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あらゆる領収書は経費で落とせる、の真骨頂 [経済]

税務署

「あらゆる領収書は経費で落とせる」 (中公新書ラクレ)という書籍について今回は書いてみます。8月30日の記事で書いた、「お坊さんはなぜ領収書を出さないのか」 (宝島社新書) と同じ、元国税調査官の大村大次郎氏による実用書です。「お坊さんはなぜ領収書を出さないのか」 と「あらゆる領収書は経費で落とせる」は重複しているところもありますが、後者はタイトルどおり、「経費」についてとくに詳しく書かれています。





税務署と坊さんとのたたかい

「あらゆる領収書は経費で落とせる」は、交際費や福利厚生費を有効に使う啓蒙から始まっています。

大村大次郎氏は、法人(会社)と個人事業の違いは法務局に登記しているかどうかだけであるのに、交際費の決まりが違っていることを指摘。

大企業は交際費の損金処理が認められていないし中小企業も金額の上限があるが、個人事業にはその枠がないことを教えてくれています。

そして、一定の手続きと口実が成立すれば、家計消費をそれらに計上できることを説明しています。

ここを読んだとき、私は故・青木雄二氏の漫画「ナニワ金融道」を思い出しました。

何の話かは忘れましたが、ある産廃業者が、大きな敷地に立派な建物を構えてしっかりと事業を営んでいるのに、そこは会社組織になっていない。産廃業者は個人事業の方がいい(儲かる?)というようなことを話していました。その理由は漫画にかかれていなかったのですが、交際費の使い方もその理由のひとつだったのかもしれません。

「あらゆる領収書は経費で落とせる」に話を戻すと、キャ×バクラ代や、キャ×バクラ×嬢にお手当てを出す費用は、税務上どのような手続きと口実で「経費」にできるか、というようなことも書いてあります。

ネタバレになりますが、その「お手当て」の名目は、役員報酬、業務委託、情報提供料などがありうると書かれています。私は、あるとすれば業務委託だろうなと思いました。

役員報酬で支払うには当然ですが役員にしなければなりません。それには登記をしなければなりませんから、いちいち株主総会を開かなければなりませんし、そもそも役員賞与は節税になりません。

かといって、情報提供という具体的な名目では「費用」になってしまいますから、客観的な証拠を残さなければなりません(かくかくしかじかのことで○○は××だという情報を得た、というような記録が必要)。

それに比べれば、業務委託なら適当な委託内容を決めれば、あとは定額でまとまったお金を渡せるし、事業が危なくなったらいつでも打ち切れます。

ただ、いずれにしても個人商店ならともかく、同族でない会社でそれはなかなか難しいことですから、まあ書籍の目次構成を面白くするための話であると私は読みました。

領収書が、個人名や「上様」でも、レシートでも、メモでも有効というのは8月30日の記事でも書いたとおりです。

そうしたことは、これまでに上梓されていた同種の実用書にもある程度書かれていたことなので、このジャンルの書籍をたくさん読まれている方にとっては、とくに目新しさはないかもしれません。

が、「あらゆる領収書は経費で落とせる」の真骨頂は、そうした雑多なTipsの紹介にとどまるのではなく、税金の申告についての不正は、挙証責任が納税者ではなく税務署であるということをつねに強調している点にあります。

たとえば、税務署に呼ばれて、「この費用はおかしい」と言われたとき、そこで「そうですね、おかしいですね」と相手の言いなりになって申告しなおす必要はないと大村大次郎氏はいいます。

どう「おかしい」のかを立証する責任は法的に税務署側にある。だから納税者は、申告に嘘さえなければ、額が大きかろうが、使い古しの紙切れに書かれた説得力のない出金伝票だろうが、何もびくびく怖がることはない、と教えてくれています。

税務署というと、怖いところという世間のイメージがあるから、そんなことはないのだ、少なくともその怖さに負けて言いなりになることはないということを法的根拠つきで教えてくれているわけです。

たいへんためになる話です。

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税務署員は怖くない


ただ、中小零細の事業者で確定申告経験者ならご存知と思いますが、税務署員は決して怖くありません。

私も確定申告をしますが、20年以上申告していて、書類の書き方が雑で呼び出されたことも2度や3度ではないのに、怖い税務署員に当たったことなど1度もありません。

それは考えてみれば当然のことで、税務署は中小零細の事業者なんか修正申告や追徴課税させてもたかが知れているので、費用対効果がないからいちいち細かくつっこみません。

ですが、ときどきブログを見ていると、ちょっととんがった女性の起業者などに、税務署員が意地悪に追及してきたと書いているものがあります。

その人がいくら稼いでいるのかは知りませんが、たいていは、そういう現実を知らない新人起業者の「見栄」だと私は思っています(笑)

巷間イメージが定着している「怖い税務署員」を想定し、“それに対峙するアタシは起業者だからこそ、あなたにそんな経験ないでしょ”というような自己陶酔も含んだ見栄。

それほど売れているとも思えない漫画家が、締め切りと格闘しているなんて話と同類のものでしょう。

私も、1度は本当に「税務署員の意地悪な追及」を受けるほど儲かってみたいものです。

あらゆる領収書は経費で落とせる (中公新書ラクレ)

あらゆる領収書は経費で落とせる (中公新書ラクレ)

  • 作者: 大村 大次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/09/09
  • メディア: 新書


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コメント 2

rtfk

税務署にツッコまれたり
顔を覚えられるくらい稼いでみたいです(涙)


by rtfk (2012-09-08 07:16) 

thisisajin

↑同感です(笑)
by thisisajin (2012-09-09 04:20) 

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