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罪と罰(原作/ドストエフスキー、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス) [文学]

罪と罰(原作/ドストエフスキー、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)

罪と罰(原作/ドストエフスキー、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス)は、主人公が自首か逃亡かの葛藤に悩む物語です。頭脳明晰な青年ラスコリニコフは独自の倫理観で罪を犯しますが、明晰ゆえに良心の呵責に悩む姿が描かれています。



まんがで読破シリーズ 第4巻(全59巻)です。

簡単にストーリーをご説明しますと、主人公は、「優秀な人間は、悪事のひとつやふたつ、正義のためなら許されるのだ」という独自の倫理観に基づき、強欲な金貸しの老婆と、目撃者であるその妹までサツ害。

証拠はなく、犯行を名乗り出る者も現れ、またアメリカに高跳びできる話もあったので、その成り行きに従えば逃げ切れた可能性もあったのに、主人公は自分が「優秀」であると考えるプライドゆえに自分を追い込み、葛藤の末、結局は自首してしまう話です。

ドストエフスキーは、『罪と罰』『悪霊』『白痴』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』などの「5大長編」の著者として知られ、「人間の罪とはなにか」「神はいるのか」といった哲学的なテーマにアプローチしています。

原作は、青空文庫に公開されています。

登場人物が多いので、メモが必要かも。

本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

自分はもっと社会で重用されるべき存在である


舞台は、19世紀のロシア。サンクト・ペテルブルグ。

貧乏なラスコーリニコフは、学費滞納のために大学から除籍され、サンクトペテルブルクの粗末なアパートに下宿しています。

母親からは、妹のドゥーニャが、ラスコーリニコフの学費捻出のために、好きでもない金持ち・ルージンと結婚するという手紙が。

自己愛が肥大化した彼は、「自分はもっと社会で重用されるべき存在である」と考えるようになります。

「金だ。金さえあれば、田舎の家族、母さんや妹のドーニャたちの手を煩わせなくて済むんだ。もっと違う未来が手に入るはずなんだ。……俺はこの1ヶ月、この考えに取り憑かれている。退学前に俺が書いた論文。『選ばれた天才には法律なんてカンケーない』なのだ」

たとえば、あのシに損ないの、貧しい人々から暴利を貪る欲深い金貸しのババアだ。

あいつをコロして金品を奪ったとしても、それを世の中の貧困に苦しむ民衆のために使えば、それは正義だ!!

正義を実行できるものが、凡人を超える非凡人…つまり天才になる。

「それを証明して見せる!」と、ラスコーリニコフは考えます。

そして当日。

これは正義なんだ

自分に言い聞かせ、金貸しの部屋に急ぐラスコーリニコフ。

途中、ペンキ屋のミコライを見かけますが、自分に気づいていないことだけを確認して金貸しを訪ねます。

金貸しが後ろを向いたとき、ラスコーリニコフは斧を取り出し……

ついにやったぞ。俺はやはり天才。選ばれた人間。

金庫を開けて金貨をポケットに詰め込んでいるとき、はやめに金貸しの妹のリザベータも手にかけました。

しかし、その後は、自分のしたことに内心恐れ始めます。

盗んだものは、アパートから離れた空き地に埋めました。

……え、今、捨てた? 自分が正しいのに?

俺は、何のためにババアをコロした!?

おかしい。いつの間にか冷静な判断力を失っている。

そんなとき、大学時代の同級生、ラズミヒンに声をかけられます。

しかし、そのときはもうラスコーリニコフは、精神的に限界が来ていました。

そのまま倒れ、気がついたのは4日後。

同級生ラズミヒンが運んでくれたのです。

「貧乏ぐらしがたたったのさ。でも安心しろ、お前のお母さんが、30ルーブルも送金してくれたんだ」

ラスコーリニコフの住むアパートの料理女・ナスターシャはいいます。

「リザベータがコロされたのよ。それでね、現場の下で働いていた、ペンキ屋の男が捕まったのよ」

真犯人のラスコーリニコフは、びっくりして起き上がります。

かぶりをふるのは、同級生ラズミヒン。

「いや、そいつは犯人じゃないよ。事件担当のポルフィーリが言ってたんだ。オレの親戚でね、判事をやってる警察一の切れ者なんだ。婆さんから金を借りているやつが怪しいと睨んで、これからそいつら全員を尋問するってさ。そういや、ポルフィーリ判事がキミに会いたがってたぜ。キミが学校にいたとき、犯罪者の心理について書いてただろ。それが気に入ったみたいなんだ」

うっ、あの論文見たのか、と焦るラスコーリニコフ。

ラズミヒンに、ラスコーリニコフは言います。

「ポリフィーリ判事に会わせてくれ。質入れした父の形見を取り戻したいんだ」

ラスコーリニコフは、捜査の状況を知るために、自分から探ろうと考えたのです。

翌日、ラスコーリニコフはポリフィーリ判事に会います。

「その時計なら署にあります。私はあなたが来るのを待っていたんですよ。出頭しなかったのはあなただけですから」

ラスコーリニコフは、ポリフィーリ判事が自分を疑っていることを改めて確認します。

「私はラスコーリニコフ君の論文に興味を持ったわけです。それによると、すべての人間は凡才と天才の二種類に分かれていて、凡人を支配するのが数百万分の一の確率で生まれてくる天才である。天才は、新世界を作るためなら人をコロしてもいいし、新たな法律を作る権利も持っている。つまり天才は、盗みもコロしもやり放題、でしたよね」

「それが社会のためになるのなら、法律を破っても良い、ということです」

「天才と凡人を見分ける方法はありますか?」

「それは難しいな、見かけは同じですから」

「それはまずいな。自分が天才だと勘違いした凡人が、次々と犯罪に手を染める可能性がある」

「大丈夫ですよ。そんな奴らのために、天才は法を作り、罰を与えるのです」

「では天才に罰を与えるのは誰ですか」

「おそらく自分自身に罰を下すでしょう。天才が法を作り、バツを決めるのですから」

「全くたいそうな論文です。それに気づいたキミも天才というわけだ?」

「なるほど、そうかもしれませんね」と、かわしたラスコーリニコフ。

そんな挑発に乗ると思うなよ、と警戒しています。

ポリフィーリ判事は、それほど警戒しながら、ラスコーリニコフを逮捕しません。

泳がせて、ラスコーリニコフが自滅するのを待っているのです。

結果的に、ポリフィーリの思惑通りになるのですが。

ラスコーリニコフのもとには、妻がありながら、ラスコーリニコフの妹・ドーニャをタぶらかした男、スビドリガイロフが訪ねてきました。

不倫が妻にバレると、妻はドーニャを親戚のルージンにくっつけて、その土地から追い出してしまったと言うのです。

そこで、スビドリガイロフは、ラスコーリニコフがドーニャとルージンの縁談を壊してくれたら、1万ルーブルくれると提案してきました。

ラスコーリニコフは、「妹がみすみすお前の愛人になってしまう、そんな相談にのれっか」と断りました。

諦めきれないスビドリガイロフは、しばらくアパートを借りて滞在することにしましたが、偶然にも、薄い壁を隔てた隣は、ラスコーリニコフがコロしたリザベータの友人で娼婦のソーニャが住んでいました。

そのソーニャのもとに、ラスコーリニコフが訪ねてきます。

ソーニャは苦しい環境にもかかわらず、不平不満も言わずに神を信じている姿に感動したラスコーリニコフは、彼女にこう言います。

「キミと会うのはこれが最後かもしれない。だがもし明日、俺が(ポリフィーリに逮捕されずに)ここへ来れたら、リザベータをコロした犯人を教えるよ。君だけに」

そして、明日になり、ラスコーリニコフは、判事ポリフィーリのもとへ行きます。

ところがその日は、ペンキ職人のニコライが、厳しい取り調べで無理に自白させられたのか、自分が犯人だと供述したために、結局その日もラスコーリニコフは、逮捕されることなく署を出てこれました。

ラスコーリニコフは、約束通りソーニャのもとを訪れ、真実を打ち明けます。

ソーニャはラスコーリニコフを抱きしめ、「あなたより不幸な人はいないわ。あなたはこれから罪を償うのよ。こんな苦しみ。一生背負うなんて無理よ」と、自首を勧めます。

それを隣で盗み聞きしていたのは、スビドリガイロフです。

スビドリガイロフは、ラスコーリニコフに、外国へ逃げたらいいと提案します。

「せっかく別の人間が犯人になってくれたというのに、罪悪感に堪えきれず自首ですか。まったくナンセンス。旅券も旅費もすべて私が用意しましょう。アメリカなんてどうですか。あなたたちの家族と私で、新しい生活を始めるのです」

要するに、スビドリガイロフの話は、ドーニャを諦められない自分のための提案でした。

「断る。俺は逃げない。俺は天才の誇りがあるからだ」

ラスコーリニコフは、話には乗りませんでした。

家に帰ると、またしても判事が待っていました。

「犯人はキミだ。証拠はない。しかし、たとえ法律上の罰から逃れられたとしても、キミは死ぬまでこの苦しみを背負って生きて行くんだぞ。自首しなさい、1日だけ待つ。それを過ぎたら逮捕する」

スビドリガイロフの誘いに乗って国外逃亡するか、減刑を条件に条件に自首するか……。

ラスコーリニコフは葛藤します。

しかし、自首したとして、スビドリガイロフがこのまま黙っているでしょうか。

まだ読まれたことのない方は、この先は本書でご確認ください。

登場人物の名前と関係が漫画でわかりやすく整理できる


おおよその展開を書きましたが、登場人物の名前と立ち位置を整理するのが、ちょっと大変かもしれません。

私も率直に言って、原作では登場人物の名前と関係が入りにくかったのですが、漫画によってイメージが確立して助けられました。

外国の文学作品というと、それだけで後ずさりする人でも、漫画なら入りやすいのではないでしょうか。

有名な作品なので、まだ読まれていない方にはおすすめです。

罪と罰 (まんがで読破) - ドストエフスキー, バラエティ・アートワークス
罪と罰 (まんがで読破) - ドストエフスキー, バラエティ・アートワークス
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赤面症

意識高い系は自滅する、ということですか
by 赤面症 (2023-10-15 01:09) 

よしあき・ギャラリー

私には漫画の方があっているように思います。^^v
by よしあき・ギャラリー (2023-10-15 05:30) 

mm

おはようございます^^
この本随分昔、若い頃読みましたが、内容の細部は全然覚えてない(ー。ー
by mm (2023-10-15 06:39) 

pn

題名知ってたけどこんな内容だったのかf^_^;
by pn (2023-10-15 08:17) 

Take-Zee

おはようございます!
頭が悪いのか記憶力が悪いのか本を読んでいる
うちに登場人物が分からなくなってしまいます。
ましt、洋物では・・・(^-^)!!

by Take-Zee (2023-10-15 08:52) 

そらへい

選ばれしものの正義のために用のない金貸し婆さんを殺す
というラスコリーニコフのテーマは
最近の若い凶悪犯につながるところがあるような気がします。この考え方は強烈ですが、その後の心の葛藤の方が長く苦渋に満ちています。
by そらへい (2023-10-15 20:32) 

tai-yama

登場人物の名前が長いですからね・・・
でも、古事記よりはまだマシかも。
by tai-yama (2023-10-15 23:03) 

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