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週刊文春の戦後史、スキャンダルを書く理由 [社会]

週刊文春の今週号は、橋下徹大阪市長の女性スキャンダルが書かれているそうだ。この記事を書いている時点で、まだ店頭に出ていないので実際に記事は見ていないが、小沢一郎氏怪文書、そして今回と、政治家のタブーに切り込んだ勇ましい媒体としての評価は高まりそうである。……が、本当にそうだろうか。

週刊文春、というより文藝春秋社は、これまでにも幾多のスクープをものにしてきた。たとえば、政治関係では田中角栄氏の金脈、日本共産党の研究、日本共産党幹部とソ連共産党のつながりなどがあり、最近では冒頭に書いたように小沢一郎氏の怪文書がある。

一応若い方にお断りしておくと、「研究」といっても、雑誌社の研究というのは「叩き記事」と同意語である。

同社の記事は、田中角栄氏の政治生命に大きな影響を与えた。日本共産党幹部とソ連共産党のつながりをスクープしたときは、古参幹部の野坂参三氏が100歳にもなって同党から除名されたことで一部の文化人が同党と距離を置くようになり、同党は二重のダメージを受けた。

政治以外にも、ナベプロ、ジャニーズ事務所、三浦和義氏、そして先日の巨人・原辰徳監督など、時の権勢を誇る個人、企業、団体に対して、片っ端からタブーをぶち破るかのような、センセーショナリズムと覗き見主義で特ダネを連発した。

だが、実はその一方で書きトバシも少なくない。毎週、車内の中吊り広告にバーンと出る特ダネは目立つが、実は羊頭狗肉、いや、もしかしたら嘘八百かもしれないのだ。

以前、同社法務部に話を聞いたことがあるが、名誉毀損裁判の勝率が高いことを威張っていたものの、それはほぼ6割。つまり、4割は不当に人や団体を傷つけていることになる。それが実態なのだ。

しかも、同社が敗訴のたびに、反省や再発防止をきちんと読者や一般社会に向けて説明したことも約束したこともただの1度もない。

今回の東電などは当然だが、どこの企業だって、自らの営みが社会・国民に迷惑をかけたら、記者会見をしてコウベをたれ、調査委員会がなにがしかの報告をして、どのくらいヤル気かは別として、一応「これからはこういうふうに気をつけます」という発表がある。

マスコミがそれをしないのは、表現の自由を特権と考えた言論機関の甘えだと私は思う。

残念ながら、それはネットで、マスゴミなどと誹謗される口実になっている。

問題はそれだけでない。たとえ間違いがあってとしても、フェアに、誰に対しても、どんな組織に対しても等しく批判精神のペンを用意していれば筋が通っているが、残念ながら同社はそうではない。

たとえば、公約違反の増税やマニフェスト棚上げに舵を切った野田佳彦総理には、財務省にマインドコントロールされた言い分をそのまましゃべらせ、記事にしている。

要するに、週刊文春は官僚帝国主義の保守国家を求めていることがはっきりとわかる。

昨年亡くなったジャーナリストの大御所、松浦総三氏は、「文藝春秋の研究」の編著があり、それ以外にも折に触れて文春批判をしていたが、同氏によれば、田中角栄の研究も、日本共産党の研究も、根っこは同じで、同社の体質からして必然的に出てきた「スクープ」だという。

おそらくは、今回の小沢一郎氏や橋下徹氏の件もそうであると私は思う。

つまり、官僚帝国主義の保守国家を目指さない政治家や政治勢力に対しては、右も左も保守も革新もなく、ときには黒のものもシロと言いくるめるようなきたない論理まで使って強引に叩く、ということだ。

そう書くと、日本共産党はともかくとして、田中角栄氏や小沢一郎氏のような保守政治家をどうして叩くのか疑問に思われるかもしれないが、政治に少し詳しい方ならご存知のように、彼らは「保守」としては異端であり、かつ傍流である。

「政治は数」の理念で陣地を広げたから、木曜クラブ(田中派)や経世会(竹下派)は、さも自民党の中枢にいたかのように見られがちだが、彼らは決して「保守本流」ではない。

わが国における「保守本流」というのは、親米、親官僚、タカ派、反共の要件が揃わなければならない。

自民党派閥の中で、それが全部揃っているのはどこか……

そう、清和政策研究会である。

同誌、というより同社が目指すのは、雑誌ジャーナリズムの立場から、保守本流が目指す新自由主義の応援団ではないだろうか。

原辰徳1億円事件などは、週刊誌ジャーナリズムとして一応やっている「行きがけの駄賃」程度のものではないかと私は思っている。

『文芸春秋』の研究―タカ派ジャーナリズムの思想と論理 (1977年)

『文芸春秋』の研究―タカ派ジャーナリズムの思想と論理 (1977年)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 晩声社
  • 発売日: 1977/06
  • メディア: -


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pandan

本当能古とを見抜くのは難しいですね。

コトデンの車両〜そうなのですね、
今度車両点検する人たちにスポットを当てた
写真集が高松で評判が良くて、
全国発売されるみたいです。
by pandan (2012-07-19 06:57) 

kgtk84

週刊文春は、半信半疑で読むもの。
胡散臭い週刊誌もそれなりに価値はあるとおもいます。
以前あった ナイガイ それなりに重要な役割があったと見てます。

大手新聞も最大80%までの信用で読むべきでは?
いっぷくさんも 読者から全幅の信頼を得ると危険水域に突入では?
by kgtk84 (2012-07-19 09:15) 

いっぷく

pandanさん、コメントありがとうございます。
琴電は、京急だけでなくいろいろな電鉄会社の
車両が入っているので、楽しいですよね。
私は、京急の230形という車両の引退の日に
見にいけなかったのが残念なのですが
今はまだ600形が走っているみたいなので
今度こそ引退前に見に行こうと思っています。
by いっぷく (2012-07-22 15:35) 

いっぷく

kgtk84さん、コメントありがとうございます。

>以前あった ナイガイ それなりに重要な役割があったと見てます

内外タイムスは倒産前、東スポや新日本プロレスにいた
永島さんが編集長でしたよね。
ショーアップされた記事満載だったでしょうね(笑)
新聞も読み物ですから、読んでもらえる紙面づくりとして
私は否定していません。というより東スポは結構好きです。
by いっぷく (2012-07-22 15:42) 

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