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「24時間まるごと山口百恵」で一番観たいのは『花の高2トリオ・初恋時代』 [芸能]

「24時間まるごと山口百恵」が、17日21時から日本映画専門チャンネルHDで一挙放送されることになっています。山口百恵が主演した主に文芸映画、『伊豆の踊子』『潮騒』『絶唱』『エデンの海』『風立ちぬ』『春琴抄』『花の高2トリオ・初恋時代』『古都』などが続けざまに放送されるのです。では今、その中で何がもう一度見たいかというと、私は非文芸映画の『花の高2トリオ・初恋時代』(1975年)です。

山口百恵といえば、レコードのセールスがピンク・レディー、森進一についで3番目に多く、何よりトップランクにあるうちに寿引退した、芸能史上、記録にも記憶にも残る歌手です。

そんな彼女も、「花の中三トリオ」として売りだされた頃は、森昌子や桜田淳子の後塵を拝していました。

そこで、ホリ・プロダクションの総帥・堀威夫氏は、彼女にアイドルの登竜門である文芸映画のヒロインを企画しました。

原作が文学的なお墨付きを得ている国民的映画なら、大きな失敗なく出演作品が実績になると考えたのです。

しかし、森昌子にも桜田淳子にも水を開けられた当時の山口百恵では、「一本立ちの映画企画は成立し難い」状態だったと堀威夫氏は自著『いつだって青春ーホリプロとともに30年』(東経)で書いています。

堀威夫氏は、あらかじめホリ・プロタレント総出演作品の企画書も用意して、山口百恵の『伊豆の踊子』と2本立てで持ち込みましたが、それでも持ち込み先の松竹は難色を示したそうです。

松竹に持ち込んだということは、やはり格調高い小津安二郎的作品を望んだのでしょうね。

しかし、やっと企画を受け入れてくれたのは東宝(当時の松岡功営業本部長)でした。

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『クレージー』『社長』『駅前』『若大将』など、60年代黄金期を支えたシリーズが次々終了した東宝としては、なにか柱が欲しかったんでしょう。

もっとも、松竹が袖にして東宝が受け入れたことは、結果的にホリ・プロ、山口百恵側に幸いしました。

同社の75年の正月映画『エスパイ』の併映作が事情で飛んでしまったため、なんと『伊豆の踊子』が正月映画に繰り込まれることになったと堀威夫氏は同書で述懐しています。

正月映画は、映画館にとってもっとも興行収入が見込めるときです。各社とも会社の象徴ともいえるような看板作品を、お金をかけ、メンツも賭けて用意します。

山口百恵の文芸映画路線は、何も実績のないまま、いきなり東宝の看板作品としてのポジションを獲得してしまったのです。

スターになる人は、そういう幸運が必ずある。「ほしのもと」なんだなあと私はつくづく思います。

山口百恵のステレオタイプでない役を観たい


私はほぼ同世代だからだと思うのですが、とくにファンというわけでもないのに、冒頭に書いた山口百恵作品を全部観てます(笑)

ただ、正直言って、彼女は本職の役者ではありませんし、何より文芸路線は、当時の彼女の売り方と重なる、重くてくらい話が多かったので、わあ、ぜひまた見たい、というほどではありません。

ただ、『花の高2トリオ・初恋時代』(1975年)だけは、いい機会なのでまた観ようかな、と思っています。

これは、彼女が1回文芸路線をおやすみして、「花の高2トリオ」(←「花の中三トリオ」から2年たったのでユニット名も「進級」)が主演した75年のお盆映画です。


>>詳細クリック

なぜ観たいかというと、彼女がいちばん肩の力を抜いて演技している作品だから。

山口百恵というと、必ず「不幸のほしのもと」なんですが、私はそれがそもそも気に入らなかったのです。

片親の子弟なんて芸能界に限定してもほかにもいるし、先に述べたように、彼女は実は大変幸運な人なんです。

なのに、何で彼女を、そんなに「不幸な人」にしたがるのか。

デビュー曲のセールスがそれほどでもなかったことがきっかけで、歌は「青い性」路線、映画やドラマでもかわいそうな境遇の役ばかり。

もちろん、それで売れたからいいのでしょうが、彼女だって森昌子や桜田淳子と同じ高校生なんだから、歳相応の娘さんの仕事があってもいいんじゃないか、と当時から私は思っていたのです。

彼女はこの時期、『夏ひらく青春』という歌を歌っているのですが、それまでの「青い性」路線に貫かれた、暗く重苦しい歌ではなく、彼女にしてはめずらしいアップテンポな楽曲でした。

夏ひらく青春.jpg

その意味で、1975年の山口百恵というのは、すごくのびのびとしたイメージがあります。

『花の高2トリオ・初恋時代』を観て、その頃を思い出してみたい、なんて思っています。

ちなみに、山口百恵の文芸路線というのは、私とは別の視点から批判的な意見があります。

彼女は、1977年の『泥だらけの純情』以来、横須賀ツッパリソングを歌う路線に合わせて青春映画も作られていたのですが、引退映画は“念願の”松竹で文芸映画『古都』を撮りました。

それについて、四方田犬彦氏は、せっかく自分の路線にあった青春映画を撮り始めて脱アイドルの道筋を作りかけていたのにそれを結実させず、“今さら”国民的映画で終わってしまったから「映画的後退」の最後だと失望を込めた厳しい批評を自著『女優山口百恵』で行っています。

山口百恵は、映画において“自分の世界”をつくることができなかった、という話です。

いずれにしてもいろいろな意見があるということは、それだけ見どころが多いのでしょう。

女優山口百恵

女優山口百恵

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ワイズ出版
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本


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