戦後史上の大きな特徴のひとつは、メディアのビジュアル化である。
今から30年前の1981年の今日、写真週刊誌の元祖『FOCUS』(新潮社)が創刊された。以後、同スタイルの週刊誌が続々創刊されたが、今も残っているのは『FRIDAY』(講談社)だけである。
インターネットが普及したことで、よほどの特ダネでないと、逆に一部にある「やらせ」や事務所との談合を叩かれる時代だけに、たんにスキャンダルを追っかけるだけのメディアでは、飽きられてしまうのかもしれない。
さて、スキャンダルといえば、戦後史上この人こそスキャンダルもパブリシティに利用した芸能人のカガミといえるかもしれない。
松田聖子である。
スポンサードリンク↓
松田聖子のブームが訪れしていると、『日刊ゲンダイ』(10月29日付)が「クリスマス3日間で1億円稼ぐ松田聖子の意気軒昂」とのタイトルで報じている。
といっても、もちろんアイドルとしてではなく、スキャンダルで話題をさらっているわけでもない。一人の大人のタレントとしての価値が評価されているというのだ。
まず、聖子は11月22日からクリスマスまで恒例のディナーショーを全国12カ所で全27ステージ開催する。このチケットは1席4万~4万6000円と高額ながら飛ぶように売れている。
すでに完売したステージも多数。12月23、24、25日のクリスマスにディナーショーを開催するホテルニューオータニ大阪では「聖子さんのディナーショーは毎年大好評。ホテルで一番広い750席ある会場で催されます。23日と24日はすでに完売。25日も残りの席数はヒトケタです」(広報担当)とうれしい悲鳴を上げている。
聖子はクリスマスだけで1日3300万円、3日で約1億円を稼ぎ出す計算だからスゴい。
フジフイルム、山崎パン、サントリーのCMも好評。11月には竹内まりやがプロデュースした新曲「特別な恋人」もリリースと、勢いが止まらない。
だが、それだけではない。年明けからはNHK大河「平清盛」に祇園女御という平安時代の歌姫役で登場。第1話から主人公の松山ケンイチと共演する重要な役どころだ。
そして、囁かれているのが大晦日のNHK紅白への出場だ。聖子は01年に出場したのが最後。しかし、今年は大河ドラマのPRを兼ねて、出場が有力視されている。
当然、今、なぜ聖子? という問いになるだろう。同紙では、芸能リポーターの川内天子氏はこうコメントしている。
「彼女には昔からの根強いファンが多く、とくにディナーショーはファンサービスがすごいので毎年完売です。昨年はデビュー30周年の節目でしたし、来年は大河に出演することで、新たなファン層の獲得も見込めそうです。かつての“スキャンダル聖子”のイメージはもうありません」
新陳代謝の激しい芸能界で、消えるどころか、逆にタレントとしての普遍的な価値を評価されて「ブーム」になるというのはタレント冥利に尽きるだろう。
松田聖子は、戦後史上に残る芸能人と言っていいかもしれない。
芸能誌も、スキャンダルをセンセーショナルに報じるだけでなく、かといって事務所の言いなりになったお追従だけでもなく、こうした「生き残る芸能人」の魅力について論考してほしいものである。
2011-10-30 17:26
nice!(45)
コメント(1)
トラックバック(0)
共通テーマ:芸能
もしも松田聖子が戦後史上で名を残すとすれば、「タレントとしての不変的な価値を評価されて」ではなく、日本女性から「恥じらい」を消し去った張本人としてでしょう。
彼女が登場するまでは、芸能人にもそれなりの「わきまえ」がありました。「媚を売る」のはいわゆる「商売女」のすることで、歌手のすることではありませんでした。
ところが松田聖子が恥も外聞も無く「ブリッコ」満載の服装としぐさで歌を歌うようになってから、可愛い子ぶることへの歯止めが無くなった、といってもいいでしょう。つまりそれまでふつうの女性には暗黙のうちに禁止されていた男性に向けてのコケティッシュな態度を、彼女が堂々とテレビでやって見せたために、日本中の女の子から「媚びることは恥ずかしい」という気持ちを吹き飛ばしてしまったのです。
彼女がデビューしてから一気に日本の女性がいい意味では解放され、別の意味では開放されたといってもいいでしょう。そしてその結果が現在の男女関係のあり方にまで影響を及ぼしているともいえるでしょう。
by 堀 素子 (2011-10-30 19:57)