銀河鉄道の夜（原作/宮沢賢治著、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス）

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銀河鉄道の夜（原作/宮沢賢治著、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス）　[仏教] [編集]

銀河鉄道の夜（原作/宮沢賢治著、漫画/バラエティ・アートワークス、Teamバンミカス）は、銀河鉄道の不思議な旅を描いた童話の漫画化です。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道に乗車し、不思議な乗客と旅をする物語です。

過日、宮沢賢治は熱心な法華経信者であり、仏教をモチーフにした作品をいくつか書いているとご紹介しました。

その中の一つが、本作『銀河鉄道の夜』です。

#宮沢賢治といえば、日本の近代文学史上に名を残す詩人、童話作家ですが、仏教的な信仰に根ざした作品を書いています。#風の又三郎（#仏陀）#注文の多い料理店（#五戒）#銀河鉄道の夜（#臨死体験）#虔十公園林（『#法華経』に出てくる #常不軽菩薩）など。https://t.co/p2s1u3pyMZ #仏教 pic.twitter.com/nQDa5vvoLZ
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) September 2, 2023

まんがで読破シリーズ第7巻です。

貧しく孤独な日々を送る少年ジョバンニが、祭りの夜に親友・カンパネルラと宇宙を走る銀河鉄道に乗りました。

どこへ行くか、どうして乗っているのかもわからない夢のような不思議な旅です。

しかも、乗車している乗客たちもなにか変です。

汽車はどこへ向かうのか？

人間にとって「ほんとうの幸せ」とは何か？

宮沢賢治の不朽の名作童話を漫画化です。

宮沢賢治にとっては、代表作ではありますが、遺稿でもあり、ストーリーは大幅な改稿が行われています。

本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

銀河鉄道の旅で生きる意味を覚る

銀河鉄道の夜#イラスト pic.twitter.com/YlYo97Hjcv
— こねこc?NEKO (@9KmAroE6u2xbdWh) September 5, 2023

天文学の授業。先生から質問された主人公のジョバンニは、貧しい家庭で生まれ育ったため、日々アルバイトに追われていて答えることが出来ません｡

親友で優等生のカムパネルラは、正解を知っていましたが、ジョバンニに気を使って自分も答えませんでした。

クラスメイトは、ジョバンニの父親は、密猟で刑務所に入っていると噂しています。

ジョバンニは、北の海に漁に出ていると思っていますが、母親はそれについて曖昧な答えしかしません。

ジョバンニは、活版処で文字を拾うアルバイトをしています。

そこでも、いじめられながら仕事をしています。

ジョバンニは、クラスの連中が話していた星祭りが気になって、少しだけ見に行くことにしました。

その際、クラスの連中と会い、いじめっ子のザネリからはまたしてもからかわれましたが、そこにカンパネルラもいたことはショックでした。

ジョバンニは、まっ黒な松や楢ならの林を走り抜け丘に出ると、ふしぎな声が。

銀河ステーション、銀河ステーションと云いう声がしたと思うといきなり眼の前に汽車が止まっていましたが、車内にカムパネルラを発見し、自分も慌ててその汽車に乗りました。

出発した汽車は、大気圏を抜け宇宙を走っています。

夢？

乗客も、一風変わった人ばかりです。

男の子は、「船なんか乗らなきゃよかったなあ」と、文句を言っています。

青年は子どもたちの家庭教師だそうです。

「私たちは、こんないい旅をして、じきに神様の元に向かいます」とたしなめています。

「どうかなさったのですか」と尋ねる老人に、家庭教師は言います。

「いえ、氷山にぶっつかって船が沈みましてね」

家庭教師は、船の沈没の様子を語ります。

ジョバンニはピンときました。

僕、知っているぞ。

海はパシフィックという大きな海。沈んだ船の名はタイタニック号だ。

それだけではありません。

車中には、エスキモーのような人たちも。

「アラスカ・カトマイ山大噴火」がありました。

「清朝滅亡」を思わせる清の要人。

「ロシアストライキ200人射殺」を思わせる弾痕が痛々しいロシア人。

ジョバンニは確信します。

この汽車は、シ者を運ぶ汽車なんだ。

汽車はサザンクロスに着きます。

家庭教師は、子どもたちに降りることを促します。

みんな降りてしまい、残ったのはジョバンニとカンパネルラだけになりました。

「町へ帰ろう」と引き止めるジョバンニ。

列車が天の川の中を通過した時に、ジョバンニが外の景色に見とれていると、いつつのまにかカムパネルラはいなくなっていました。

そして、そこには黒い帽子を被った博士がいて、「あの人は今夜、ほんとうに遠くに行ったんだよ」と言いました。

「僕、カムパネルラの分も勉強する。そして、僕のためにカムパネルラや僕のお母さんのために、みんなのために探して見せる。ほんとうの、ほんとうの幸福を……」

博士は、「時間だ」と言って、ジョバンニを汽車から突き落とします。

ふと気がつくと、ジョバンニは丘の上にいました。

「夢か。変な夢。母さんとカムパネルラに話してあげよう」

ところが、カムパネルラはその日、川で溺れたいじめっ子のザネリを助けたものの、自分が溺死していました。

やはり、汽車はシ者を運ぶ汽車でした。

ジョバンニは、銀河鉄道の旅で、志半ばでこの世から旅立った人たちとの関わりを通して、みんなの本当の幸いのために尽くすことに、自分の生きる意味があることを悟りました

ジョバンニのお父さんが、漁から帰ってくると、カムパネルラのお父さんが教えてくれました。

ジョバンニは、お母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと、一目散に河原を街の方へ走りました。

臨死体験をどう見るか

本作は、生きることに絶望すら仕掛けている一人の気弱な少年が、友の死を知り、絶望への道を選ぶのでなく、力強く先に進んで行くことを決意した作品です。

本作について、言われているキーワードのひとつは、臨死体験かどうか、です。

タイタニック号沈没を具体的に語った人たちが乗っているということは、臨死体験を舞台としたと解してもよいのではないかと私は思います。

シの世界は、三途の川とか、お花畑をわたるといいますが、本作はその鉄道版ですね。

本作は、作者宮沢賢治が、最愛の妹を病気で亡くしたのをきっかけに、書かれた作品といわれています。

妹の霊には成仏してほしい、という思いがあったのだと思います。

本来、お釈迦様の仏教は、「肉体から離れて不滅に存在する霊魂」を認めていないのですが、日本に持ち込まれて発展した大乗仏教は、高野山真言宗、天台宗といった密教系、そして日蓮宗は霊の存在を認めています。

宮沢賢治が信仰する法華経は、まさに日蓮宗の経典ですから、その考え方に基づいたのでしょう。

Facebookで、私の学生時代同級生だった人が夫人に先立たれ、「あの世でも一緒」「来世も一緒」と、阿弥陀如来の仏像に念仏を唱えている、と毎日のように投稿しています。

いや、南無阿弥陀仏はそういう念仏ではないから、とマジレスするするのも罪作りな気がして、静かに見守っています。

霊魂があってもなくても、とにかく亡くなった人の成仏を願う優しい心は人として大切なことですよね。