SSブログ

加護亜依、豊川誕、加勢大周、“芸名トラブル”の共通点は? [芸能]

加護亜依の前所属事務所が、「加護亜依」の名前を既に商標登録しており、加護亜依が今後その名前で活動した場合、道義的責任を追及する考えがあると報じられました。この騒動で思い出したのは、豊川誕や加勢大周芸名訴訟です。


加護亜依本人が加護亜依を名乗るのに、なぜ前所属事務所に横槍を入れられるのか。前所属事務所によると、「商標登録時点で加護亜依は母方の池田姓を名乗っており、本名ではなかった(つまり純然たる事務所命名の芸名だった)」「事務所を飛び出した後に姓を戻し、本名だから商標登録に関係なく使えるというのは筋が通らない」「道義的責任を追及したいので、芸名の使用料を請求する」といっているそうです。(「日刊スポーツ」8月21日付)


詳細クリック

芸名に「経済的利益や価値」があることは裁判でも認められていますが、落語や歌舞伎の代々続いた名跡じゃあるまいし、独立した価値を認めにくい「加護亜依」に、争うべき価値がどれだけ有るのか、といえば常識的に考えてかなり懐疑的です。

だいたい、争うなら、加護亜依が本名を池田から加護に姓を変えた2011年にすべきです。なぜ今なの、という気もします。

前事務所の言い分を額面通りとらえるなら、たとえば私達が同じ分野の別の会社に勤め先を変えたら、前の会社が給料の一部を入れろ、といっているようなものです。

サラリーマンとタレントではもちろん事情は違いますが、要求が厳しいなあという気がしました。

要するに、そこには感情の問題があるんでしょう。

相撲出身のプロレスラーでも、円満な転向者は当時の四股名でそのままリングに上がっていますが、そうでない人は新しくリングネームを決めていました。

事務所をかわって芸名を変えたのはこれまで何例かありますが、たとえば平山奈々→夏川純、山本紗衣→スザンヌなどの場合には、心機一転という意味合いが強く、「出て行くんなら名前を返せ」といういきさつで変名したのは、古くは豊川誕の例があります。

“豊川誕”

「孤児の不幸」路線に反発した豊川誕が、5年契約なのに2年で造反

名付け親のジャニーズ事務所・メリー喜多川女史が「『豊川誕』は使わせない」と激怒したため、しばらくは「豊川ジョー」でドサ回り。

当初の契約期間である5年がたち、芸能界から忘れられたところで、やっと使用を黙認されることになりました。

11年前の加勢大周のケースでは、前所属事務所が裁判まで起こしています。


詳細クリック

加勢大周といえば、1990年12月には「石原裕次郎新人賞」に選ばれ、吉田栄作・織田裕二とともに「トレンディ御三家」とまでいわれたひと昔前の人気タレントです。

スポンサードリンク↓

その御三家の一人にまで上り詰めたタレントの芸能活動を、決定的に停滞させる原因になったのが「芸名訴訟」でした。

1991年当時、人気絶頂期にあった加勢大周に独立を宣言された所属事務所が、「勝手に芸名を使って活動してほしくない」などとする訴訟を東京地裁に起こしました。

もともと「加勢大周」の芸名は、同社の代表が「勝海舟」の語感から考え、さらに「勢いを加える」という思いも込めて付けられたものです。

代表にとっては、出て行かれることについて、悔しさから「つけてやった名前を返せ。名づけ人は俺だ」という気持ちだったんでしょうね。

一審の東京地裁(1992年3月)では、「加勢大周」の芸名を原告が考案し商標登録していることを理由に前所属事務所が勝訴しました。

「芸名などは独立した経済的利益や価値を持ち、排他的に支配する財産的権利に当たり、この芸名を勝手に使うことはできない」。宮崎公男裁判長は判決理由でそう述べています。

ただ、加勢大周の場合、実は登録商標はされていなかったことが高裁で明らかになり、二審では原告が敗訴します。

ところが、原告は敗訴で悔しかったのか、今度は「出演契約を守らずに損害を受けた」などという別件を持ちだして新たに訴訟を起こし、東京地裁は計6600万円の支払いを命じました。

しかも、自分のところで新・加勢大周(坂本一生)をデビューさせ、そのやり方が批判されたり、加勢大周がひところの勢いを失ったりしたこともあって、前所属事務所側は結局、「加勢大周の名をプレゼントする」などと言い出す始末。

だったら二審まで争った裁判は何だったんだよ! と言いたくなります。

とにかく、こうして前所属事務所の攻撃によって、メディアが使いづらい状態が続き、平成のトップスターとしての加勢大周は事実上“オワコン”に。

その後も数年間細々と俳優活動は行っていましたが、2008年に覚せい剤取締法違反(所持)と大麻取締法違反(所持)の現行犯で逮捕され、再ブレイクのチャンスは潰えてしまいました。

ということで、芸名トラブル。事務所に言い分はあるでしょうが、こういうやり方がまかり通ったら、タレントが移籍するたびに、芸名をタテにした「引き止め」「嫌がらせ」「意趣返し」が今後も行われるかもしれません。

もちろん、前もって芸名の権利について、タレントとの間できちんとした約束がかわされていれば今回の言い分もわかるのですが、加護亜依の場合、「法的」とはいわずに「道義的」といっているようでは、そのへんもあいまいなのでしょう。

タレントの独立騒動はこれまで何度もあるのですから、事務所側もちゃんと学習して、契約締結の段階できちんとクリアしておくべきです。

そして、契約で縛れない場合は、事務所にとって業腹なことでも、やはりタレントの自由を認めざるを得ないでしょう。

芸名が、事務所に「経済的利益や価値」を所有する権利があったとしても、その名前を名乗るタレントを支えてきたのはファンであることを事務所は忘れてはいけません。

私は別に加護亜依のファンではないし、加護亜依のファンがどれぐらいいるのかも知りませんが、加勢大周の例もありますし、いずれにしても、もっぱら事務所の利益や感情で、芸名を争いの具に使うのは、業界的に見てもタレントを潰してしまう後ろ向きで不健全な行為であり、私には好ましいこととは思えません。

加勢大周もびっくり!芸名・ペンネーム秘話―珍名・奇名のエピソード集 (ワニ文庫)

加勢大周もびっくり!芸名・ペンネーム秘話―珍名・奇名のエピソード集 (ワニ文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1992/09
  • メディア: 文庫


nice!(299) 
共通テーマ:学問

nice! 299

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます