健康食品の扱いが問われています。サプリメントなどの健康食品や農産物など健康効果を売り物にしたい「食品」について、健康への効能・効果を表示することを認める方針が、安倍晋三首相が発表した成長戦略の中に盛り込まれたというのです。
しかし、一部健康食品が、過剰な健康効果表記によるトラブルが続いている中でそのような緩和は、医薬品と食品の違いを曖昧にし、消費者を困惑させるものになるのではないかと私は懸念します。
健康食品の「機能性表示」解禁へ――トクホ並みに?
THE PAGE 6月26日(水)11時45分配信
6月5日に安倍首相が発表した成長戦略の中に、サプリメントなどの健康食品や農産物などで健康への効能・効果を表示することを認める方針が盛り込まれました。食品は医薬品とは異なることから、これまで効果を示してもいいのは特定保健用食品(通称・トクホ)や栄養機能食品に限られていましたが、来年度中には現行の規制が大きく緩和される見通しです。
医薬品と食品をごっちゃにしたトラブルとして、過去にこんなことがありました。
話はさかのぼって2005年6月8日。その2日前に、みのもんたがキャスターをつとめる番組で失言。それが原因で、スポンサーが降板したことが明らかになった日です。
失言はビールの効用について。みのもんたは「ビール酵母は免疫力を上げる」という話をし、「私は必ず朝、ビールとトマトジュースを混ぜてクーッと飲んでいる」から、「皆さん、ビオフェルミンなんておのみになってるじゃないですか。胃腸薬。だったらビールを飲んだ方がいいくらい」とコメントしました。
しかし、ビオフェルミン製薬は同番組のスポンサーでした。
どういうつもりかしりませんが、具体的な商品名をわざわざ出し、それがいちばん言ってはならないスポンサーの商品だったのですから、何とも間抜けな話です。
MCのくせに、番組中のCMを見ないで、居眠りしていたのでしょうね。
6日のうちに番組内で、「不適切な発言があった」として謝罪はしました。そして翌日7日には番組ホームページでおわびと訂正を掲載しましたが、ビオフェルミン製薬はそれでも容認できず、8日にスポンサーを降板しました。
ビオフェルミン製薬はこんにちまで、この件に関しては「コメントしない」としています。
論外、ということなのでしょうか。
いずれにしても、長年提供してきたスポンサーが降板するのは、これほどあっけないことなのです。
失言タレントの起用にスタッフが神経質になるのはよくわかります。
ただ、この件についてもう少しつけ加えますと、これは、たんに「スポンサーが機嫌を損ねた」だけの問題ではありません。
みのもんたがこれまでにもやってきた、
疑似科学的健康情報そのものが問われて然るべき事件なのです。
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そもそも、ビールにビール酵母は入っていません。
一部には「酵母入り」を売り物にしている商品もありますが、通常のビール製造過程では、酵母は熟成の後でフィルタで濾過されてしまうからです。
つまり、ビールを飲んでも、ビール酵母の効能は期待できないのです。
それに、市販されているビール酵母の、栄養素や腸管免疫への期待は根も葉もないものではありませんが、それは健康食品としてのものであり、それで病気が治るエビデンスはありません。
ビオフェルミン各種は「医薬品」もしくは「医薬部外品」であり、薬事法で効能・効果が認められているもの。
食品衛生法に定められた「食品」に過ぎないビール酵母とは、存在する次元が全く異なります。
みなさんは、医薬品と健康食品。どう区別と両立されていますか。
健康食品というと、頭からトンデモ扱いする「疑似科学否定派」と、一方で医療を否定する何でもかんでも健康食品盲信派の人たちがいますが、私はその人たちとは立場が違います。
私は、医薬品と健康食品というのは、役割も存在価値も異なるものだと思います。
医薬品というのは病気と直接対峙するものであり、医師や薬剤師の指導や処方によって使用するもの。健康食品は、自己責任で行える範囲の健康管理をサポートするものだと思います。
にもかかわらず、何の根拠もなく、みのもんたは公共の電波で、具体的な医薬品の名前を出して、健康食品への置き換えを提案したのです。
「おもいッきりテレビ」で長年やってきた「食品による民間療法」のノリなのでしょうが、大衆の疑似科学信仰はこんなところからも刷り込まれていくのであり、看過できない誤りであると、私は当時思いました。
安倍晋三首相が発表した成長戦略。メディアにはきちんとした論考を期待したいものです。
健康情報・本当の話
- 作者: 草野 直樹
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
2013-06-27 17:43
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