戸井田稔が亡くなったというニュースが、夕方からネットで発表されて急上昇キーワードです。戸井田稔は文学座の俳優ですが、思い出すのは、当時まだ文学座員だった中村雅俊主演の『ゆうひが丘の総理大臣』第35回、36回に出演したスキップ（愛称）役です。久しぶりにその回を鑑賞しました。（画像はGoogle検索画面より）
『
ゆうひが丘の総理大臣』（1978年10月11日～1979年10月10日、ユニオン映画／日本テレビ）は、かつて『少年チャンピオン』に連載されていた望月あきら原作の青春学園ドラマです。（画像は劇中より）
大岩雄二郎（
中村雅俊）という、アメリカ帰りの高校英語教師が主人公です。
といっても、同局がかつて放送した、
熱血教師ドラマとは若干テイストが違います。
学園ドラマですから、先生と生徒の関わりはもちろんありますが、それだけでなく、同僚の先生や、生徒の保護者、そして自分の身内と、
友情、親子愛などの人の絆に対する葛藤が見どころでした。
たとえば、大岩雄二郎（中村雅俊）は、同僚教師・大坂直次郎（
名古屋章）と娘・道子（
篠ひろ子）との父子確執解消や、道子（篠ひろ子）と同僚教師・山下健三（
前田吟）夫妻の、直次郎（名古屋章）との同居をムキになって勧めます。
それは、大岩雄二郎（中村雅俊）が養護施設出身の苦労人のため、「
不幸はもう見飽きた」という人生観を持ち、おせっかいをやいて、周囲の人の「不幸」や「寂しさ」の芽を摘みたくなってしまうのです。
第1回より
大岩雄二郎自身にも、養護施設で別れた妹（
山本ゆか里）と再会したり、下宿の女将さん（
樹木希林）が実の母親を探してくれるテレビ番組に応募したりする出来事がありました。
そして、今記事でご紹介する35回、36回は、いよいよ大岩雄二郎（中村雅俊）の実の母親が登場します。
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スキップ（戸井田稔）が北海道に招待した真の理由は……
簡単にあらすじをご紹介すると、夏休みに、アメリカ時代一緒だった、スキップこと松川俊雄（
戸井田稔）からソーリこと大岩雄二郎（中村雅俊）にはがきが届きます。
自分が支配人をしている北海道のホテルに遊びに来ないか、という内容でした。
もちろん、喜び勇んで出かけるソーリ（中村雅俊）ですが、柴田（
井上純一）や藤村（
藤谷美和子）ら生徒9人もゾロゾロついていくことになりました。
北海道のホテルに着き、スキップを訪ねてもその名前の人物はおらず、それもそのはずで、スキップ（戸井田稔）はホテルのオーナーの養子になったので
苗字が変わっていたのでした。
ここまでが第35回（
夏だ!休みだ!!北海道だ!!）です。
北海道編は次の第36回（
やさしさって何ですか？）に続きます。
ソーリは、スキップ（戸井田稔）から、「お前の母親らしき人（
南風洋子）が湖（洞爺湖）の向こうで働いている」と聞かされます。
どうやら、スキップ（戸井田稔）がソーリ（中村雅俊）を招待したのは、それを教えたかったようです。
北海道に駆けつけた後輩の大野木念（
神田正輝）に、複雑な胸中を打ち明けるソーリ（中村雅俊）。
小さいころ、妹と一緒に母親に捨てられ、
養護施設で苦労した疑念や憤りの一方で、
どんな親でも親は親、という思いが交錯します。
悩みながらソーリは、母親が売り子をつとめる売店でジュースを買ったり、こっそり家を見に行ったりします。
このへんのシーンが実に切ない。
そして、一緒に暮らしている男（
佐藤允）の話から、やはり自分の母親に間違いないと確認しますが、結局
名乗らずに東京に帰ります。
行く列車を、ホームから母親が追っていたとも知らずに……
過去を怨むことはやめます。でも
今のお互いの生活を大事にしましょう、だから再会はしないことにします、というのがソーリ（中村雅俊）の結論でした。
ドラマと知りつつも、ちょっと泣ける展開です。
私は、そんな大岩雄二郎に、
室生犀星が重なって見えます。
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室生犀星、大岩雄二郎、35年目の邂逅
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『ゆうひが丘の総理大臣』あっと驚く教師が来ました！室生犀星
室生犀星は、非嫡出子として生まれて7歳で室生家の養子になるなど不幸な生涯を送ったにもかかわらず、健全に生きようという詩を残しています。
その一方で、「ふるさとは遠きにありて思うもの」という有名な句を残したように、決して故郷には帰らなかったといいます。
不幸な過去は振り返らないという強い気持ちがあったのでしょう。
大岩雄二郎は、マンガしか読まないはずなのに、なぜか室生犀星の『朝を愛す』の一節を、スラスラと諳んじるシーンが出てくることで（1979年4月25日放送の『総理先生しっかりして！』）、制作側は、
室生犀星をモデルとしているのかもしれないと思いました。
ゆうひが丘の総理大臣『総理先生しっかりして！』より
戸井田稔さんの生前のご遺徳をお偲び申し上げます。
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