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食キング(土山しげる)再建人がつぶれかけた大衆店を立ち直させる [食べもの]

食キング(土山しげる)再建人がつぶれかけた大衆店を立ち直させる

食キング(土山しげる著、日本文芸社)は、「B級グルメ店復活請負人」の主人公が、傾いた庶民向け飲食店を再建するストーリーです。店主には、一見すると店の料理とは無関係な修業を質問厳禁でさせますが、実際には再建のために必要なことがわかります。



『食キング』については、以前、マンガ図書館Zで無料公開されたとご紹介したことがありますが、あれからまもなくしてリストからは外れてしまいました。

そして、今度はAmazonのkindleunlimitedの無料リストに入ったので、改めてご紹介します。

『食キング』は、土山しげる(つちやましげる、1950年2月20日~2018年5月24日)さんが日本文芸社から上梓した書籍です。

1999年~2004年に、『週刊漫画ゴラク』で連載されました。

土山しげるさんについては、他の作品もリストに入っており、また別の機会にそれらもご紹介しようと思っています。

名門店創業者の孫が「再建請負人」に


『食キング』の主人公・北方歳三は、函館一と呼ばれる老舗レストラン「五稜郭亭」の創業者北方清次郎の孫。

本来彼は、その料理長として腕をふるい、伝説のシェフと呼ばれた男でした。

ところが、料理の腕が歳三に劣る実弟・精四郎が、採算や利益などの数字を重視する「実業家」として歳三と対峙。

歳三は、自分が身を引く形で五稜郭亭を離れました。

物語の前半は、歳三が再建請負人として全国を転々とします。

客足の遠のいた飲食店に立ち寄ったり、メールで依頼を受けたりして、多額の報酬を取って再建させる「再建請負人」に。

再建の方法は、店主に対して、一見すると店の料理とは無関係な修業を質問厳禁でさせます。

「どうしてこんなことをしなければならないんだ」と店主は疑問に思いますが、後に再建のために必要なことがわかります。


それは、料理人として自信を失ったり、本来の姿を忘れたりしたことから、自分を取り戻させる修業だったのです。

気づいた店主は、ポロポロと恥も外聞もなく涙をこぼします。

そして、目覚めた店主が作った料理を客が食べると、これまた鼻を垂らして曰く言い難い幸せそうな笑顔になります。

本作は、この恥も外聞もない笑顔に、人間の本心を描いているのだと思います。

後半は、精四郎が利益第一で、かつ自分に従う人間だけに料理人をすげかえ、強引なチェーン展開を進めたため、五稜郭亭の味へのこだわりと客のニーズに応える料理作りを復活させようと、函館へと舞い戻ります。

そして、幾多の料理人と様々な料理対決を行います。

料理を食べる客の顔を見ていないから、手を抜いた仕事しか出来ない


再建するのは高級店ではなく、ラーメン店やうどん店、餃子の店など大衆的な店が対象になります。

しかし、すんなり依頼を請け負うのではなく、まずはその飲食店のダメなところを指摘します。

店主が、反発したり、勘違い解釈したりすると、激怒していったんはその場から退き様子を見ます。

そして、店主がいよいよ息詰まるとまた出てきて、修行が始まります。

ただ手を差し伸べるのではなく、ギリギリまで追い詰めて考えさせているわけです。

また、正式に引き受けるにあたっては、どんなにダメな店主でも、何か一ついいところを見つけて「まだ脈がある」と解釈してから修行を始めます。

たとえば、お茶は出がらしではないとか、お客のために作ることの喜びを忘れないとか……。


店主に対しては大きく2つの修行があり、前半は一見料理とは無関係な特訓をさせます。

しかし、実際には再建の為に必要な特訓であることがあとからわかります。

お客を見る料理人にする

特訓の前は、店主が質問しても、北方歳三は「質問は一切受け付けん!!」と、問答無用に従わせます。

そして後半は、実際に料理をさせます。

その結果、できたものは見違えほどよくなっている、というストーリーです。

人を見る「ものづくり」


北方歳三が重視しているのは、

1.材料が、市販の調味料など安易なものにはしらない
2.お客が喜ぶために作っているということを忘れない

「1」は、オーガニックでなければダメだ、などというグルメ漫画にありがちな教条主義ではありませんが、要するに手を抜くな、ということです。

「2」では、たとえば注文は相手の顔を見て受けて、できあがったら相手の顔を見てにっこり配膳することを教えています。

つまり、自己満足を徹底して排除し、お客と向き合うことを唱えています。

これは、私がブログを書くときにも肝に銘じているところで、誰に対して何を書きたいのか、ということをいつも考えながら記事を書いています。

この場合の「誰」というのは、たとえば5年前の自分であったり、アンケート調査でトップになった回答であったりします。

やはり、人を見ない「ものづくり」は、独りよがりになってしまうものです。


私は、これまで読んだ料理漫画というと、『包丁人味平』と、この『食キング』の前半(再建料理人編)が印象深いですね。

みなさんは、いかがですか。

今度は大丈夫と思いますが、kindleunlimitedの読み放題リストも月単位で変わりますから、関心在るからは無料のうちにご覧ください。

食キング 1 - 土山しげる
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コメント 10

赤面症

脱サラして食べ物屋は大変です
by 赤面症 (2024-01-16 02:26) 

お散歩爺

良くない仕事を自分で考えさせるのも良いことですね。
by お散歩爺 (2024-01-16 05:43) 

mm

おはようございます^^
立ち直れる脈がある人は料理人に限らず救いがありますね。
世の中には「自分ファースト」で箸にも棒にもかからない人がいますから(ー。ー
by mm (2024-01-16 06:22) 

pn

顔が見えない物作りは人によってはありがたいんだけどやっぱつまんないですよ。
けど客の笑顔にも二種類あって安さを好む人と安さと質を好む人、高くても質を選ぶ人はほぼ居なかったなぁ。
by pn (2024-01-16 06:24) 

Rchoose19

包丁人味平は、懐かしいですね♪
カレーの研究に没頭するあまり
スパイス中毒になっちゃう話が印象的でした!
by Rchoose19 (2024-01-16 07:33) 

Take-Zee

おはようございます!
それにしても、いっぷくさんの読者欲には
感服します。 真似ができません!!

by Take-Zee (2024-01-16 08:55) 

yokomi

うーん、ためになる本。見たくなってきました(^_^;)
by yokomi (2024-01-16 13:27) 

deepredcocktail2

「深夜食堂」
あ、あれは食マンガじゃなくて人生ドラマか
by deepredcocktail2 (2024-01-16 14:18) 

コーヒーカップ

飲食店は入る時間とか調理師が誰に当たるかで味違いますね。

by コーヒーカップ (2024-01-16 19:13) 

tai-yama

たまにネタとして出す「美味しんぼ」かな(笑)。
利益第一、数字第一は結局自分だけしか見ていないと。
by tai-yama (2024-01-16 23:01) 

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