戦後史上、政治とマスコミの衝突がしばしばあった。たとえば、第61代総理大臣の佐藤栄作氏は退陣時、新聞記者を追い払ってテレビカメラを相手に一人会見を行った。そのとき追い払われた記者の一人が、あの渡邉恒雄氏というのは面白い。
テレビ朝日が、非自民政権を画策して日本共産党以外の野党連合に有利な報道をしたのではないかという「椿発言事件」もまだご記憶の方もいらっしゃるだろう。
戦後史上、朝日新聞やテレビ朝日といったANN系を「左」だの「左翼」だのと指摘する向きがあるが、私はそうは思わない。産経や読売が体制的な報道姿勢だから、オポジションとしてそうなっているだけである。
要するに、産経や読売が自民党系を応援する限り「朝日」は、「左翼」だからではなく商売としてその対抗的立場に立ち、民主党を応援することになるだろう。
2004年6月4日、BRC(放送と人権等権利に関する委員会)はテレビ朝日の「たけしのTVタックル」で名誉を傷つけられたとして、自由民主党の藤井孝男元運輸相(当時、現たちあがれ日本)が権利侵害を申し立てていた問題で、申し立てを認めて同局に対して社内体制の整備と正確な放送に努めるよう勧告した。
BRCが公人に対する権利侵害を認めたのは初めてである。
問題となったのは2003年9月15日、自由民主党総裁選に立候補していた藤井孝男元運輸相が、拉致問題を質問した野党議員に不規則発言ややじを飛ばしているような映像が放送されたが、実際に本人は不在で不規則発言の事実はなく、別の場面でのやじシーンを使ったというもの。
同局は、藤井孝男元運輸相の抗議に対し、10月6日放送分の「TVタックル」などで謝罪放送をしたほか、幹部7人の減俸、けん責などの処分を行っていたが、BRCは、「名誉回復措置が取られたとしても、原因を究明し、視聴者に対する説明責任と、同じ誤りを繰り返さないための社内体制の整備が必要」として勧告した。
どんな場面であろうが野次は好ましくない、という突っ込みはここでは措こう。
たとえそうであったからといって、異なる場面でそれを使う「でっちあげ」が免罪されるわけではあるまい。
為政者・与党を厳しくチェックすることはマスメディアにとって求められることだが、だからといって、与党に対しては手段を選ばずどんな中傷や揶揄をしても構わないということにはならない。
「反自民」の建前なら多少の虚偽や誇張は構わない、というおごりというより体質のようなものがこの局にはあったのではないか。
だから、椿発言があれだけ問題になった後も、この局は民主党偏重の放送を臆面もなく行ってきた。その結果、「勧告」を受けてそれが「表現の自由」を狭めることにもつながりかねず、「反自民」とは正反対の結果にしかならない。
もっとも、「TVタックル」自体は、出演者が代わったこともあって、これ以降、民主党政権の官僚支配への転落を率直に指摘するようになった。
それだけに、その直後に始まる「報道ステーション」とのギャップにとまどうことも少なくない。
2012-06-19 06:00
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マスコミは自らが持っているチカラの大きさを
再自覚する必要があると常に思うのです。。。
by rtfk (2012-06-19 10:04)
rtfkさん、コメントありがとうございます。
そうですね。そして、受け手の側も
「テレビに出ている人だから、本を書いている
人だから偉い、正しい」という先入観をもたずに、
批判精神を持つことだと思います。
by いっぷく (2012-06-22 00:39)