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『プロ野球最期の言葉』で考えた“職場の去り際” [スポーツ]

『プロ野球最期の言葉』(村瀬秀信著、イースト・プレス)という書籍を読みました。プロ野球に籍を置いた主力選手の引退時のコメントを載録し、その選手生活を振り返るものです。同書を読みながら、自分が退職したときのことを思い出しました。

プロ野球最期の言葉
『プロ野球最期の言葉』でとりあげられている選手は、古いところでは60年代のスター選手からつい最近まで現役だった選手まで幅広いので、年配の野球ファンなら、ご自身のファン歴を確認しながら振り返ることができるかもしれません。

昨年は、シーズン中からベテラン選手の「引退声明」のラッシュでした。しかし、プロ野球選手全体からすればそれはほんの一握りで、多くの選手は引退会見も引退試合もなく、それどころか自分はまだユニフォームを着ていたいのに突然「戦力外通告」されてしまいます。

しかし、プロ野球選手の統一契約書は、基本的にはいわゆる付合契約といわれるものです。

自由契約(解雇)もシステマチックにできるようになっていますから、公式戦最終戦まで当たり前のように出場していたのに、その日限りで引退させられても不当とはいえません。

その意味で、会見も含めた引退のセレモニーは、選手と球団が一体になって行う、スターとしての引き際の儀式のひとつなのだと思います。その儀式からは、選手の実績、人徳、そして球団の体質などがうかがえるのです。

別のいい方をすれば、それをきちんと行える球団こそが、感動をファンに提供するプロ野球球団としての資格があるということです。

『プロ野球最期の言葉』を読んで改めて感じたのは、阪神タイガースという球団の不可解さです。各球団とも、主力選手が若干の未練を残しながらも潔い引退の弁を述べ、その後は指導者として活躍している中で、阪神主力選手の後味悪い去り方が際立っています。

阪神一筋で通算222勝の村山実投手は、兼任監督時代、チームのためとシーズン途中で金田正泰ヘッドコーチに指揮権を譲って「投手一本」にしたにも関わらず、地元紙からも「二頭政治」と悪意で報じられ、監督どころか現役生活まで終わらされてしまいました。

権藤正利投手は、その金田正泰監督代行から「サル」呼ばわりされ、ファン感謝デーで金田監督を殴打。20年現役の連盟表彰もとりやめになり、その後の指導者への道もたたれました。

江本孟紀投手は有名な「ベンチがあほやから」発言で、シーズンがもっとも盛り上がる8月下旬にユニフォームを脱ぎました。

江夏豊投手、田淵幸一捕手、掛布雅之内野手などは球史に残る一流選手でありながら実質的に追放のような形でトレード、もしくは引退となりました。

経緯は様々ですが、いずれも阪神という球団が、選手を守らないことが原因でもめてしまった「最期」です。地域的には巨人以上の人気球団だけに、このダークで冷たい体質が残念でなりません。

さて、これを書いている私も退職の経験があります。

プロ野球選手ではない市井の一庶民ですが、引き際という点では考えさせられるものがありました。

私は小心な人間のため、ある会社の退職時には事前に「送別会辞退宣言」をしておきました。

辞める人間のために面倒をかけたくないし、かといって送別会の話が全く出なかったらそれはそれで寂しいし(笑)。人望も人徳もない人間であることはわかっていましたし、私としても正直なところ不満があるからそこを去るわけです。いろいろ考えて、事前にお断りするのがお互いのためと思ったわけです。

すると、直属の上司が個人的な装いで、私と近かった同僚にも声をかけて食事会を開いてくれました。個人的にごちそうしてくれた同僚もいました。ちょっと意外だったですけどね。そういうことをされると、「送別会辞退宣言」をした意味もないし。

でも、自分のような北向変人とでも「また縁があったら一緒に仕事をしよう」と言ってお別れできる関係というのはいいものだなと思いました。

みなさんは、勤務先を退職された経験はおありでしょうか。その際、「きれいな辞め方」はできましたか。

追われるように退職するような経緯があるとしたら、そんな会社は辞めてよかったんじゃないかと思います。円満退社というのはきれい事かもしれませんが、「人材が大切」などといいながら、次の人生を祝福してきれいに送り出せない会社などはろくなものではありません。もちろん、自分自身が至らなくてもそれは実現できません。

「きれいな辞め方」ができるかどうかは、まさにその人の人徳と会社の体質の両面が評価される場面だと私は思います。

プロ野球 最期の言葉 (文庫ぎんが堂)

プロ野球 最期の言葉 (文庫ぎんが堂)

  • 作者: 村瀬秀信
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2012/12/02
  • メディア: 文庫


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コメント 29

wattana

いっぷくさん、おはようございます。
依願退職歴2回、脱サラして10年以上になります。2回目の退職は、(社長の経営方針に)不満があって辞めたので、不満退職です。
by wattana (2013-03-18 04:24) 

pandan

やっぱり引き際って
見極めが大切ですね。
by pandan (2013-03-18 04:39) 

moto_mach

自分も最後には何かしてあげたいと
思われる人になりたいですね
by moto_mach (2013-03-18 06:25) 

茶の間おやじ

おはようございます、以前居た職場は技術集団の寄場みたいでしたので依願と半強制退社が多い処でした~自分は依願でした。辞職した後の解放された喜びを感じた瞬間が忘れられません。
by 茶の間おやじ (2013-03-18 06:25) 

uryyyyyy

いっぷく さん、おはようございます。

最後の一文、うっ、と思わされますね。
人徳・・・ないなぁ(涙)
by uryyyyyy (2013-03-18 06:39) 

muk

転勤の経験しか無いのですが、前任校前前任校では生徒が泣いて送りだしてくれました。ありがたいです。
同僚も送別会で泣いてくれました。そんな人間では無いのですが、ありがたかったです。

by muk (2013-03-18 06:53) 

ponnta1351

娘時代からお勤めした経験が有りませんでした。50歳ごろ好きな絵を生かして、スーパー本社の販売促進課へパートとして10年。
当時は手書きのPOPが主流で、全国スーパーPOPコンテストで優勝もしました。

課長が変わり、それが嫌な奴で、イヤナヤツデ!尻捲って(失礼)止めました。
従って、送別会なんかありませんでしたが、同僚とは今でもお付き合いしています。

上司との相性も有るでしょうが「尻まくって」止めるにやめられない家庭持ちの男の方は大変でしょうね。
by ponnta1351 (2013-03-18 07:19) 

chima

引退会見なしで辞める選手もいるんですねー
知らなかったです
お相撲さんなどでもそうなんでしょうね、きっと。
by chima (2013-03-18 07:25) 

やおかずみ

プロ野球界ではきれいな辞め方が出来るというのは
幸わせですが、稀なことでしょぅね。
by やおかずみ (2013-03-18 07:37) 

ikamasa

こんにちは。阪神は、ファンが何層にも分かれていて、勝っていても、負けていても、意見や主張が飛び交い、ゴタゴタもかならず表に出てしまうという、伝統?を維持しているようです……経営がかわってからすこしはよくなったという人はいるらしいですが。
by ikamasa (2013-03-18 08:05) 

さきしなのてるりん

阪神ってそんな球団なんですか。熱烈なファンがいるから、それなりに魅力のあるところなんだと思ってたんですがねぇ。
わたしは送別会は辞退しました。ま、定年退職ということでしたし、何かくれるなら「アンネのバラの苗木」とおねだりしておきましたら時季ハズレで良い苗木がなく、他のバラの木をくれましたが。今も1か月に1度会社に買い出しに行ってます。
by さきしなのてるりん (2013-03-18 08:47) 

繭

立つ鳥跡を濁さず・・・的なでしょうか?
野球の引退も職場を去るってことですもん((b´∀`))ネ♪
by 繭 (2013-03-18 09:36) 

kiko1578

読んでいていろいろと昔の事がよみがえりました。きれいに辞めるって簡単そうで難しいです。
by kiko1578 (2013-03-18 09:37) 

こうすけ

こんにちは。実力の世界では、要らなくなったら解雇なんでしょうが、シーズン中に話が出るときはスター選手なら生活設計ができるのだろうけど無名の人は大変そう。ちょっとかわいそうな気もします。
by こうすけ (2013-03-18 12:50) 

フヂ

会社員時代も、アルバイト時代も、
割と円満に辞められた方だと思います。
引き留められて、退職が1年延びたことも
ありますが…(;´Д`A ``` その時は嫌で
嫌でたまりませんでしたが、今となっては
良い思い出、ということにしておきますw
by フヂ (2013-03-18 13:16) 

はなぶく宇宙人

恥ずかしながら、わたしは幾度となく退職した経験があります。
自分なりに「きれいな辞め方」ができたとは思っていますが、それがわたし自身によるものだけではなく、会社のおかげでもあったのだと、改めて感じさせていただきました。
by はなぶく宇宙人 (2013-03-18 14:53) 

isoshijimi

また、縁があったら一緒に仕事しよう、そういいあえる、お互いに認めあえる関係が良いですね。
個人的には、以前職場にいた、かなり上の方の方が、熱い思いで退職しようとした人間を引き止めていたのは、素敵でした。
多くの方はどうしてもシステマティックに物事を処理されてしまっていたので…
by isoshijimi (2013-03-18 15:31) 

楓〇

私も何度も退職経験してます。ひとり親家庭で子育てと生活に追われ、己の生活のことで精一杯、きれいな辞め方など思い致す時間がありませんでした。かなり事務的に退職してます。今、振り返るとあの時の上司の言葉は、やめないでってことだったのかな?冷たい人間だって思われてただろうな。と、今頃思うことがあります。心の中でごめんなさい。そして、ありがとうです。
by 楓〇 (2013-03-18 17:35) 

昆野誠吾

少人数の会社に勤めていました。
閉店後、おつまみとビールで
軽く乾杯して退職しました。
遠く離れるわけでもなく、今後もお付き合いが
あるからということでしたが、
盛大にやると寂しくなってシンミリしちゃうから
サラっとやったんだと思います。感謝♪
by 昆野誠吾 (2013-03-18 17:52) 

まとめ風呂

阪神というチームはファンに愛されても、球団(会社)としてはアレだということですか。
by まとめ風呂 (2013-03-18 18:02) 

K

何度か退職(転職)をしましたが、「きれいな辞め方」出来たんでしょうか?その後の付き合い方を考えると・・・

by K (2013-03-18 18:14) 

なんだかなぁ〜。横 濱男です。

人を大切にしないような会社はイヤですね。



by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2013-03-18 20:50) 

銀狼

私も3年前に20年勤めた会社を辞めたのですが
表向きで「円満退社」と言わされました(汗)
辞める間際での当時の社長とのやりとりは忘れたくても
一生忘れられません。。。
by 銀狼 (2013-03-18 22:14) 

あるまーき

こんばんは。自分はまだ退職したことがないのですが...
一生働けるような業種でもないし、また、そういう会社でもないので、考えなければならない段階にきてはいるのですが。
「キレイな辞め方」、難しそうですね。
「送別会辞退宣言」、自分も、そのときには多分すると思います。
by あるまーき (2013-03-18 23:50) 

NO14Ruggerman

私自身は退職の経験を有していませんが
娘が昨日新卒後1年しか勤めていない職場に
辞表を提出しました。
パワハラを受けたことにより労基署にも相談した
上での決断です。
親ながら考えさせられました。
by NO14Ruggerman (2013-03-19 00:25) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございました。
いろいろなご経験勉強になりました。

wattanaさん。
>不満退職です。
そうですよね。やりがいがあれば退職しませんものね。

はなぶく宇宙人さん
>わたし自身によるものだけではなく、会社のおかげでもあったの
そうですね。私もそれを感じたのです。

みなさんのブログにお邪魔した際にまた書かせていただきます。

by いっぷく (2013-03-19 05:18) 

momiji

きれいな辞め方については同感です。
最近カミサンが移動を理由に公的な職場を辞めましたが、上司は慰留もご苦労様もなかったそうです(^^;)
上司も追いつめられ余裕がない現代を感じました。
by momiji (2013-03-19 14:06) 

わんわん

職場を辞めたのはほとんどアニーパパの転勤でしたが、一度だけリストラのような形で辞めさせられました。その時はちょっとショックでしたが、よく考えると上司とちょっと合わなかったな〜って思います。その後もっと良い条件の職場が見つかったので辞めさせられて良かったと思います。
by わんわん (2013-03-19 20:02) 

cincy

おはようございます。コメントありがとうございました。
高校受験も無事終わり一息です。家族でいい経験になりました。積み重ねの長男、一発勝負の次男、要領の三男。三者三様なのでこれからも楽しみです。いつもありがとうございます。
by cincy (2013-03-20 08:26) 

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