戦後史上、写真週刊誌も一時代を作ったメディアと先日書いたばかりだったが、昨日から松本人志の「写真誌訴訟敗訴」が話題である。
松本人志(ダウンタウン)について、「手術から復帰、新宿2丁目で夜遊びも再開!」というタイトルで、写真週刊誌「FLASH」(2010年9月7日号)に報じられた。
股関節手術の休養から復帰した日に「術後復帰日に夜遊び」したという内容である。
それに対して松本人志側は、記事が読者に不摂生との印象を与えたと訴訟を起こしていたが、東京地裁(小野洋一裁判長)は16日、その請求を棄却した。
小野洋一裁判長は、「記事は復帰日に深夜までスタッフと飲食したことを指摘するにとどまり、見出しも具体的に不摂生とされる夜遊びをしたとの事実を示しているわけではない」と名誉毀損の成立を否定した。(2011.12.16 16:25 産経)
写真週刊誌「FLASH」側が勝訴した形だが、裁判官の判決文に「見出しも具体的に不摂生とされる夜遊びをしたとの事実を示しているわけではない」というくだりあがあるのがちょっと気になった。
つまり、記事にはそもそも不摂生という主張がないから名誉毀損ではないといっているだけで、もし、「不摂生とされる夜遊びをしたとの事実を示し」ていた場合、すなわち記事が不摂生であることを指摘していたとしたら、名誉毀損になってしまう可能性については含みを残している、と解釈できる。
それは結局、もとになる事実があっても、著者の意見や価値判断を加えることが許さないことになる。
さすれば、あらゆる記事は最終的には学術論文のような客観性と確度「のみ」を記述することしか許されなくなる。
だいたい、「復帰日に深夜までスタッフと飲食した」で表現をとめていたら、読む者にとっては、逆に「そのくらい元気なほうがいいのかもしれない」と、「不摂生」がまるでいいことのように伝わってしまい、社会に対して間違った術後の過ごし方を印象付けることになりかねない。いわゆるミスリードのリスクだ。
そもそも「不摂生」という表現は、果たして虚名の保護に抵触するのだろうか。
不摂生しようがどうしようが、それはその人の問題であるし、何を持って不摂生かということもある。今のご時勢なら、ヘビースモーカーだって睡眠時間が少ないのだって立派な不摂生だ。
術後のストレスを考えれば、「夜遊び」の「不摂生」をもって、松本人志という人間のイメージを悪くする人などいないだろう。むしろ、同情するぐらいではないか。
いずれにしても、異性にだらしがないとか、金に汚いとかいったこととは世間的なイメージは違うだろう。
もちろん、松本人志が「不摂生ではない」という信念を持ったり、その趣旨に基づいた反論をしたりする自由はある。
だが、それは司法ではなく別の形でいいのではないか。
インタビューでもいいし、持ち番組でネタに使ってもいい。
裁判にもっていってしまうことで、「表現の自由」が狭められる可能性だってある。それは結局、社会的な損失につながってしまうのではないだろうか。
平成の芸能裁判大全
- 作者: 芸能裁判研究班
- 出版社/メーカー: 鹿砦社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
2011-12-17 01:01
nice!(94)
コメント(2)
トラックバック(0)
共通テーマ:学問
ご訪問、niceをありがとうございました(笑)。
by ため息の午後 (2011-12-17 20:16)
今晩は、訪問 nice!有難う御座います、
昨今の、マスメディアや報道関係者の言動や態度は、
目に余るものが多いのも事実ですよね・・・
飲食店から出てきただけで、勝手な憶測で報道される側も大変では(>!<"。
by okin-02 (2011-12-17 21:15)