『加山雄三のブラックジャック』えらばれたマスク、日色ともゑ [懐かし映画・ドラマ]

『加山雄三のブラックジャック』(1981年、松竹/テレビ朝日)については、このブログではこれまでに2つの話(第3話と第6話)をご紹介しました。今日はそれらとともに印象深かった第4話の「えらばれたマスク」をご紹介します。(画像は断りのない限り劇中から)

『加山雄三のブラックジャック』については、過去第3話「ふたつの愛」と、第6話「復讐こそわが生命」をご紹介しました。
・『加山雄三のブラックジャック』ふたつの愛、加山雄三、村野武範
・『加山雄三のブラックジャック』復讐こそわが生命、音無美紀子
今回ご紹介する「えらばれたマスク」は、原作に比較的忠実に描かれているので、原作のファンはすでにストーリーもご存知かもしれません。
ちなみに、原作は「『選』ばれたマスク」と、漢字表記です。
もちろん原作も力作ですが、やはりナマミの人間が演じた実写版のリアリティは独自の価値があります。
ストーリーをかいつまんでご紹介しますと……
実父の妻を実母の顔に整形する
香港から来日した富豪の剛助(山内明)は、ブラックジャックに会いたいと倉持警部(藤岡琢也)に打ち明けます。
倉持警部(藤岡琢也)は、外国から狙われているブラックシャックを保護しなければならないから、ブックジャックとの関係や事情を知りたいと詰問すると、剛助(山内明)は、ブラックジャックの父親だといいます。
倉持警部(藤岡琢也)は、坂東次郎(加山雄三)にそのことを伝えますが、坂東次郎(加山雄三)はとりあいません。

剛助(山内明)はかつて、ブラックジャックとその母親・康子(日色ともゑ)を捨てた過去があるので、ブラックジャックは今も実の父を許していないのです。
ブラックジャックは、代理人ということになっている坂東次郎(加山雄三)として、剛助(山内明)と会いますが、ブラックジャックと親子としての再会は断ります。
だったら最初から会わなければいいと思いますが、坂東次郎として会ったということは、心の何処かに父親と会ってみたいという気持ちがブラックジャックにもあったのでしょう。
剛助(山内明)は、親子としての再会は諦めたが、皮膚がんの後遺症で、顔がボロボロになった元ミスユニバースの妻・蓮花の顔を整形し、世界一の美女に戻してくれ、といいます。
ブラックジャックは、剛助(山内明)に、康子(日色ともゑ)を愛していたのかどうかを確認し、剛助(山内明)の「もちろん」という答えを聞いたたうえで、手術を引き受けました。
昔、剛助(山内明)の部下だったブラックジャックの執事・遠藤(松村達雄)は、剛助(山内明)とブラックジャックの過去を知っていて、若旦那(ブラックジャック)の父親に対するその複雑な思いを剛助(山内明)にぶつけています。
要するに、母親に対する愛おしみと、父親に対する恩恵と憎しみの入り混じった複雑な思いを、ドラマは描いているわけです。
そして、包帯を取る日になりますが、包帯の中から出てきた蓮花の顔は、康子(日色ともゑ)の顔に整形されていました。
剛助(山内明)は、約束が違うと怒りますが、坂東次郎はこう言います。
「ブラックジャックにとっては、あの顔が世界一の美女なんです。あなたにはわからないんですか」

蓮花自身もその顔を気に入りますが、剛助(山内明)が坂東次郎の握手を拒んだことで、坂東次郎は剛助(山内明)の心を改めて知り、怒りを抑えてその場を去ります。
ブラックジャックと加山雄三の共通点は……
他の方のレビューには、今回のストーリーに、原作者・手塚治虫の母親に対する慕情を読み取っておられるものもあります。
私は、加山雄三自身が重なって見えました。
加山雄三に面影を残す、早逝した実母の小桜葉子。

Google検索画面より
大林雅美と再婚して、加山雄三との関係が悪くなった父親の上原謙。

『クレージーのくたばれ無責任』より
加山雄三の両親に対する思いと、ブラックジャックの両親に対する思いは、似ているような気がします。
そのような、脚本を超えた興趣があることが、ナマミの人間が演じる実写化の醍醐味です。
いずれにしても、ブラックジャックの母親役に、日色ともゑを起用したのがよかったですね。
日色ともゑは大変素敵な人なんですが、ミス・ユニバースに出てくるような欧米型の美女とは少しタイプが違います。
それが、温かみのあるお母さんにぴったりなのです。
全12話収録のDVD-BOX。どの話も面白いですが、これまでにご紹介した第3話、第6話とともに、私はこの第4話もとくに好きな話です。
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