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レアケース出産における親の法的立場 [社会]

戦後史上、私たちの戸籍についてのあり方も大きく変化した。戦前の家制度を前提としたものから、戦後は新たな民法を前提とした家族制度に基づくものになった。

それによってひとつの戸籍に三代記載されることがなくなり、叔父叔母の記載もなくなったため、夫婦、そして親と子といったより近い肉親のみでその戸籍を構成することになった。

だが、その「親と子」とはいったいどのようにして規定すべきか。未だに議論されるケースもある。

2004年6月8日、法務省は向井亜紀が米国の女性に代理出産を依頼して生まれた双子について、向井亜紀と高田延彦の子として東京都品川区に提出された出生届を不受理とする方針を決めた。

同省は「日本では産んだ女性が母親。向井さんを母とは認められない」と指摘。代理出産には産婦人科学会などでも倫理面から反対している。海外での代理出産で生まれた子の出生届が受理されないケースは戦後史上2例目だった。

出生届が不受理になった場合、戸籍法第118条によると家庭裁判所に不服申立てができることになっているが、日本では子を産んだ女性を母親とする最高裁判例があるので、「不受理」が覆ることはないのだ。

ところで、法務省はこの問題を「母親(の腹)が誰であるか」にこだわり、父親は全く問題になっていない。要するに「父親が高田延彦というならそれでいいよ」というスタンスだ。

現代の日本はいまだ男性社会だが、こと出生に関しては「母系主義」である。

その理由は、男親は「畑」と違い「種」の方だから推定するしかないため、というだけではないような気がする。

 出生届は、「届ける人」の優先順位が
1.父親または母親
2.父親も母親も届けられないときは、同居者、出産に立ち合った医師または助産師、その他の立会者、公設所の長の順
3.父母が婚姻届を出していないときは母親、母親が届けられないときは、2の順

ということになっている。つまり、実の父親が存在するのに、“たまたま縁あって”立ち合った医師または助産師が出生届を出せてしまうということがあるのだ。

たとえば、事実婚の場合、もしくは婚姻前に母親が帝王切開で出産し、退院が遅れた場合、実の父親は届け出について専決的な立場をとれないということになる。

しかも、事実婚の場合、子供は母親の戸籍に入るが、いくら認知していても、婚外の父親は無条件では戸籍をとれないことになっている。結婚していない以上、「妻」の戸籍はよその戸籍だからだ。

我が子の戸籍なのに……

非嫡出子というと、その子自身の待遇が悪くなり、「私生児を産んだ」母親も世間からあまりいい見方をされないが、それだけでなく、父親も法的に軽く扱われている。

倫理的な配慮は否定しないし、婚外子を推奨するわけでもないが、特定の生き方や価値観を強制するために、そのような不合理があってもいいのか。疑問に思う。

現在は、野田聖子議員の卵提供による出産が話題になり、レアケースの出産に関する法整備が待たれるが、母親だけでなく父親についても同様に整備をお願いしたいものである。

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空楽

ご訪問ありがとうございます。
by 空楽 (2012-06-11 12:12) 

こっちゃん

ご訪問ありがとうございます。
渡辺淳一さんの本ですね。
購入してあるのですが、まだ未読・・・
仕事的にも読んでおいたほうが良い本のようです。
またお邪魔します。
by こっちゃん (2012-06-11 14:35) 

シラネアオイ

こんにちは!
nice!&ご来訪有難うございます!!
by シラネアオイ (2012-06-11 16:45) 

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