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『素浪人 花山大吉』を観て昨今の大河ドラマ不振を考える

『素浪人 花山大吉』というテレビ時代劇(1969年~1970年)が、現在CSの時代劇専門チャンネルで放送されています。近衛十四郎と品川隆二が演じる、浪人と渡世人の痛快娯楽道中記です。かつてNET(現テレビ朝日)で毎週土曜日夜8時に放送されていた人気番組でした。

『素浪人 花山大吉』のストーリーは、タイトル通りの素浪人・花山大吉と、渡世人・焼津の半次がアテもない旅を続け、その道中での様々な出来事を一話完結でまとめています。

素浪人花山大吉.png

『東海道中膝栗毛』の「やじきた道中」のようなものです。製作はNET(現テレビ朝日)の株主の東映です。もちろん京都の太秦村で撮影していました。

もともと『素浪人 月影兵庫』という、南條範夫の小説を原作とした同名のタイトルで放送されていました(1965年~1968年)が、原作とあまりにかけ離れてしまったために、主人公の月影兵庫に代わって花山大吉を登場させてタイトルも変わりました。

が、主人公の名前が変わっただけで、演者は相変わらず近衛十四郎。凄腕の剣豪で毎回必ずちゃんばらの見せ場アリ。ストーリーも同じパターン。ただし、月影兵庫は猫が嫌い、花山大吉はおから(卯の花の炒り煮)が好きで緊張するとしゃっくりがでるが酒を飲むと治る、という僅かな違いがあります。

テレビ朝日になってからは『暴れん坊将軍』がこの枠で放送されました。看板時代劇が入るんですね。

長寿番組の典型的なスタイル


毎回のストーリーは、時代劇のお約束である同心も岡っ引きもほとんど出てきません。闇の仕掛け人もいません。この2人のほかは、茶店のオヤジ、その娘、その土地の悪徳商人と用心棒、たまにバカ殿(もちろん志村けんではなく統治能力のない殿様という意味)ぐらいなものです。

たぶん台本の多くは、2人の掛け合いに使われているでしょう。非常にシンプルな話です。

それでも、この時代劇がどうして足掛け6年にわたって人気番組として放送されてきたのか。

おそらくは、俳優の個性を尊重してストーリーを転がし、ダレ場を作ることでヤマ場を盛り上げ(野球の投手でいうところの緩急を使い分けた投球という意味)る手法だったので、5年でも6年でも気張らずにストーリーを作り続けることができたのだと思います。

そして、こういう古典的な作り方は、ワンパターンでも飽きが来ないのです。

しかし、映画にしろドラマにしろ、その後の発展のベクトルは、より大きな仕掛けで、より急展開に、より派手なストーリーで、という方向に「進化」してしまったため、それを永遠にエスカレートし続けないと飽きられるようになってしまいました。

最近のドラマがなぜつまらないか、興収は桁違いに伸びてもなぜ映画復権とはいえないか、というのは、このへんに理由があると私は何度かこのブログでも書いてきました。

近年の大河ドラマの視聴率低下がしばしば話題になります。

時代劇のように長いスパンで流れを作る世界は、ワンクールで毎回目いっぱいの展開を詰め込む現代のドラマを見慣れた視聴者には、のろくてつまらないものだとうつることが原因の1つにあると思います。

もうひとつは、役者の問題です。レギュラー時代劇が地上波から姿を消したことで、時代劇を演じられる役者も育たなくなるのは当然でしょう。

品川隆二は近衛十四郎の刀使いは日本一だと絶賛していましたが、時代劇は歩き方1つとっても特有の演技が求められます。今の若い役者はそれを身につける時間も機会もありません。

ですから、岡田准一や綾瀬はるかだけの責任ではないと私は思います。

品川隆二といえば初代ボンカレーCM


近衛十四郎は、松方弘樹と目黒祐樹の父親です。松方弘樹と目黒祐樹は瓜二つというわけではないのですが、もとが近衛十四郎というので納得。近衛十四郎を見ていると、松方弘樹にも見えるし、目黒祐樹にも見えてきます。

品川隆二は、映画やテレビ映画(フイルムドラマ)が全盛の頃活躍した俳優です。大映ニューフェイスから東映に移っていますが、大映出身というのがすぐに分かるような、いわゆる目元キリリ系ではない2枚目。船越英二や川崎敬三のタイプです。それだけにこの作品を含めて時代劇では、目をきつくするためメークが相当厚かったですね。

ボンカレーのCMで松山恵子と出ていたのが記憶に残っています。『五木の子守唄』の替え歌で、「ボンはは~よ~で~きぃて、はよ食える」なんて歌っていました。

お人好しならではの辛酸を嘗めまくった人生も親近感が湧いてきます。

大映時代はいじめにあったのに、自分がこの作品で脚光を浴びてからもそういう人を呼んで共演したり、朝型の近衛十四郎にかわって、撮影後の共演者の飲み食いを自分が仕切ったり、東映時代は萬屋錦之介と労働争議で頑張ったのに他の役者に裏切られたり、いろいろあったようです。

恨みつらみを飲み込める人間としての度量の大きさが素晴らしいと思います。

数年前に、インタビュー映像がオンエアされたことがありますが、今もお元気なら、懐古したり、現在を批評したりしていただきたいところです。

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