーを決める
3.最初に仲間を巻き込んでしまう
彼は、なぜ人はその商品を買うのか、ということを突き詰めて考え、値段や性能といった客観的なことだけでなく、それが好きだから、という価値判断にあることに着眼。それが現在の成功につながっているといいます。
つまり、人の心を知るということが大事だというのです。
そのためには、次のことを守ることといいます
1.人をバカにしないこと
2.必ず質問をすること
3.わからないことは必ず調べること
人を馬鹿にしている人間は、自分を守ることに必死で周りが見えていないといいます。「私はこいつとは違う。だから分かり合えない」ではなくて、「私はこいつとは違う。だからその違いを知ろう」という発想の転換が大事だというのです。
そして、彼はアンチ大歓迎。嫌われ人気も人気のうちであるだけでなく、アンチが出ると、必ずシンパも出てくるというのです。
私は一般論としてアンチは認めますが、自分のアンチがあらわれたら歓迎しないですよね。面倒だし、不寛容だから(笑)
プロ・ブロガーのイケダハヤト氏も、アブドラ・ザ・ブッチャーの流血試合と同じで、毎記事炎上していますが、やっぱりネットで成功するには、そのへんの覚悟というか、割り切りが必要なんでしょうね。
本当の絶望から何が見えたか
私は最初に和佐大輔氏を知った頃(2010年頃)、首から下が動かない車椅子って本当かな、と疑う気持ちがないとはいえませんでした。
なぜなら、ネットビジネスの世界というのは、不幸や苦労のどん底生活がまずあって、そこから大ブレイクしたというプロフィールが“お約束”だからです。
私もどん底から成功できた、だからあなたも成功できる、私についてきてくれ、というギミックです。
アフィリエイターでも商材売っている人も、まず例外はないでしょうね。安っぽい不幸を売り物にしています。
でも、彼は本当でした。
そのへんに転がっているインフォプレナー(情報商材販売者)の「苦労」の多くは、冷静に見ると「そんなの大したことねえよ」といえるものですが、和佐大輔氏のような第4,5頚椎損傷による一級身障者というのは、さすがに「それは大変だ」と思います。
本人だけでなく、家族の人生も変わってしまうから……。
そんな和佐大輔氏は、ネットビジネスの世界ではカリスマ的な存在ですが、マスコミ・メディアからはもともと距離をおいていた人です。
有名になれば、追っかけも出るかもしれない。外に出かけて、知らない人に声をかけられるかもしれない。声をかけられるだけならいいけれど、何かされても、自分の体を自分でコントロール出来ないから自分を守ることができない、という話を以前聞いたことがあります。
それが今回、書籍を上梓しました。
出版社は幻冬舎。持ち込みを受け付けない出版社といわれています。ということは、編集者の方から和佐大輔氏にアプローチがあったのでしょう。
本人も、新しいことにチャレンジしたくなったのかもしれません。
同書は、「すべては絶望から始まる」というサブタイトルがついています。冒頭から、「僕は『死んだほうが社会にとって有益な人間』です」などと書かれています。
根拠のない楽天主義ではなく、現実と向き合った合理的な前向き論者としての考え方は、彼とは親子ほど年の離れた私ですが、なるほどなあと思いました。
体の70%が麻痺、車椅子での生活を送る著者だからこそいえる、わかる世の中の仕組みを同書で読んでみませんか。
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