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浜美枝『クレージー作戦 くたばれ!無責任』のヒロインを思い出す [東宝昭和喜劇]

浜美枝

浜美枝といえば往年の東宝の看板女優。彼女を含めた、かつての銀幕のヒロイン13人が、今週号の『週刊ポスト』(2014年2月21日号)で取り上げられています。私は、浜美枝がヒロインとして抜擢され高い評価を得た『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(1963年)を思い出しました。そこには、優しくていじらしい女性を演じた彼女の魅力が十二分に表現されています。

『週刊ポスト』がカラーページに、「昭和の女優は美しい」というタイトルのコーナーでかつての大物女優たちの写真を掲載したことは、このブログの先日、「昭和の女優は美しい!?『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.23』」という記事で触れました。

今週号(4月4日、11日号)の同誌には、「大反響につき1度限りの超豪華付録、甦る青春のスター愛蔵版写真集 昭和の女優は美しい、憧れの銀幕ヒロイン13名、23枚の秘蔵カットを大公開」という袋とじのコーナーが巻頭についています。

昭和の女優.png

前回はただのカラーページでしたが、今度は袋に入ったピンナップです。

「秘蔵カット」の女優は、袋中央に出ているのが八千草薫、それを囲むようにして上から酒井和歌子、加賀まりこ、三田佳子、後ろは9分割されたスペースに、上段左から和泉雅子、京マチ子、浜美枝司葉子大原麗子、倍賞千恵子、原節子、有馬稲子、北原三枝となっています。

「銀幕ヒロイン」というだけに、映画がまだ元気だった1960年代の、看板女優や売り出し中だった若手女優を大映、松竹、東宝、東映、日活と各社からまんべんなく選んでいます。

いつぞやの『アサヒ芸能』の「美人女優57人」とは全く価値観の違う人選です。

美人女優、57人なら誰を選びますか

それにしても、本当に大反響だとすれば、読者は秘蔵写真よりも、彼女たちの出ている映画を観たほうがいいんじゃないかと思います。

今は、当時の映画のDVD化が積極的に行われているわけですから。

この中から今回誰か一人選んで作品とともに何か書いてみようかな、と思いましたが、う~ん、そうなるとやっぱり、浜美枝かな。

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異色のクレージー映画だがベストワーク!


ということで、浜美枝のブレイク作品といえば、またしてもクレージー映画で恐縮ですが、同シリーズでもっとも多くヒロイン(植木等の相手役)をつとめたのが浜美枝です。

それまでも、森繁久彌の社長シリーズに娘役で出演。期待されていましたが、ポスト・団令子として、植木等より一回り以上若い彼女を相手役に抜擢。

植木等の要望もあったんじゃないかと思いますが、結果的に彼女のツンデレなキャラクターは、とくに繊細な演出を心がけていた坪島孝監督作品で存在感を発揮していたのではないかと思います。

私が、彼女がヒロインのベストワークとしてあげたいのは、『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(1963年、東宝)です。



「無責任男」で売りだしたのに「くたばれ!無責任」とは正反対のタイトルですが、坪島孝監督のシリーズ初メガホンで、他の作品とは一線を画す“まじめな”ストーリーでした。

製菓会社の無気力社員、田中太郎(植木等)は、経営の思わしくない会社の起死回生を賭けた新製品、興奮剤入りコーラ、名づけてハッスル・コーラのモニターにさせられましたが、それによって元気が出てくることを自覚。

しかし、興奮剤入り清涼飲料水など、法律で許可されるはずがありません。

責任を求められた発案者の専務(山茶花究)は、興奮剤を抜いた、たんなるコーラを売る子会社を作り開発費回収を、もし売れなかったら子会社に責任をとらせようと画策。クレージーの7人を子会社に“左遷”します。

しかし、ハッスル・コーラは元気が出ると信じ込んでいた田中らは懸命に頑張り、コーラの販路を開拓して経営を軌道に乗せます。

専務は、予定通り回収が終わったから会社を解散させようとしますが、7人は会社を自分たちで買い取ろうと銀行の頭取(東野英治郎)から大口融資を約束するところまでこぎつけます。

すると今度は専務は、子会社を合併して融資契約を製菓会社本社に切り替えようと裏で話をつけます。

会社に利用されっぱなしの7人は「こんな無責任な会社はもうたくさん」と揃って辞表を破って退職。

「やればできるってわかったんだから」と、ピーカンの銀座の大通りを7人で歌いながら胸を張って会社を後にするというストーリーです。

浜美枝は、田中の会社がコーラを売れるよう、自分が交換手をつとめる商事会社の社長のアポイントメントに協力したり、コーラに興奮剤が入っていないことを知って、やる気を失った田中を励ましたりする役どころです。

交換手が一列に並んでいる時の服装は時代を感じさせ、ちょっとしたことですねたりやきもちを焼いたりする浜美枝の表情がまたなんともいじらしい。

古澤憲吾監督の描く世界とは全く異なる青春映画のような作風ですが、私はこの作品が好きで何度も見ています。

メンバーの犬塚弘が、自著で坪島孝監督と山田洋次監督を褒めているのですが、

最後のクレイジー 犬塚弘  ホンダラ一代、ここにあり!

最後のクレイジー 犬塚弘 ホンダラ一代、ここにあり!

  • 作者: 犬塚 弘
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/06/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


私が知る2人の共通点は、必ずエンデイングのシーンが笑顔と青空ということです。

この作品もそうです。観たあとの気持ちもさわやかになり元気も出てきます。

きっとリアルタイムで見ていたら、今よりももっと作品の良さを感じていただろうなと思います。

心のなかにそういう作品があると、落ち込んだ時でも、それを見て元気を取り戻す、ということがあります。

みなさんは、どんな作品にそれを感じますか?

週刊ポスト 2014年 4/11号 [雑誌]

週刊ポスト 2014年 4/11号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/03/24
  • メディア: 雑誌


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