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永井智雄、宇津井健新幹線運転指令室長に退職を決意させた総局長 [懐かし映画・ドラマ]

永井智雄、宇津井健新幹線運転指令室長に退職を決意させた総局長

永井智雄さん(1914年6月14日~1991年6月17日)の生まれた日です。同志社大学時代に演劇活動に入り、俳優座入団後は舞台、映画、さらにテレビドラマでも活躍しました。有名な作品はテレビドラマの他映画にもなった『事件記者』。今回は『新幹線大爆破』を思い出します。(画像は劇中より)




事件記者など


永井智雄は戦前、日本共産青年同盟(今の民主青年同盟)幹部として検挙されことがあり、俳優座入団後も山本薩夫監督や新藤兼人監督作品の映画に多く出演しました。

俳優座といえば、東野英治郎、小沢栄太郎など、やはり左翼思想だからと検挙された経験のあるツワモノ揃いですが、共通していえるのは、個人の思想は左翼的でも、芝居は体制側の為政者や大企業・組織の長や管理職など、“敵役”をふてぶてしく演じていることです。

政治思想で検挙されることは現代の民主主義社会では否定されるべきことですが、良し悪しは措くとして、当時そうした不条理な経験をしたからこそ、役者として深い芝居ができたのかもしれないなあ、なんて思います。

永井智雄というと、『事件記者』(1958年4月3日~1966年3月29日、NHK)の相沢キャップ役という紹介がテレビドラマ史的にはなされますが、私は残念ながらそれを見ていません。



今日は『新幹線大爆破』(1975年、東映)を振り返ります。

新幹線大爆破


『新幹線大爆破』は、当時2本立てが当たり前だった封切り映画で、1本立て相当の尺のある大作でした。(実際には、ずうとるびのドキュメンタリー風映画との2本立て)

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今、大作というと、金をかけて宣伝を派手に行って、という商業ベースの表現ですが、当時の「大作」とは、尺が長く、出演者が質や数的に豪華であることをいいました。

宇津井健や山本圭といった、東映映画にはめすらしい出演者のほか、『仁義なき戦い』など“実録班”以外の東映映画の常連が、ワンシーンの特別出演を含めて集結しています。

一応、ストーリーを簡単にご紹介すると、食い詰めた高倉健、山本圭、織田あきらの3人が、80キロ以下に減速すると爆発するという爆弾を新幹線に仕掛け、ひかり109号は止められない状態に。

高倉健

パニックに陥る乗客、犯人逮捕を焦って失敗ばかりする警察、乗客の安全第一としながらも究極の選択で対立が生じる国鉄を描いています。

永井智雄は、国鉄新幹線総局長という新幹線の責任者。

山陽道に入って、爆弾をはずすことに成功したものの、写真撮影では、もう1箇所怪しいものが。

現場監督の宇津井健司令長は、もう1度撮影しましょうといいますが、永井智雄は拒絶。

宇津井健「万一爆弾だったら」

永井智雄「だから止めるんだ」

北九州工業地帯での被害を避けるため、ゼロ地点(新幹線を止める場所)は山口県小月の田園地帯にすると譲りません。

新幹線は、結局小月で無事に停車しますが、直接運転士(千葉真一)に命令する現場監督の宇津井健司令長は、辞職を申し出ます。

永井智雄

宇津井健

「俺は1500人の命を見捨てたんだ。俺が停車を命じたんだ。あのとき、ひかり109号にもうひとつ爆弾がついていなかったのはたんなる幸運に過ぎないんだ。俺は人殺しだ。もうこの仕事を続けていく資格はありません」

ちょっと精神的にお疲れな感じの一本気ですが、宇津井健のキャラクターらしい正義感です。

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社会派作品にも出演


その他、過去にご紹介した記事で永井智雄は、『第五福竜丸』(1959年、近代映画協会)で、被爆した漁師たちの医師役で、『にっぽん泥棒物語』(1965年、東映)では、三國連太郎の証言を採用した、松川事件差戻審の裁判長役を演じています。

昭和の映画は、新劇出身で人生経験も豊富な永井智雄のような人が、しっかり脇を固めていたので、何度観ても飽きないどころか、いっそう味わい深い気持ちになる作品がたくさんあります。

新幹線大爆破
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昭和の名作ライブラリー 第36集  劇場版 事件記者 コレクターズDVD <デジタルリマスター版>
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あの頃、俺たちは事件記者だった

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コメント 8

ヤマカゼ

この俳優さんいましたね。新幹線大爆破見た記憶あります。
by ヤマカゼ (2019-06-14 06:05) 

pn

一本気すぎかもしれないけど、その仕事に信念持ってる証ですね。俺には無理だなー(笑)
by pn (2019-06-14 06:14) 

なかちゃん

新幹線大爆破、この映画は知りませんでしたが、何やら『スピード』って映画と設定は似ているかもしれませんね。
左翼的な考えをお持ちだったかどうか分かりませんが、もしかしたらそういう目で敵役を見ていたからこそリアルに演じることが出来たのかな?なんて思います(^^)

by なかちゃん (2019-06-14 08:25) 

kohtyan

事件記者は、よく見ました。
懐かしい顔が並んでいます。
by kohtyan (2019-06-14 09:05) 

ヨッシーパパ

『新幹線大爆破』は、見たような気がしますが、その方は知りません。
by ヨッシーパパ (2019-06-14 10:11) 

末尾ルコ(アルベール)

永井智雄、宇津井健新幹線運転指令室長に退職を決意させた総局長・・・最近何十年かぶりに(笑)小林多喜二の小説を読んだのですが、当時の左翼の雰囲気が伝わってきて興味深かったです。昨今は「パヨク」などと小馬鹿にされがちですが、歴史的に左翼思想・運動がなければ自由や人権といった考え方も定着してなかった可能性が高く、その辺りの功績を無視してはいけませんね。現在は微妙ですが、かつては左関係の人たちに骨のあるタイプが多かったと思います。ただどうしても教条主義に陥る人も多かったですね。
「永井智雄」という名前は今回もまた知りませんで、まったくいつもお恥ずかしい限りです。それにしても『事件記者』というドラマは長く続いたのですね。『新幹線大爆破』は何度となく観ておりまして、しかもBSなどで放送すると、つい観たくなる作品ですね。観どころいっぱいでパワー溢れる映画です。

>当時の「大作」

そうなんです。大作を観に映画館へ行くときの祝祭感は尋常ではなかったですよね。二本立てのうちの一本はさほど観たいものでなくても観てしまい、案外そっちの方がおもしろかったりと、思えば豊かな経験でした。シネコンって、館内やシートは小ぎれいですが、メンタリティは実に貧しいですよね。

>いっそう味わい深い気持ちになる

これはもう、最近特に感じることです。昭和のある時期までの映画って、隅々まで愉しめるのです。それはもちろんセットにしてもロケにしても見事なまでに有機的な映像を作る監督やカメラマンの手腕であるし、脇に映っている俳優たちの豪華さ、存在感でもあります。いや本当に当時の映画と比べると、今の映画はスカスカなんです。これはやっぱり、主役が物足りないこともありますが、脇がそれ以上に貧相な事実も大きいです。「中身がない」ことは、映っただけですぐ分かりますからね。

・・・

耳かきという存在、そしてそれを使用する行為とういうものは多く格別に心地よい時間をもたらしますね。時に、(これ以上の快感はあり得ないのではないか・・・)と感じるほどの至福感をもたらします。そんな時はそれこそ止まらなくなるのですが、ある限度を超えると炎症を起こしてしまうことしばしばです。ここが痒みの難しさですね。大人になってからは無くなりましたが、子どもの頃にはよく耳だれのような感じになってしまいました。湿った耳垢が出るのですが、あの臭い、嗅ぎたくなったものです。と言いますか、耳ほりで出たら、必ず臭いを嗅いでました。嫌な臭いのはずなのに嗅ぎたくなるというのはつまり、好きな臭いということなのでしょうか(笑)。


さすがにこのところはコンビニ物は飽きてきました。どうしても手早く食べたいのでパン食が多いのですが、2回続くとご飯が食べたくなります。やはりわたしはフランス風(笑)だけれど日本人です。パンだけだと、どうも体の調子がイマイチになっているような気分になります。高知にはいくつかスーパーのチェーン店があるのですが、けっこう美味しいオリジナル弁当を作っている店もあり、現在は夕食によく利用しております。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-06-14 10:54) 

Take-Zee

こんにちは!
永井さん、後半は憎々しい悪役を
演じていましたね!

by Take-Zee (2019-06-14 14:01) 

ナベちはる

>『新幹線大爆破』は、当時2本立てが当たり前だった封切り映画で、1本立て相当の尺のある大作

作品に、相当なボリュームがあるというのを感じます。
by ナベちはる (2019-06-15 00:55) 

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