「医療崩壊」のウソとホント(本田宏著、PHP研究所)は、医療現場の悲鳴と医療に関する疑問や誤解について平易に解説した書籍です。医師不足、医療費、救急、産科、小児科、医療事故、保険、教育、福祉、医療再生等医療関連の諸問題についてQ and A形式で優しく解説しています。
本書は、医療についての疑問や誤解を明らかにするものです。
2020年。医療先進国であるはずの日本で、コロナ禍により入院もままならない「医療崩壊」が問題になりました。
どうして医療技術も病床数もあるのに崩壊するんだ、という思った人も少なくないでしょう。
病院の数は先進国の中でも圧倒的に多いのに、感染症に対応できるだけの病床がない。
その理由は、今まで感染症というのは、結核が長い間国民病でしたが、ツベルクリン、BCGでかなり少なくなってきました。
そこで医療の効率化ということで、感染症、結核のための病院が統廃合されました。
民間に医療を任せる体質になってくると、かつて国立病院や大学病院等でキャパシティを持っていたものが非効率になる。
非効率になると医療費の無駄だと。
そこを改善して民間を中心にやってもらうほうが安く済むという考えで、民間病院が大きくなっていきました。
ところが、街の病院では2類のコロナ禍には対応できなかった。
その結果、病院の数はたくさんあるが、医療現場が逼迫したといわれています。
では、どうして効率を気にするのか。
医療費高騰、という話はよく聞きますよね。
医療費を使いすぎているから、無駄を削るのだと。
しかし、本書ではそれを否定しています。
医師不足の深刻さや医療費の「多さ」の誤解など解説
大手マスメディアが報道する医療情報の多くは、厚生労働省の記者クラブが発表したものであるそうです。
だから、額面通り受け取らずに実態を見てほしいと本書は言います。
日本の人口1000人あたりの医師数は、2008年OECD平均の3.1人に対して2.1人であり、平均値にもっていくには14万人増やす必要があるといいます。
要するに、わが国には
医師不足という問題があるそうです。
にもかかわらず、医師増員による過当競争を恐れた日本医師会の思惑で、1987年~2006年まで一貫して大学医学部の定員を抑え続けてきたそうです。
しかも、1997年からは、削減すらしたそうです。
日本の場合の医師のカウントは、医師免許を保有している人全員ですが、アメリカは一定以上の臨床業務をしている「現役」のみであり、その点でも統計上の数字以上に「日本の医師不足」は深刻だそうです。
病院に勤務する医師数である「標準医師数」は、1948年に決められたもので、それから見直されていないといいます。
いったい、何年経ってるんだよ、という話です。
さらに驚いたのは、日本の医師は、80歳以上でも週30時間働いているとか。
悠々自適の老後を許さないんですね。
1992年に、アメリカからサリバン厚生長官が日本の国立がんセンターに視察にきましが、1週間で切り上げました。
大部屋雑魚寝状態、共同浴室は1960年のアメリカレベルであり、参考にならなかったのが理由とか。
日本の医療費はかかりすぎるというマスコミ報道がかまびすしいですが、実際には約31兆円。
他の産業(携帯電話、パソコン:各26兆円、レジャー:70兆円、パチンコ:30兆円)と比較して大きくありません。
現在の制度では、2週間以内の入院は1日:4280円の加算、14~30日:1920円、それ以降はさらに病院の収入が減ると言う仕組み(本書より)になっているために、病院は患者をはやく退院させたがるのです。
それでも、日本の医師は1日の外来で60~100人診察するが赤字ぎりぎりの経営で、一方アメリカの医師は、1日に診察する患者は多くても10人以内、1回の診察料金は日本の10倍以上(本書より)だそうです。
「医療費高騰」は本当なのか
2004年に、前置胎盤による帝王切開手術で、妊婦の女性が大量出血で急死。
担当医が逮捕された、福島県立大野病院事件についても言及されています。
医療事故なのに、医師がお縄をつけられた逮捕の様子がテレビ中継され、問題になりました。
本書によると、現在の保険金システムは、医療者側に過失がないと保険が降りないことになっているため、遺族に保険金を払うために、報告書に医療ミスがあったような記載をしたことが原因だったそうです。
まあ、そうだとしても、お縄の逮捕はやりすぎだと思いましたが。
要するに、医療については、真実が世間に知られていない、と著者は言いたいようです。
それはともかくとして、昨今の値上げと増税ラッシュがショックだったか、「国民1人あたり約1005万円の国の借金を孫子の代まで残すな」などという、あたかも国民が借金しているかのような財務省のデマゴギーに、国民が気づき始めました。
この際、「医療費高騰」というのも、本当にそうなのか、考えてみることも必要ではないでしょうか。
もう、コロナ禍における「医療崩壊」騒ぎの二の舞いはゴメンですからね。
そんな感じで、医療に対する私たちの誤解を本書はデータを根拠に解いてくれています。
「医療崩壊」のウソとホント 国民が知らされていない現場の真実 - 本田宏
医療費がかかるとか言って国民皆保険が終わったら困りますね
by 赤面症 (2023-12-20 01:14)
おはようございます^^
医療に限らず、マスコミってあまり信用していないわたくしです。
by mm (2023-12-20 06:14)
マスコミはソースの出所が同じという感じで、多角的じゃないですね。画一的に感じます。
by mayu (2023-12-20 07:58)
医療効率化を優先させて,田舎の病院がつぶれていく,医師が減っていく.自分の老後が心配です.
by ararat (2023-12-20 08:22)
おはようございます!
コロナはいろんな課題・宿題を残して
くれましたね・・・
by Take-Zee (2023-12-20 08:45)
教師も配送も介護も保育も人手不足、ちなみに弊社も人手不足。人が余っている業種ってなんだろう?
まあそれは置いといてだから医者はあんなに機械的な人ばっかなんだなと納得(^_^;)
by pn (2023-12-20 10:39)
医療関連法を改正すれば大半の問題は解決されるでしょう。
by U3 (2023-12-20 14:45)
今の日本、何が真実やら、誰を信じていいのやら
暗中模索、答えは出ないのに
マスコミを始めまことしやかに語る輩が多すぎます
by ムサシママ (2023-12-20 15:06)
医療の業界も政治と同じような利権で汚染せれてると思います。
by コーヒーカップ (2023-12-20 17:38)
毎月とられている厚生年金のお金はどこへ・・・
まぁ、関連費(関連していなくても)で無理矢理予算化したも
のも合わせて医療予算と。政治家や官僚の道具ですね。
by tai-yama (2023-12-20 23:09)