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結婚詐欺女報道、“ちょっと待てよ” [社会]

戦後史上、まれに見る結婚詐欺&殺人容疑者、木嶋佳苗の「連続不審死初公判」が注目されている。

ネットを使った結婚詐欺の大量殺人疑惑は、「歴史に残る『希代の毒婦事件』」(「日刊ゲンダイ」2009年10月29日付)といわれ、事件発覚当時から話題になっていた

女性の殺人者は、戦後史上、もちろんいないわけではない。

が、疑われている事件のすべてがクロだとすれば、「(砒素)カレーじゃないよ、ハヤシだよ」という不謹慎な洒落ですっかりおなじみの林真須美の事件を量・質ともに超えるのではないかということで、戦慄の戦後史に名をとどめる一人として、その名前を当ブログでも取りざたさざるを得ない。

もちろん、人殺しの容疑を庇うつもりはない。

が、こういう風潮については、「ちょっと気をつけろよ」という懐疑精神もムクムクと頭をもたげる。

ちょうどワイドショーが、ヒ素カレーの問題で、例の女性の動画を繰り返し繰り返し流して彼女の悪人ぶりを徹底的に刷り込んでいた頃のことだ。

ある研究者の集まりに参加したとき、懇親会の挨拶で物理学者の池内了氏が、その女性のカタを持つような発言をしたところ、それまでなごやかだった一般の参加者は沈黙した。

いわゆる「ドン引き」というやつだ。

池内了氏の話は、「人間は間違いうるから、ひょっとしたら(真犯人は違うかも)という余地はいつも残しておいた方が良い」というような内容だったが、周囲の参加者は、

何であんな凶悪犯に「ひょっとしたら」なんて考える必要があるのだ、

という反応だった。
情けないことに、マスコミに、思いっきり洗脳されていたのだ。

しかし、池内了氏の「懐疑」論というのは

1.検察やマスコミ、識者など、「権威」を鵜呑みにしない
2.人間には、嘘や間違いがある、

という人や物事を見る大前提があり、別にヒ素カレーの人をかばうという意味ではなく、どんなことに対しても、誰に対してもそのようなスタンスを貫くというあたりまえの話なのだ。

今回で言えば、木嶋佳苗は複数の詐欺と殺人容疑で裁判を行うが、複数の容疑があると、マスコミのセンセーショナリズムにも加速度がかかり、「きっとみんな木嶋佳苗が犯人なのだろう。火のないところに煙は立たないというし」と国民は思うかもしれない。

ひょっとしたら、その中の1件、もしくはそれ以上について冤罪、または嫌疑不十分だとしても、そういう可能性をきちんとわきまえる余裕が社会になくなってくる。

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そして、そのひとつひとつの公判は「無駄な手続き」のような印象を与え、オウムの教祖のときもそうだったが、「どうせ極悪人なんだから早く死刑をしろ」の大合唱となる。被害者の家族の中にも、そのような思いを持つ人もいるかもしれない。

まるで、死刑がすぐに確定しないことをもって、現在の司法システムそのものを根本から否定的に見なければならないような気になる。

推定無罪という根本的な考え方がここで踏みにじられてしまうのだ。

ここまでくると、ちょっと待てよ、という気になる。

裁判をよりスピーディーに行えというなら積極的な提案だし、悪い奴を断罪したいというのは善意や正義の気持ちも含まれるので、真っ向から唾棄する事はできない。

が、いずれにしても、ひとつひとつの事件をきちんと裁くことは必要なことだ。

たくさん容疑があるほど判決も刑の執行も遅れるなんて、なんか矛盾しているような気もするが、人が人を裁く以上、その時間の経費はやむをえないことではないだろうか。

偏見や先入観などからバイアスのかかった見方にならないようにするためには、「悪い奴」は何をどう報じても構わないんだ、というメディアの思い上がった報道にみすみすのっからないように気をつけることである。

三浦和義、野村沙知代などを例にとるまでもなく、マスコミメディアは、いったん「叩き役」と決めると、とことん叩く。事実でないことまで「こいつらは悪い奴だから、何を書いてもいいんだ」と思い上がる。

先ごろ亡くなった金正日の料理番だったという人が本を書いている。金正日についてメディアは書きたい放題だが、事実と違うことがあると指摘している。

拉致問題を解決したいと真剣に考えるのなら、そういうところで足をすくわれないように気をつけるべきではないのか。

マスコミの「覗き見趣味とセンセーショナリズム」、それを額面どおり受け止める一部国民のヒステリックな反応は、極悪事件のもうひとつの被害、社会的な被害なのかもしれない。しかし、これは容疑者の責任ではなく、マスコミやわれわれの責任なのである。

いやー、それにしても重いですね so-net


タグ:結婚詐欺女
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コメント 4

九子

いっぷくさん、おめでとうございます。
今年もよろしくお願い申しあげます。m(_)m

重さに耐えてnice!とコメントしています。( ^-^)

マスコミの「覗き見趣味とセンセーショナリズム」!本当にその通りでしたね。ついつい踊らされてしまう私が居ます。

松本サリン事件の時、絶対に犯人は河野さんだと思い込んでましたもん。

私はご存知の通り半病人なので裁判員にはならないつもりですが、裁判員になってから死刑判決が増えましたから、これは一人一人がじっくりと考えなければならない問題だと思います。
by 九子 (2012-01-12 22:11) 

niki

重すぎですよね!!!!
ww

そうですよね。ワイドショーもマスコミの端くれであることを
わきまえないと、テレビで言ってること=正しい、と思い込んで
しまう人が多くなって、思想を左右してしまいますよね。
誘導的に思い込ませるところが、彼らには顕著です。

テレビで言っていることを信じ込まない、100%の信頼性はない、物事には必ず別の面も存在するということを、見る側も意識しなければいけないですね。


by niki (2012-01-13 10:28) 

楽しく生きよう

昔からそうなのでしょうが、情報はおもしろい方がいいなんて解釈を少し変え、もう少し変えしてユーザーに伝え、知らさせた方もそれがおもしろいからそっちの方向に突っ走る。
今ひどいです。
 
by 楽しく生きよう (2012-01-13 19:30) 

muk

同感ですね。
so-netの重さにも同感です。
by muk (2012-01-14 05:02) 

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