小林幸子騒動、といえば、最近報道される機会が少なくなったが、河本準一の生活保護受給問題の前に取りざたされていた芸能事件だ。
小林幸子が、長年一緒にやってきた社長と専務を解雇したことで、恩知らずだ何だと芸能マスコミからはサンドバッグ状態になった。
その後も、小林幸子が記者会見を行って、「お金を支払うことで和解した」と報告したところ、「紅白に出たいからだろう」とバッシング。
元社長が「気持ちは和解ではない」と反論すると「やっぱり小林幸子が悪い」とさらにバッシング。
個人事務所の問題なのに、まるで小林幸子が国家転覆を企てた非国民であるかのようなメディアの「小林幸子恩知らず」の大合唱だった。
ところが、風向きが変わってきたのか、「日刊ゲンダイ」(7月18日付)が、「小林幸子にも三分の理」というタイトルの記事を書いた。
メディアで、はっきりと小林幸子を擁護する記事をはじめて見た。
……が、読んでやや脱力した。
中身は、おおむねこういうことだ。
小林幸子は元社長や専務に世間的に見ても少なくない給料を払っていた。小林幸子が本当に大変だったのは「おもいで酒」がヒットするまでであり、小林幸子が有名になってからマネジメントを始めた元社長らが小林幸子の全部を面倒見たような言い方はおかしい……。だから小林幸子にも三分の理がある……
なぜ脱力したか。
そんな「三分の理」なら、この騒動が起きた時点ですでにわかっていたことであり、いまさらそんな理由で、一転して小林幸子を擁護するのはおかしいからだ。
つまり、新事実が発覚したわけではなく、状況は変わらないのに報じるスタンスだけが変わったのである。
どうしてだろう。どうしてそんなカメレオン報道になるのだろう。
小林幸子騒動は、元社長が芸能界のドンの理解をとりつけたため、マスコミが配慮していっせいに小林幸子を叩く側に回っている、などという忌まわしい噂話がある。
要するに、マスコミ報道のスタンスは、その“ドン”次第ということである。
芸能マスコミなどというが、芸能報道にジャーナリズム精神はないのか。
私は、小林幸子のファンでもアンチでもない。「紅白」はもうずっと前から見ていないので、小林幸子のド派手な衣装とやらも知らない。
ただ、この人は五月みどりらが所属していた「第一プロ」の歌手のイメージが強かったので、いつ独立したんだろう、ぐらいには思っていた。
その程度の認識だから、逆に偏った見方をしないですむのかもしれない。
元社長が、和解金でも納得しないとがんばっているという報道で、「この元社長とやら、少しやりすぎだろう」と思った。
その元社長がどんなに辣腕マネージャーか知らないが、主役は小林幸子である。
客は小林幸子の歌を求めている。元社長の仕事はあくまでも縁の下の力持ちでしかない。元社長が去っても、小林幸子の名前は残るが、小林幸子がいなくなったら、元社長は第二の小林幸子をつくれないだろう。
事務所は、小林幸子がオーナーなら、社長といえども解雇されることはある。小林幸子の夫の差し金であっても、それは小林幸子オーナーの裁量である。
芸能界が「恩」「しがらみ」を重んじる世界だからといって、何もマスコミがそれに付き合う必要はない。
メディアはメディア独自の判断で、公平に、冷静に問題を報じればよかったのだ。
芸能マスコミが、本当に“ドン”に気兼ねして、小林幸子バッシングに舵を切ったかどうかはわからない。
ただ、少なくともいえることは、マスコミの報道は、いったん叩く対象となったら、特定の人物をとことん集中的に叩くことが習い性になっているということだ。
そして、それがワンパターンで飽きられたかな、と思うと一転して「再評価」することもある。
要するに、無原則にいじっているだけなのだ。
かつての野村沙知代や和泉節子などを思い出してほしい。まるで、郵便ポストが赤いのもその人たちのせいであるかのような、もう暴力的としかいえないようなバッシングの大洪水だった。
河本準一問題だってそうだ。受給システムの不備という問題の本質よりも、河本準一攻撃で興奮しまくっていたではないか。
私が気になるのは、メディアのこういう報道スタンスが、国民の思考判断に反映されてしまっていることだ。
これが芸能人ならまだいい。芸能人は話題性が勝負。いじられてナンボだから。
だが、たとえば政治家に対してもそうした報道を繰り返していたら、国民にどのような影響をもたらすのか。
政治家の行動・判断がわれわれの生活を左右するのに、有権者として政治をきちんと判断できない思考にされてしまったらこの国はどうなるのか。
入れ知恵された悪意による無原則な個人攻撃ほど醜く不毛なものはない。それはメディアであれ、一国民の意見であれ同じことである。
大きく影響を受ける報道もありますよね。
by pandan (2012-07-22 06:08)
小林幸子騒動に河本準一騒動・・・暇なマスコミは今度何にくらいつくんだろう? マスコミに一旦掴まると騒動は大きく広がりますね。次期ターゲットは誰か?
by 旅爺さん (2012-07-22 17:52)
いっぷく さん、こんにちは。
河本の件は個人が槍玉にあげられたことは
良いことではありませんが
生活保護の不正受給の問題はね・・・
あれで日本の財政が無駄に逼迫しているのも事実ですし。
この件にしたって、ゴミメディアは核心部分には
触れていませんもの、ほんとメディアは信用なりませんわい。
by uryyyyyy (2012-07-22 18:30)
pandanさん、コメントありがとうございます。
国民は受け手なので、ウソも100回書かれれば
そうなのかな、と思ってしまいますからね
by いっぷく (2012-07-25 01:15)
旅爺さん 、コメントありがとうございます。
まあマスコミは報じるのが仕事なので
つまらない出来事を面白く見せることも
役割とは思うのですが、本質をゆがめて
報じてほしくないですよね
by いっぷく (2012-07-25 01:17)
uryyyyyyさん 、コメントありがとうございます。
河本準一の批判自体はいいのです。
ただ、河本準一派か、片山さつき派か、みたいな
対立軸で「論争」し、どちらかをケナすことが
目的化してしまったら
生活保護の受給システムの矛盾という今回の問題の本質が
なんら解決しないまま、「論争」に飽きたら
そこでおしまい、ということになってしまうので
それじゃ、何もならないだろうということです。
by いっぷく (2012-07-25 01:20)
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
by 志望動機 (2012-09-13 11:57)