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テロ特措法成立 [戦後史]

テロ特措法成立 2001,10,30 

2001年10月29日、アメリカの同時多発テロに対する米軍などの軍事行動を支援する「テロ対策特措法」など関連3法が、参院本会議で、自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決、成立した。

同法の成立により、戦時に戦場に隣接する外国領土への派遣が可能になる。憲法第9条がついに公然と形骸化されたことになる。また、自衛隊法改正案は与党3党と民主党などが賛成、不審船への船体射撃を可能とする海上保安庁法改正案は、与党3党と民主党、自由党、日本共産党が賛成して可決された。

同日の採決では、大橋巨泉氏、神本美恵子氏ら民主党の5人が欠席・棄権などで自衛隊法改正案の採決には加わらなかった。社民党の山本正和氏は、同党が反対した海上保安庁法改正案について「あくまで警察力の問題であって、自衛隊とは関係ない」として賛成したという

当初、この法案には積極的ではないかと見られた自由党の小沢一郎党首も、その道理のなさから「何の根拠もない、あまりにもいい加減」(http://www.jiyuto.or.jp/tv/)なものと反対してきた。文化人にも反対の論陣はあったが、その中にはビートたけし氏のような、日頃の発言から見て意外な人物も同調している。それでも成立してしまった。

さて、このことを受けた小泉政権の支持率の変化に興味があるが、残念ながら、たいして変わらないだろうと予想する。テロ事件の連日のセンセーショナルな映像と執拗な報道のなかで、今回は予想通り我が国の一部国民に一定の支持を得たスピード採決であったこと、また、首相就任以来、いかなる失政についても「首相(の責任問題)は聖域」という状態が続いているからだ。

たとえば、狂牛病問題にしても、農水省や管轄大臣・次官など「現象」の当事者に対するWeb掲示板での非難は勇ましいのだが、ではその任命権者の責任や、為政者が長年とってきた畜産政策そのものをどう見るかという「本質」に立ち入った批判が、国民の間で主たる論陣になっているとは言い難い。

そうした方向に進まない「批判」は国民にとって自業自得の愚痴であり、思考停止のそしりは免れない。管轄大臣の個人攻撃や罵倒を繰り返したところで、この失政を民主的に克服して明日に繋げることはできないのではないだろうか。

科学的・合理的思考というのは、自然科学であれ社会科学であれ、観測・統計・実験などによって得た現象としての事実をしっかり受け止め、そこから本質に立ち入る下向過程と、一方で、本質から現象を追跡する上向課程の弁証関係によって成り立つものである。

「現象」は「本質」の反映であり、また「本質」の解明は新たに「現象」を説明する根拠となる。その両者の関係をぶったぎったまま、事のありようを安易に結論づける態度は、結局非合理な結論にしか落ち着かない。

この法案が成立したのは小泉政権ができて半年目。「抵抗勢力」などというマスコミ受けしそうなレッテルはいちはやく作成したが、具体的な「改革」なるものに対する議論も切実な問題に対する実践もないまま、「痛み」だけがますます国民生活を圧迫した。

本当の「抵抗勢力」というのは、実は小泉内閣の「現象」を冷徹に捉え、そこから本質を見る合理的課程を感覚的に否定するまことに非合理きわまりない「小泉人気」そのものだったのではないだろうか。
タグ:テロ特措法
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