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PM2.5問題、緊急性とリスクは? [社会]

PM2.5(微小粒子状物質)問題が取りざたされています。とくに中国から近いといわれる西日本地域の方々は不安を感じて当然だと思います。

PM2.5は大気汚染物質であり、様々な呼吸器疾患のリスクがあることが報じられています。空気清浄機など対策情報も盛んに論じられ、例によって中国政府側の独善的な態度から、ネットでは汚染の不安とともに、反中感情がみなぎっているように感じます。

しかし、一方ではそうした報道に懐疑的な意見を述べる識者もいます。たとえば、呼吸器内科医・倉原優氏のブログ「呼吸器内科医」における「PM2.5の問題は本当に緊急事態なのか?」という記事が、フェイスブックでシェアされていたので今回ご紹介します。
中国の環境汚染は何年も前から知られていることです。そして、近隣諸外国に大気汚染の影響をもたらしていることも周知の事実です。大気汚染の実態を把握していたのにもかかわらず、今頃になってなぜ大騒ぎすることになったのでしょうか。そして、PM2.5の問題は今すぐにでもN95マスクを装着して緊急的に対処しなければいけないことなのでしょうか。
http://pulmonary.exblog.jp/19782630/
倉原優氏の記述を抜粋すると、

・過去にも何度も”基準値超え”は計測されているので、今さら”基準値超え”をニュースにする意味は無い
・PM2.5の問題そのものは中国由来ばかりではない
・PM2.5によって肺癌等のリスクは高まるという報告はあるが、長期曝露の疫学的研究であり、短期的に曝露することの健康被害を述べたものではない
・肺癌のリスクというなら、コーヒーを1日2杯飲めばリスクが高まるという報告だってある(だから今回だけ騒ぐのはおかしい)

その上で、「現時点では、少なくとも肺癌の一次予防としては喫煙対策が最も重要(PM2.5の優先順位はもっと下)」「PM2.5という流行の物質をマスメディアが漫然と「緊急事態だ」「N95マスクを買わないと危険だ」と流布する行為は、決して倫理的に許されるものではない」と指摘しています。

記事本文には書かれていませんが、コメントの部分で、今回の騒動は「反中感情を煽ろうとしているのではないか」との懸念も述べられています。

要するに、PM2.5は大気汚染に違いないが、今改めて緊急に騒ぐのは科学的に見て合理的ではないし、商業的狙いも勘ぐれる、ということのようです。

みなさんはこのブログ記事も含めて、PM2.5問題をどう考えられていますか。

私の考えでは、大筋で相容れない意見ではありません。

なぜ「今」騒ぐのか、というのはやはり指摘せざるを得ない点だからです。

たとえば、リナックスの世界では有名な情報処理推進機構国際標準化推進(OSC) 専門委員の木戸彰夫氏は、2002年くらいから中国に出張に行くたびに咳で苦しんだとフェイクブックで告白しています(実は木戸氏と私は同級生なのです)。つまり昨日今日始まった汚染ではない、ということです。

それに、医師でありながら、マスコミ報道の危うさや商業的な狙いに言及されるというのは、社会に対する見方が深いというか、センスのいい方だと思います。

ただ、肺や気管支など呼吸器系に既往症がある人の場合や、ぜんそくなどデリケートな状態にある人はどうなのか、そういう人でも「喫煙対策が最も重要」として、今回の大気汚染を受け入れても大丈夫なのでしょうか。その点で私は不安が残ります。

肺癌というのはがんの中で一番多く発生していますが、100%喫煙によるものとはいわれていません。たとえば、芸能リポーターとして活躍した梨元勝氏は、全くたばこは吸えませんでしたが、重い肺炎を2度経験していたそうです。肺の既往症もリスクのうちといわれていますが、梨元勝氏などはそれを疑えるケースです。

肺に既往症のある人は、いわれなくても喫煙はしていないと思います。そういう人にとって、意図して避けることのできない大気汚染は本当に優先順位の低い問題なのか。該当者が得心するためには、そのへんはもう少し丁寧な根拠の積み上げと啓蒙を求めたいと思います。

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