『蔵出し絶品TV時代劇』(近藤ゆたか編集、フィルムアート社)は、1967~1988年までの時代劇ドラマ60作品を振り返っています。昭和のドラマが面白かったのは、名場面、名台詞のある時代劇がたくさん作られていたからといっても過言ではありません。
新刊ではないのですが、ぜひご紹介したいと思ったのが、『蔵出し絶品TV時代劇』(近藤ゆたか編集、フィルムアート社)です。
CSで、昭和のドラマが放送されていますが、時代劇専門チャンネル、という文字通り専門的チャンネルが有るほど、時代劇ドラマはたくさん作られ、多くの視聴者に愛されてきました。
ところが、もっとも視聴者の多い地上波では、1990年代後半以降、新作時代劇の枠は減少の一途をたどり、2011年に『水戸黄門』が終了すると、レギュラーの時代劇はNHKの大河ドラマのみになってしまいました。
もちろん、今のドラマも、面白いと思うものはありますが、やはり時代劇がないことは寂しい。
そこで、せめて過去の時代劇を思い出そうと、本書『蔵出し絶品TV時代劇』をご紹介します。
テレビ時代劇の歴史を綴る
本書は、1967~1988年に制作・放送された時代劇ドラマのうち、60作品について時代劇に精通したライターたちがまとめたものです。
構成は、1967~1988年までを5章に分け、それぞれ時代を象徴する見出しをつけています。
1.一九六七年【昭和四二年】から一九七一年【昭和四六年】
映画からTVへ、時代劇の熱風吹き込む。ようやくカラー化!
2.一九七二年【昭和四七年】から一九七三年【昭和四八年】
『木枯らし紋次郎』大ヒット!後を追う『必殺仕掛人』との激闘の陰で大乱戦!
3.一九七四年【昭和四九年】から一九七五年【昭和五〇年】
『必殺』シリーズも四作目を数え、定着する裏で…。さらにネット局腸捻転騒ぎ!?
4.一九七六年【昭和五一年】から一九七八年【昭和五三年】
安定、主水シリーズ政権の隙間に革新作ザックザク!
5.一九七九年【昭和五四年】から一九八八年【昭和六三年】
ロウソクが消える前の発光か?土俵際の粘り腰…
「3」の「ネット局腸捻転騒ぎ!?」というのは、それまではTBSと朝日放送、NET(現テレビ朝日)と毎日放送がテレビの全国ネットで結ばれていたのですが、1975年3月31日に、朝日放送はNET⇒テレビ朝日系列に、毎日放送はTBS系列に入れ替わったのです。
これによって、たとえば人気シリーズとなっていた『必殺』シリーズが、TBSからNET(現テレビ朝日)に移ってしまう、つまり自局の看板番組が、他局の敵対番組になるという事態が起こったわけです。
こうした当時の事情の解説なども含めて、本書は個々のドラマの解説が書かれています。
テレビ時代劇の構成は、総じて勧善懲悪、そして1話完結が原則です。
週に1度、1時間の娯楽としては、その構成がいいのです。
だいたいが、盗賊、あくどい町年寄や上人などを、侍が斬る、立場的にフリーである浪人とか、お上から特別な命令を受けて動くとか、そういう立場の人が多いですね。
悪を退治することで、視聴者はスカッとするわけです。
それが、過去に作られたものの中から60作選び、解説されているのです。
その中から、もし私がひとつ選ぶなら、と問われるなら、即答するのは、『長崎犯科帳』(1975年4月6日~9月28日、ユニオン映画/日本テレビ系列)です。
一話完結の勧善懲悪を友情ストーリーで結ぶ『長崎犯科帳』
『長崎犯科帳』は、全26話。
すなわち半年間の放送でした。
江戸末期・文化年間の長崎が舞台。
町民から収奪を行っているのに、諸事情からお白州で裁けない町年寄(現在の地方議員)や悪徳商人などを、長崎奉行・平松忠四郎(萬屋錦之介)らが、仲間と「闇で裁く」ストーリーです。
仲間は、蘭学医・小暮良順(田中邦衛)や、牛太郎(遊廓の客引男)の三次(火野正平)、花売りのお文(杉本美樹)ら、これまた表の顔がある面々と、許せぬ悪人を闇に始末。
彼らは、「闇奉行」と呼ばれた、という設定です。
この4人が、毎回、悪役を始末する一話完結の勧善懲悪ストーリーです。
彼らのアジトは、おぎん(磯村みどり)が営む居酒屋「せいろむ」。
平松忠四郎(萬屋錦之介)は、もちろん剣の達人。悪党は危なげなく斬ります。
しかし、表向きは、カステイラの箱に入った小判を喜んで受け取り、酒好きで女好き。
奉行の仕事は熱心ではなく、奉行所の役人・与力(御木本伸介)からも「たわけ奉行」、町年寄(現在の市会議員兼商工会議役員)たちからも、「昼行灯」などと陰口を叩かれていました。
しかし、それは悪党を油断させ、奉行所の役人たちをも欺くための仮面でした。
ただ、闇奉行であることの正体はともかくとして、決して只者ではないことは、話数が進むうちに同心たち(新克利、高峰圭二)は気づいたようです。
では、この4人は肝胆相照らす関係かと言うと、少なくとも平松忠四郎は当初は違いました。
自分の正体は小暮良順しか知らず、小暮良順も三次たちには正体は明かしていませんでした。
「女と女郎は口が軽い」
「もし、自分の正体を明かしたら始末する」
と宣言。
それは回を追うと多少緩み、「遠くへ行ってもらう(何らかの咎をもって所払いにする)」と、命だけは奪わないことになりましたが、それでも完全に信用した「仲間」の宣言はしませんでした。
それが、あるとき、ついに正体がバレてしまい、三次は有頂天に。
が、決してミーハーな気持ちではなく、自分を使い捨てのコマにしてくれて構わない、という決意を持っていたことを平松忠四郎は知り、「仲間」としての気持ちを抱くようになるという友情ストーリーもあります。
オープニングは、城達也のナレーション。
オープニング・エンディングタイトルバック演出は実相寺昭雄と、かなり凝った作り方で、今も私のようなファンが多い作品なのです。
今も印象に残る時代劇はありますか?
蔵出し絶品TV時代劇 - ゆたか, 近藤
長崎犯科帳 DVD・SET - 萬屋錦之介
1話完結は、続きが気にならなくていいですね
by 赤面症 (2023-09-04 01:15)
ウルトラマンAの高峰圭二さんが、同心役で出てるんですね
(*´ω`*)。
by 萌田かずきち (2023-09-04 02:35)
昔のこっちは民放テレビはTBS系と日テレ系2局だけでしたので
印象に残ったのは水戸黄門と変な時間帯に放送される
必殺仕事人ぐらいかなと思います。
by コーヒーカップ (2023-09-04 05:06)
懐かしいですね。
未だに、疲れたときは藤田まことの必殺シリーズです。^^
by よしあき・ギャラリー (2023-09-04 05:18)
必殺黄金期は別格として、やっぱ破れ傘でしょうなぁ。
あれの進化が桃太郎侍なんすかね(笑)
by pn (2023-09-04 06:14)
おはようございます!
あの覆面、どうやっても作れません!
by Take-Zee (2023-09-04 09:16)
「三匹の侍」もはや知っている人は少ないだろうけれど、黒沢の「用心棒」とか「椿三十郎」のヒットに影響されてTV版の本格時代劇が企画されて初めてテレビのチャンバラで斬った音「バスッ」とか剣の音「チャリン」とかの音声が作られた作品でした。
それと「忍びの者」も衝撃的だったという意味で思い出深いです。市川雷蔵の映画よりも前に放映されていました。
by 扶侶夢 (2023-09-04 11:05)
長崎犯科帳は見ていませんねぇ
子供のころだと木枯し紋次郎の真似をして笊を被ってバスタオルを羽織ってそこら辺に落ちている小枝を加えて遊んでいた記憶があります。
水戸黄門は月曜8時のレギュラー時間帯よりも関東だと夕方の再放送の方をよく見ていたなぁ(月~金で見られるのだから1シーズンがあっという間でした)
by 青い森のヨッチン (2023-09-04 14:53)
昔はあんなにあった時代劇も
今やNHKでしかお目にかからなくなりましたね。
by そらへい (2023-09-09 21:20)