SSブログ

学問のすすめ(原作/福沢諭吉、作画/バラエティ・アートワークス) [文学]

学問のすすめ(原作/福沢諭吉、作画/バラエティ・アートワークス)

学問のすすめ(原作/福沢諭吉、作画/バラエティ・アートワークス)は、人間の自由平等、独立の思想に基づいた啓蒙書の漫画化です。従来の封建道徳を鋭く批判。誰もが自由な立場から実用的学問を身につけ、社会に貢献する人間像を求めています。

本書は、前半後半にわかれています。

見出しは、

・福沢諭吉物語
・学問のすすめ

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云えり」と、人間の尊さを説き、明治初期の刊行後300万部以上の売れ行きを記録した『学問のすゝめ』の漫画化ですが、それだけでなく、福沢諭吉という人がどのような子供時代、青春時代を過ごしたかも描かれています。

私たちは何を信じ、何を疑うべきか?
自由とは何か?
義務とは?
独立自尊とは?

原著者・福沢諭吉の人生と併せてそれらが漫画化されています。

要するに、人間は誰しも平等に能力開花と自己実現できるチャンスが有るべきだ。

そのために、個々人はまず学問を身に着け努力精進しよう、という内容です。

人間は自己の独立のために学問が必要なのです


福沢諭吉は、学問好きの中津藩士・福沢百助の次男として1835年、大阪に生まれました。

しかし、福沢百助は諭吉が2歳のときに他界。

家族6人は、母親の故郷中津(大分県)へ。

諭吉は努力家で、どんなことでも粘り強く頑張って成果を出すのですが、いかんせん下級武士の息子。

上級武士の子弟に目をつけられ、いじめられることにつながります。

そのたび、諭吉は、封建社会の矛盾に疑念と憤りをいだきます。

士農工商だけでなく、士族階級の中でも、家老の子は家老に、足軽の子は足軽にしかなれない。

生まれた時から貴賤が決まってしまう封建社会について、諭吉は、「身分制度は親の仇だ」と考えるまでになりました。

1853年のペリーの開国要求以来、日本でもオランダ語を読めるものを育てようということになり、諭吉は兄の紹介で長崎に行きます。

そして、砲術家・山本物次郎のもとで蘭学を勉強。

ところが、ここでも身分社会のとばっちりが。

一緒に学んでいたのが、あろうことか同じ中津藩の家老の息子・奥平壱岐でした。

諭吉のほうが優秀なため、壱岐の父親は、諭吉を中津に戻してしまうのです。

諭吉はめげずに大阪で蘭学を学び、その後、江戸屋敷で蘭学塾の教師をしながら、今度は独学で英語も学びました。

そして1860年、日本がアメリカとの条約締結のために送ることになった遣米使節に立候補。

遣米使節団に加わり、咸臨丸で勝海舟、ジョン万次郎らと渡米。

諭吉はアメリカの民主主義を学びます。

たとえば、ワシントンの子孫を尋ねても、「今はどうしているのやら」と現地の随行員は無関心。

アメリカでは、親が何をしたかではなく、本人が世の中に何を残したかが大事だというのです。

アメリカでは、封建制度のようなしがらみがないことに、抑圧からの開放が人を進歩させるのだと考えます。

諭吉は4年後、欧米の文化を紹介した『西洋事情』を著し、25万部を売りました。

そして、1872年には、『学問のすゝめ』を刊行。

明治の世の人々に、これから進むべき近代社会の道を示し、300万部のベストセラーとなりました。

社会は確かに発展しているが……


福沢諭吉の思想は社会発展に寄与し、明治になって、封建社会は過去のものになりました。

ただし、明治・大正・昭和20年までの日本は、すべての身分制度が取り払われたわけではありませんでした。

現在の新しい民法ができるまでは、明治以降も元の身分は戸籍に記載され、就職や結婚に影響しました。

みなさんも、先祖の戸籍を取ったら、身分の消し忘れがあるかもしれません。「士族」とか「平民」とか。

それらが一切払拭されたのは、戦後の民法からです。

では、戦後は完全に、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云えり」といえる世の中になったかと言うと、残念ながら現代は、身分差別はなくても、格差社会になっています。

「親ガチャ」という言葉がある通り、どういう親から生まれたかという「ほしのもと」によって、学歴や文化水準、人格形成に差が生じてしまう現実は否めません。

そんな格差社会を解消する「令和の福沢諭吉」は、果たして今の政治家や学者の中から出てくるのでしょうか。

いかが思われますか。

『学問のすすめ』の詳しい内容は、本書をぜひお読みください。

学問のすすめ (まんがで読破) - 福沢 諭吉, バラエティ・アートワークス
学問のすすめ (まんがで読破) - 福沢 諭吉, バラエティ・アートワークス
nice!(133)  コメント(7) 
共通テーマ:学問

nice! 133

コメント 7

赤面症

逆に民主主義で多様化しすぎて革命的リーダーが生まれにくい(・∀・)
by 赤面症 (2024-01-04 01:18) 

お散歩爺

福沢諭吉の学問のすすめは知ってましたが、
爺は自由に生き過ぎました。
by お散歩爺 (2024-01-04 05:59) 

pn

まあ今でも選挙区は息子にとか次の社長は息子にとか言ってる時点で大して変わってないんでしょうね、その息子が本当に優秀ならいいんだけど。
by pn (2024-01-04 07:02) 

Take-Zee

おはようございます!
格差社会ですね・・・
一般の家庭から政治家が出ませんね。
日本の政治は代々世襲の政治屋に。

by Take-Zee (2024-01-04 08:27) 

ムサシママ

私たちは何を信じ、何を疑うべきか?にジンときました
ネットに溢れる情報、生成AI による情報、混沌としています
by ムサシママ (2024-01-04 15:58) 

コーヒーカップ

一番一般家庭の立場に近いと思われる政治家は
れいわの山本太郎と思いますが・・・
by コーヒーカップ (2024-01-04 18:43) 

tai-yama

福沢の頃のアメリカは黒人が差別を受けていたので・・・
今の時代、実力よりアピールの時代と言う(悲)。
by tai-yama (2024-01-04 21:29) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます