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福島市と南相馬市の放射線確認『2015年3月福島調査報告』 [(擬似)科学]

2015年3月福島調査報告

福島市と南相馬市における放射線の影響を調査した『2015年3月福島調査報告』を、「福島プロジェクトチーム」の安斎育郎氏から頂きました。先月は南相馬市、樽葉町の民家や公道、水源などを計測し、その結果を報告していますが、今月も福島市と南相馬市の民家や散歩道、山の地表面などを調べています。

安斎育郎氏ら研究者、技術者数名は、福島第1原発事故以来、「福島プロジェクトチーム」を組織。定期的に福島の市町村に赴き、放射能汚染や放射線被曝の実態調査を行っています。

そして、除染の必要なところは除染を行ったり、地元の人を対象に放射線に関する質疑応答を行い、被ばくの低減のために実行可能な措置を具体的に提案したりしています。

前月の『2015年2月福島調査報告』によると、2月27日に樽葉町水源6検体の水を計測。セシウム134(半減期2年)、セシウム137(半減期30年)、カリウム40(自然放射性物質)などを調べ、すべて「不検出」であったことなとが報告されています。

『2015年2月福島放射能調査報告書』樽葉町の水はセシウム不検出

今月は、南相馬市と福島市の一般家庭の庭、山の地表面、保育園の散歩道などを調査し、除染の必要なところは除染を試みています。

福島県地図
Mapionから転載した福島県地図

放射性プルームの飛散図と調査した地域

放射能の拡散状況と、2015 年3 月調査地点の関係.png
『2015年3月福島調査報告』より

南相馬市といえば、原発事故の報道で、毎日のように取り沙汰された地域です。

『報告』には、次のような解説が書かれています。

南相馬の除染
『2015年3月福島調査報告』より

除染状況は刻々と変化するが、左の図は平成27年2月20日付の環境省の「除染情報サイト」を基にして作成されたものである。南相馬市が除染を担当する地域と、国が(南相馬市の除染申請を通じて)除染を担当する地域があり、国が担当する地域については、除染方法の適否をめぐって厳しく査定されるため、十分な費用をかけた迅速な除染が実施されにくい傾向がある。

行政的にややこしい事情があって、十分な除染が行われていないかもしれないということです。

南相馬市の民家を計測


で、調査結果はどうであったかというと、たとえば住民Sさんのお宅では、0.3~0.4マイクロシーベルト/時程度測定されています。

これは、屋外で8時間、屋内で16時間過ごし、放射線レベルは屋内では屋外の40%に下がる、と仮定した場合に、「年間1ミリシーベルト」の被曝に相当するレベルといいます。

もうその地にいられない、というレベルではありませんが、除染は1回で終わるものではなく、更なる除染や遮蔽措置が望まれる数字だそうです。

次にAさんの場合、道路を隔てた他家の田んぼが、Aさんに断りもなく「除染廃棄物仮置き場」として使われたため、そこに2マイクロシーベルト/時程度の放射線量率が観察されたそうです。

除染も砂利を被せただけだったため、「追加除染を行なうことが期待される」と書かれています。

そして、『報告』では、こうも書かれています。

首相官邸災害対策ページには、次のように書いてある。「『信頼』がないところでいくら話し手が正しいと思うことを言っても、住民にはその真意は伝わりません。住民の方々が発する一つ一つの疑問や不安に対し、相手の立場に立ち、丁寧に情報提供を行いつつ、共に問題を考えて行く対話の中で、初めて相互の信頼関係が生まれてきます」。その通りだが、実践段階でもしっかりと相互の信頼関係を築く努力がお互いに大切だろう。

さらに『報告』では、除染も実践されており、その方法も書かれています。

福島市の散歩道を計測


続いて、『報告』は福島市の保育園散歩道も調べています。

結論から述べると、調査したエリアの放射線レベルは「散歩は出来る」となっています。

福島市にある御殿山西側の道は、「山からの放射能汚染の影響が残っている」し、くるみ川沿いの道は0.4~0.5マイクロシーベルト/時であるといいます。

そして、「除染が十分に出来ていない歩道や土手にホットスポットを作り出している」ので、「追加除染を要請することが期待される」ものの、「ツバキ、ツクシ、カラスノエンドウの汚染はわずか」で、散歩道には適度な坂道もあり、「舗装してある部分は0.2~0.3マイクロシーベルト/時程度」で、散歩に使うのに特段の心配はないとしています。

南相馬市にしても、福島市にしても、さらなる除染や遮蔽措置が必要な場所があるにしても、決して“住めない土地”“死んだ土地”ではないのだ、ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

計測した際の被曝は……


ところで、現地に行って計測や除染を行った場合、そこで受ける放射線被曝はどうなっているでしょうか。

『報告』では、そのグラフも公開しています。

1ヶ月間の放射線被曝
『2015年3月福島調査報告』より

ひとメモリが、2マイクロシーベルト/日です。

つまり、普段は2マイクロシーベルト/日弱の被曝です。

4日間、高い日がありますが、この日が除染作業を行った日だそうです。

それに加えて、飛行機で移動しているそうなので、上空の高い放射線を受けているのだと思います。

高いといっても、4~5マイクロシーベルト/日です。

200万マイクロシーベルトで5%致死線量といわれていますが、1マイクロシーベルトは、1シーベルトの100万分の1です。

数字の桁が違いすぎてピンときませんが、要するに4マイクロシーベルト/日を、月に2日経験しても、無視できる数字だということです。

それと、ここでは比較はありませんが、東京に住もうが関西に住もうが、2マイクロシーベルト/日の被曝という数字に大きな違いはありません。

原発事故以来、東京から逃げ出して、いまだに戻ってこない方もおられるようです。

まあ非科学的に生きるのはご自由ですが、そんな情弱な方が、脱原発だの反原発だのといっても、国民は信用しないでしょうね。

安斎育郎氏は、科学的に調べ、その事実と道理で判断すべきという立場です。

その結論として、原発再稼働には反対。本来なら被曝しなくても済んだ原発事故被曝については避けるべき。

だからといって、鼻血を出すだの、福島は死んだだのといった非科学の立場には立たない、ということです。

安斎育郎氏の立場は、原発再稼働賛成派だけでなく、科学度外視で政治的、というより宗教的な煽動で「脱原発」を唱える人たちにとって面白くないかもしれません。

でも福島人を先祖に持つ私としては、溜飲が下がる思いですけどね。

この『報告』については、せっかくの貴重なデータですから、近いうちにこのテーマ専門のサイトを立ち上げてご紹介していきたいと思っています。

原発事故の理科・社会

原発事故の理科・社会

  • 作者: 安斎 育郎
  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2012/09
  • メディア: 単行本


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