『東京ラブストーリー』上・下(柴門ふみ作、文藝春秋社)を読みました。1988年から『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に連載されていた漫画を2冊にまとめ、さらにドラマ化された時のヒロイン・鈴木保奈美と柴門ふみ氏による対談が加わった書籍です。
CS308の『フジテレビTWO』で、6月18日から、テレビドラマ『東京ラブストーリー』が放送されるそうです。
『フジテレビtwo』より
フジテレビTWO ドラマ・アニメ×映画チャンネルNECO共同企画、という名目で、 チャンネルNECOでは『101回目のプロポーズ』が放送されるそうです。
今は何かと風当たりの強いフジテレビですが、このドラマは視聴率30%を突破して当たりました。
すでにこのブログでは、ドラマ版の『東京ラブストーリー』について書きましたが、今回は原作の『東京ラブストーリー』上・下(柴門ふみ作、文藝春秋社)を読んでみました。
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東京ラブストーリーを思い出す西郷山公園
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『「視聴率」50の物語』から『東京ラブストーリー』を思い出す
以前も読んだことはあるのですが、今回は上下2巻で集中収録です。
転載御免で、私が当時からもっとも印象に残ったコマはここ。
『東京ラブストーリー』上(柴門ふみ作、文藝春秋社)より
赤名リカが、完治自身も忘れていた誕生日を祝うときの笑顔です。
ああ、完治はこの笑顔に引き込まれていったのだなあと思えるシーンです。
このシーン、ドラマは横から撮っているのです。
『東京ラブストーリー』(フジ)第5話より
何らかの演出意図はあるのでしょうが、やはりここは正面から撮って欲しかったなあと思います。
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赤名リカの描き方の違い
愛媛出身の永尾完治(織田裕二)と、幼馴染で医大生の三上健一(江口洋介)、関口さとみ(有森也実)、それに完治と同じ会社の赤名リカ(鈴木保奈美)、三上の同級生の医大生・長崎尚子(
千堂あきほ)が織りなす恋愛模様を描いた物語です。
すでにいくつもの個人のファンブログで明らかにされていますが、原作とドラマの最大の違いは、ヒロイン・赤名リカと、鈴木保奈美の演じたドラマ版のキャラクターの違いです。
『東京ラブストーリー』下巻の巻末対談によると、原作者・柴門ふみ氏が核として描きたかったのは、永尾完治と関口さとみの関係であり、どちらかというと赤名リカは狂言回し的な役割だったようです。
永尾完治は赤名リカ、関口さとみは三上健一と、いったんは自分にとってまぶしい相手を選ぶのですが、その“回り道”によって、完治とさとみは自分に誰がいちばん大切なのかを気づくという展開です。
原作で描かれている赤名リカは、通り一遍のモラルでは収まらないキャラクター。完治のことが好きなあまりに行きずりの外国人と関係したり、上司(ドラマでは西岡徳馬)の子どもを宿したりします。
一方、ドラマ版赤名リカは、原作のキャラクターから可能な限りインモラルな面を取り除いた、情熱的だけれども、男性に対して節操をを守る保守的な面のある女として描かれています。
より「普通の女性」に近づいたことで、視聴者との距離感がグッと縮まったかもしれません。
どちらも、最後は永尾完治と赤名リカが愛媛で会うのですが、消えるように去ってしまいそれっきりの原作よりも、約束の時間をわざとずらして1人乗った電車の中でポロポロ涙を流し、3年後に再会するドラマ版のリカの方が余韻が残ります。
ドラマ版で、赤名リカがこれだけ美しく描かれたために、永尾完治を奪ってしまった関口さとみを演じた有森也実は、リアルでもずいぶん嫌われたようです。
前出巻末によると、ハワイでも「さとみ嫌い」と言われたそうですが、演じた役が海の向こうでも嫌われるというのは、女優冥利に尽きるでしょうけどね。
トレンディドラマと純愛ドラマ
同作はテレドラマ史的には「トレンディードラマ」といわれていますが、私は何度か書いているようにその説に賛成していません。
『
金曜日の妻たちへ』や『
男女7人夏物語』など、登場人物の住んでいる場所、住宅デザイン、ファッション、職業、外食などが、その時代のトレンドをリードしている1980年代中盤の作品群をトレンディドラマというのであり、いわゆる『月9』の1990年代前半のドラマは、すでにバブル崩壊にかかり、そうした華やかさよりも、プリミティブな純愛を前面に押し出した作品群といえるのではないでしょうか。
そして、それは後の韓流ドラマにつながっているのだろうと思います。
ネットでは、韓流ドラマは電通が仕掛けたとか実態がないとか、いろいろかまびすしいですが、少なくともフジテレビ的には、それなりに辻褄の合った戦略といえなくもないと私は解釈しています。
それが長期的に見て成功だったか失敗だったかの評価は私はしませんけど。
いずれにしても、『東京ラブストーリー』。
作られたのは平成ですが、まだ昭和の余韻も残るオジサン世代にも入りやすい作品です。
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