原節子さん亡くなり、『大番』と『葬式は、要らない』を振り返る [芸能]
原節子という、日本映画界の伝説の人が亡くなったことで話題持ちきりです。原節子さんは1960年代前半には引退しており、少なくともリアルタイムで、私はこの方の活躍した作品を知りません。ですから、何かを語れる世代ではなく、原節子が引退してからしばらくたち、加東大介主演の『大番』(1957年、東宝)を、封切り映画館ではなく、テレビで観たのが原節子出演作との出会いでした。
ラピュタ阿佐ヶ谷公式サイトより
四国・宇和島の農村から身ひとつで上京し、株の世界に飛び込んで相場師として成功した“ギューちゃん”こと赤羽丑之助(加東大介)の生涯を描いた物語です。
『大番』加東大介の出世作、淡島千景も“割ない仲”を好演
“ギューちゃん”のモデルは、合同証券(エイチ・エス証券の前身)社長の佐藤和三郎氏といわれています。
原節子の役は、丑之助(加東大介)にとっては、辛い思い出になる人です。
容姿にコンプレックスを抱く丑之助(加東大介)は、ラブレターを不特定多数にばらまきますが、地元資産家令嬢の可奈子(原節子)にまで行き渡ってしまい、それが原因で故郷を出ていかなければならなくなるからです。
可奈子(原節子)は結局、公爵(平田昭彦)と結婚するのですが、まあ確かにその方がお似合いか。
上京した“ギューちゃん”は、山あり谷ありの相場師生活を繰り返します。
そして、朝鮮戦争の特需で桁違いに成功すると、待合女中役である、おまきさん(淡島千景)という内縁の女性がありながら、「自分は独身だ」と、夫が亡くなった可奈子(原節子)に再チャレンジ。
しかし、可奈子(原節子)は結核で亡くなってしまい、罰が当たったかのように、“ギューちゃん”もそこから運気が下降するのですが、結局相場師として立ち直るという話が、4部にわたって展開されています。
ちなみに、淡島千景は、池上本門寺の境内を借りて開校し、今も向かい合う場所に校舎が立っている大田区立池上小学校の前身、池上尋常高等小学校の出身。
そして、となり町にある池上第二小学校(通称イケニ)出身のフランキー堺とは、喜劇駅前シリーズで姉弟役を何作も演じました。
池上本門寺
原節子さんの、生前のご遺徳をお偲び申し上げます。
有名人の“消え方”
原節子さんは、すでに9月に亡くなっていたといいます。
一昨日、死亡が報じられた川崎敬三さんも、7月に亡くなっていたといいます。
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現役を退いたとはいえ、著名人ですから、もし死亡した時点で葬儀の日程を発表すれば、相当数の参列者をともなう大掛かりな葬儀となり、メディアもより大きく報じたことでしょう。
人気稼業でも、最近は密葬の形を取り、落ち着いてから発表し、必要なら「偲ぶ会」をすればいい、という段取りをとるケースが目立ってきたように思います。
今年に入ってからは、愛川欽也さんについて、荼毘に付されてからうつみ宮土理がコメントを発表しています。
愛川欽也さんをめぐって話題、2つの「死に様」について
国民栄誉賞を受賞した渥美清さんも、初七日を過ぎてからの発表でした。
私は、そんな「消え方」に大賛成です。
私は、人間なんてたかが猿が進化した生き物にすぎないと思っているので、結婚式にしろ葬式にしろ、派手に「式」として執り行い、遠い他人にまで共有させるようなあつかましい価値観を持っていません。
では葬式に何百人も集まれば、死んだ人は生き返るのか、といったらもちろんそんなことはありません。
大原麗子のように、母と弟の2人だけの葬式でも、千人単位が焼香する葬式でも、結局同じことです。
生まれるときも死ぬときも一人なのに、何様と勘違いしているのかと思うのです。
相互主義ですから、たくさん人を呼べば、逆にそのたくさんの人が同じことがあった時に駆けつけなければなりません。
派手な葬式を行う人は、そこまで考えているのでしょうか。
私だけでなく、たとえば、島田裕巳氏は、『葬式は、要らない』(幻冬舎)という書籍で、データをまじえてそうした意見を述べています。
タイトルで誤解されてしまうようですが、島田裕巳氏は、葬式自体を否定しているわけではありません。
宗教的手続きを絶対視した、派手志向の葬式を「要らない」と述べているのです。
列席者の規模だけでなく、たとえば、戒名は絶対に必要なのか、といったことも書かれています。
もっとも、これは、島田裕巳氏が比較的好意的な特定の信徒団体を意識した指摘とも読めるので、無条件に額面通り受け入れるべきものと私は思っていません。
ただ、“人は亡くなったら静かに消える”という一点で、同書の主張には共鳴できると考えています。
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