身体拘束を特集していた『NHK クローズアップ現代+』のダイジェスト動画が、Facebookに投稿されていたのでシェアします。「身近な病院でも!なぜ減らない“身体拘束”」というタイトルです。身体拘束が患者にどんな影響を与えるのか。病院はなぜ拘束しなくてはならないのかがまとめられています。
動画によると、患者の身体の一部をベッドに拘束する、精神科病院での身体拘束の件数が、この10年で倍加しているといいます。
近年は、
認知症の患者が増加しているうえ、58人の患者に対して夜間は看護師2名と、他科に比べて人手不足の構造もあり、命に関わる事態を避けるため、やむを得ず拘束を行うこともあるとしています。
「今後はもっとたくさんの認知症の方が治療を求めてこられる。その時、私たちの体力で対応できるかどうか」(院長)
しかし、身体拘束は終わった後も苦しみが残るという実態調査があるそうです。
「身体拘束されることも大変苦しいし、されたことで深く傷ついている」(杏林大学教授、長谷川利夫さん)
番組では、患者と向き合うことの重要性を強調。
たとえば、経鼻栄養の患者が、管を抜かないように両手を拘束していたのを、家族から食べ物の好みを聞いて口から食べさせることに成功して、拘束の原因だったチューブそのものをなくすなどの工夫を行い、身体拘束を減らしている例などを紹介しています。
私は、このときの放送を見ていました。
放送の主旨である、身体拘束を否定する意見については、反論コメントも入っています。一部引用します。
不要な抑制もあると思いますが、どうしても必要な時もあります。
人手が不足している中で安全も求められてしまう、そうなったら申し訳ないけれど抑制させて頂くと思います。
あまりにひどければ
夜間だけでもご家族に付き添いをお願いした事もありますが、ご家族にも生活があり難しいのが現状です。
誰だってやりたくてやってない。
治療状必要な場合は仕方ないと思います。医療現場で必要を迫られる場合です。
自傷他害の恐れがある人を、見守れる人員や環境が整わないのが現実だと思う。する方だって気持ちのいいものじゃない。自分がされたくないから。それでも同意書とって、しなければならないのが、今の現状だと思う。
身体拘束の可否については、過剰な措置である場合が絶対ないとは言えないのですが、ただやはり、伊達や酔狂で行っているわけではないように私には思われます。
私が気になるのは、往々にして、
患者を認知症と認めたくない家族が拒絶することです。
拘束しないと患者自身の安全が保証できないのに、「うちは認知症ではないからそんなものは不要だ」と拒絶してしまい、その結果、患者は徘徊して頭を打った、転んで骨折して寝たきりになった、などなど禍根を残す大事故に、というケースは少なくないと聞きます。
病院内の出来事なら、法的に病院の責任は問われるのかもしれませんが、私から見ると実質的にそれは、患者家族側の責任放棄に加えて、病院に対する逆恨みのようにすら見えます。
患者の実態と正面から向き合い、たとえ嫌なことであっても、それも含めて一番いい方法を選択する勇気がないくせに、なにかあると責任だけを病院に求めるとは何事だろう、という疑念です。
患者の認知症を認めたがらない人は、患者と向き合っていない。患者に寄り添っていない。
たとえば、上に書いた、経鼻栄養を口からの摂取に克服したケースにしてもそうです。
病院側の工夫には頭が下がりますが、本来なら「患者の好きなものを口から摂取させることで経鼻栄養を克服させる」提案は、もし家族が患者に寄り添っていれば、家族側からできることだと思います。
普段は病院にまる投げをしている家族が、身体拘束のときだけ「トラウマが」と言っても、“だって患者はオタクのお母さんだけじゃないだろう”と言いたくなります。
病院が見放しても生還できることもある
以前も書きましたが、私の母が2年前に食思を失い、半年間点滴だけで過ごしたことがありました。
しかも、それによって腸管免疫がはたらかず、菌感染が3度もあり、抗生物質が合わずに肝臓と腎臓もボロボロ。
病院側は、「もう点滴を刺すところがない」と「平穏死」を勧めましたが、本人曰く、「食べる意志はあるけど、なぜか水を飲んでもまずい。どうしてだろう」と、具体的に現状を説明できることから、私は認知機能低下による食思喪失、すなわち「お迎えではなさそうだ」と判断。
中心静脈の点滴を付けたまま退院させ、病院側がバカにしていた口腔ケアに原因があるのではないかと行きつけの歯医者に通い、徹底した治療を行ってもらいました。
そして、流動食による食事管理からはじめたら、中心静脈の点滴はすぐにとれて、その後1年で体重を10キロ戻し、肝臓や腎臓も少なくとも数値上はもとに戻りました。
卒寿を過ぎた高齢者ですから、いつどうなるかわかりません。
しかし、この経験から、病院にまる投げをせず、家族として患者と向き合ったという自負はあります。
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患者に寄り添い医療スタッフとの信頼関係を構築する
身体拘束問題は、その是非以前に、まず患者が認知症である現実から逃げずに向き合っていただきたいです。
話はそこからです。
そして、
1.身体拘束は必要か、どうして行うのかをきちんと医療側と話し合ったのか
2.普段から自分は患者に深く関わり患者にとって何が必要かを真剣に考えているのか
ということをもう1度問い直してほしいです。
患者のリアルな実情に逃げずに向き合い、医療スタッフとの信頼関係を構築する。
身体拘束をすべきかどうかついては、それらをきちんと行っているのなら、自ずと納得した結論は出てくるのではないでしょうか。
認知症患者の身体拘束。いかがお考えですか。
急性期病院で実現した 身体抑制のない看護 ―金沢大学附属病院で続く挑戦
認知症って認めないんなら家族に引き取ってもらえばいいだけじゃないの?何で病院に入れてるの認めない人って。
認知症じゃなくても変な行動するなら脳の病気には違いないんだろうからとりあえず医者の言う事聞こうよと言いたい。
by pn (2019-10-02 08:08)
「 誰だってやりたくてやってない」の言葉が現状を表していますね。
家族の姿勢が一番のカギとなるのですね。
by Rinko (2019-10-02 08:10)
まだまだ世の中は、認知症は恥ずかしい病気なんですね。
by 犬眉母 (2019-10-02 13:43)
昨日18時前に移行の手続きをしたのですが、その確認メールが来ないので何も出来ませんでした。
今朝、迷惑メールにその確認メールがあったのです。
なんとか、再開できました。
by ヨッシーパパ (2019-10-02 17:43)
認知症でなくても病院は身体拘束したがります。
数ヶ月前に自分が入院した時、歩くと転倒の危険性があるとかで、ベッドに安全ベルトを装着しようとしました。
当然自分は拒否しましたが、病院側の都合は腑に落ちないです。
by kou (2019-10-02 19:44)
義母も入院先で身体拘束をされました。義母は認知症ではありませんでしたが、よろよろ状態なのにトイレへ一人で行こうとしたからです。義母はショックを受けて涙ながらに解放を訴えました。一度拘束されると家族が24時間付き添わないと拘束から解放されないルールだったので私達家族は交代で24時間付き添いました。義母はそんな私達の状況を察してか10日ほどで亡くなりました。あの状態が続いていたらきっと誰かが倒れていたと思います。身体拘束をする病院側の事情も分かりますが、拘束される病人の気持ちも考えて欲しいです。
by エンジェル (2019-10-02 21:53)
おっしゃる通り、責任放棄をしている人が多いのだと思います。
そこのところが家族と共有できないのなら、預かれない、預からないという選択が病院にもあっていいと思いますね。
by なかちゃん (2019-10-02 21:58)
この放送については、ツイッターで大きな反響がありましたね。
いろいろな意見がありますし、私も現場にいる看護師としてしっかり議論したいテーマです。
で、いろいろあるなかで、一つだけ。
日本では転倒のおそれがある患者を転倒させて、ケガや死亡すると、有罪になるのです。
一件や二件じゃありません。たくさんの判例があります。病院や施設側が有罪になるのです。たとえ患者が自分の意思で動いたとしてもです。
日本の司法がそうなんです。
ちなみに、デンマークでは認知症の患者が転倒して死亡しても罪になりません。患者の自由意思で動いて自分でこけたので、病院側に責任はないというのです。
海外ではこうしたように、認知症患者であっても「自分の意思」「自分で自由に動くことを尊重する」文化があります。法もそうなっています。
ところが日本はこけそうな患者がこけてケガや死亡したら、有罪になるのです。たとえ転倒予防をしていてもです。何例も何例も判例が積み重なっています。
転倒は100%防げません。
もう現場は怖くて怖くてしかたないのです。
だから認知症患者も、そうでない患者も危なそうなら抑制の方向に向かうのです。
だって実際に有罪になるから。
もちろん誰もがしたくないですよ。
司法が「いいか、コケてケガや死亡したら有罪だからな」と言っているのです。
多くの病院や施設がそれで有罪になっているのです。
なので、本当に患者に自由を与えたいのなら、司法をなんとかしないと、現場が怖がるのです。
もしこれを読んでいるあなたが、ホームヘルパーだったら、介護士だったら、どうですか?
ほんの1、2分、目を離して勝手に歩かれて、転倒してケガしたら有罪です。
本当は現場の誰もが抑制はしたくないんです。
もちろんすべての事例で家族が訴えるとは限りません。
家族と病院側との信頼関係が大切です。
私は転倒リスクの高い患者さんのご家族とは、特に信頼関係を築けるように心掛けています。
by ピストン (2019-10-02 22:33)
「認知症」という事実を受け入れることはなかなか出来ないですが、それを受け入れないと「次に進めない」といっても過言ではないですよね…
by ナベちはる (2019-10-03 00:32)
親戚で入院させていた家族が認知症で徘徊をしていて
転落して亡くなるという事故がありました
亡くなった本人の身内はみんな認知症と認めていて
家族の手に負えないと解っていたので
病院を訴えることも責めることもしませんでした
きちんと向き合ってない身内に限って
責任を誰かに押し付けて自分は悪くないと
そう思いたいだけのような気がします
by 藤並 香衣 (2019-10-03 01:13)
みなさん、コメントありがとうございます。
認知症を認めない家族だけが、身体拘束に批判的なわけではないと思いますが、
認知症を認めない家族は議論以前だと思ったので、今回そこにフォーカスしました。
認知症=外聞が悪い、という認識は、患者にとっても家族にとっても、誰も良いことがないと思います。
by いっぷく (2019-10-03 03:09)
いっぷく様、私達精神障害者夫婦にとっては身体拘束と言うと過敏にならざるを得ないのですが、今でも精神科特例(精神科治療・看護体制は少ない人数で良いとされています)と言うのが有って少しでも手間がかかる患者に対して精神障害者の人権が無視されて拘束衣を着せられ保護室(隔離室)にぶち込むことが行われているのが現状です。認知症の患者も同様で家族が手間がかかるのを病院に入院させてしまうというのは、この国が高齢者
医療に貧弱な事の現れだと思います。
by bp1teikichi_satoh (2019-10-03 04:26)
信頼関係に尽きます。
緊急の場合以外、拘束は合意書サインが必要な筈。
まさかとは思いますが、合意しておきながら後で苦情を言ってる人って、、いないですよね。
by skeptics (2019-10-03 12:11)