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はだしのゲンはピカドンを忘れない(中沢啓治著、岩波ブックレット) [社会]

はだしのゲンはピカドンを忘れない(中沢啓治著、岩波ブックレット)

はだしのゲンはピカドンを忘れない(中沢啓治著、岩波ブックレット)Kindle版は、1982年に上梓された作者による漫画の解説です。広島市教委による教材の差し替えが話題になりましたが、本作については評価以前に誤解もあるので残念です。

『はだしのゲンはピカドンを忘れない』は、漫画『はだしのゲン』の作者である中沢啓治さんが、漫画の一部のコマを引用して、当時の様子を解説している岩波ブックレットです。



広島市立の小中高校で平和教育に使われている教材が2023年度から改訂され、10年前から掲載されてきた漫画『はだしのゲン』が別の教材に差し替えられることになりました。


広島がヒロシマを隠してどうすんだ、という話です。

本作が日本共産党系メデイアで掲載された経緯


上記の市教委の一件については、同作や同作を推す勢力が左翼的だからだとか、子供に見せるのは酷いからとかいった意見が、一般の人の中にもあります。

しかし、まず明らかにしておきたいのは、広島の被曝は、イデオロギーによる解釈の問題ではなく現実だということです。

広島、長崎の原爆被曝、沖縄戦、東京大空襲。

いくら時間が経ったからと言っても、いや時間がたつからこそ風化されないよう、こうした戦災は語り継ぐべきではないでしょうか。


『はだしのゲン』のストーリー自体は、改めて追いません。

作者の被爆体験を描いています。

たんに被爆そのものによる悲惨さだけでなく、その後の人間の生きざまを描いていて、保守的な人はそこが気に入らないようです。

日本人を悪く書くなよと。

日本は差別もなく、すばらしい戦争をしただけなんだという歴史観を守れと。

どう思うかは「言論の自由」「内心の自由」かもしれませんが、事実からは逃げるなよ、というのが私の意見です。

本書は、文章での解説です。

たとえば、作者が被爆して、よそに転居したものの、よそ者としていじめられたという話が書かれています。

日本人の根性の悪さが書かれていますが、それももとを正せば、戦争が悪いのです。

また、これは有名な話ですが、ドイツは戦争の自己批判を徹底して行い、連合国からは「敵国条項」がはずれるよう努力したが、日本はいまだに国連では「敵国」のまま、ということも書かれています。

だからね、日本が国連の常任理事国入りとか、そんなことありえないんですよ。

本作は、『文化評論』という日本共産党系の雑誌に連載されたから、左翼的といってる「無明の者」がいますが、そうじゃないんです。

よく、ネットで「反日」という言葉が言われますが、あれはわかってて使っているのかな。

大国(アメリカ)の都合の悪いものは排除するという点で、実は朝日も産経も同じアナのムジナ、つまり「反日」なんです

うわべは、さも対立しているように見せてますが、しょせん、共同通信の記事を買い、記者クラブで一緒に取材している「仲間」なんですよ(笑)マーケティング上の対立はあっても、肝心なところは一緒なんです。

作者は、原水協(共産党系)と原水禁(旧社会党系)の分裂を批判しており、日本共産党と肝胆相照らすなかよしというわけではありませんでした。

ただ、既存メディアから敬遠された場合、今の日本では、日本共産党機関誌は駆け込み寺的な役割を果していますよね。

そういう経緯で連載されたのです。

繰り返します。左翼とか右翼とかではなく、日本のマスコミが「反日」のため、為政者批判とか、「核の恐怖」を伝えないように忖度したから、同作は日本共産党に流れ着いたのです。

その後、日教組のメディアでも使われたと言いますが、日教組というのは私もよくわからない団体なので、さしあたってここでの論評は措きましょう。

ただ、いずれにしても、作品が「左」なのではなく、「反日」売国風土が、同作を「左」に押しやったということだと思います。

日本や日本人の汚いところを隠したい「アンチ」


本作については、広島出身のルポライター、片岡健さんのツイートが至言になっていると思います。


綺麗事のない、リアルな追及に敬意を評しているのは、共感できます。

上記の繰り返しになりますが、「大国への忖度」以外の理由で、ああだこうだとケチがつくのは、日本や日本人の汚いところを描いているのが気に食わないんだろうと思います。

でもね、人間は、決して綺麗ではない。

間違いもある。

生きるということは、そういうことなんです。

本作に描かれているようなことが、いろいろあったって仕方ないじゃないですか。

事実と向き合えない卑怯な態度は、愛国心でもなんでもない!

日本が好きなら、日本や日本人の「影」や「闇」と、きちんと向き合うべきだと私は思います。

「右」でも「左」でもいいですが、卑怯者になってはならない、というのが私の結論です。

はだしのゲンはピカドンを忘れない (岩波ブックレット) - 中沢 啓治
はだしのゲンはピカドンを忘れない (岩波ブックレット) - 中沢 啓治

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コメント 9

赤面症

削除してその代わりに何を伝えたいのでしょうか
by 赤面症 (2023-08-06 01:14) 

ハマコウ

-「右」でも「左」でもいいですが、卑怯者になってはならない

同感です。覚えておきたい言葉です。

by ハマコウ (2023-08-06 06:38) 

Take-Zee

おはようございます!
今は”ピカドン”は禁止語となっているようですね!

by Take-Zee (2023-08-06 08:15) 

pn

記憶が曖昧だけど最初は少年ジャンプだったような?
日本兵が行った残虐行為は実は中国兵の話だったってーのをTwitter(意地でもこう表記)で見たけどあれどうなんだろ?
by pn (2023-08-06 08:28) 

starwars2015

「広島がヒロシマを隠してどうすんだ」
まさにいっぷくさんのおっしゃる通りだと思います。
伝えることが大事だと思います。
by starwars2015 (2023-08-06 10:01) 

扶侶夢

>どう思うかは「言論の自由」「内心の自由」かもしれませんが、事実からは逃げるなよ、というのが私の意見です。
まったく同感ですね。卑怯な人間にはなりたくないです。昨今のSNSには卑怯な発言が多すぎると感じます。
by 扶侶夢 (2023-08-06 11:37) 

ゆうのすけ

上手く言葉や文字にすることは出来ないのですが
私が いっぷくさんの記事に書かれていることはまさに同じ考えなんですね。左とか右とかではなくて 過去の事実は変わらないんです。故に向かい合って 受け止め考えて理解することをしていかなくてはならないんですね。私もすべてが見えているわけでもないし まだまだ理解できていないこともかなりあるはずです。どうとらえるかはその人の考えでもありますし [はだしのゲン]のことについては 体裁を考える前に 嘘偽りのない原作そのままのものを隠したりしてはいけないと!汚いものを見たら汚される。そうではないんですよね。そこでどれだけ学ぶことが出来るか 自分の心の中で自身ならどうするどう思う・・・向き合うことが一番大切なことなのではないかと。そして後世に伝えて行かなくてはならない。それが生きてゆくと言うことなのではないでしょうかね。(簡潔に表現することが本当に難しいです。)
by ゆうのすけ (2023-08-06 13:38) 

エンジェル

「はだしのゲン」の原爆投下シーン初めて見ました。
アニメだからこそ表現できるシーンかもしれません。
初めから全部見なくてはと思います!!
原爆の事実をずっと伝え続けていくのが私達日本人の務めだと思います!!
by エンジェル (2023-08-06 15:16) 

tai-yama

ジャンプで掲載されていたと言うのがすごい。
ヒロポンとかパクさんとか非国民とか・・・・
今の時代にかけないリアルな内容。でも現実は
こっちなんですよね。
by tai-yama (2023-08-06 22:52) 

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