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加藤武、“余人をもって代えがたい”小心で早合点の小市民役 [懐かし映画・ドラマ]

加藤武、“余人を持って代えがたい”小心で早合点の小市民役

加藤武さん(1929年5月24日~2015年7月31日)の生まれた日です。文学座の俳優でしたが、テレビドラマや映画でも活躍。『仁義なき戦い』のタクシー会社の組長、金田一耕助シリーズでは「よしわかった」と早合点する警部、『釣りバカ日誌』の専務などを演じました。(画像は劇中より)



仁義なき戦い


仁義なき戦い・代理戦争
『仁義なき戦い 代理戦争』より

広島の2つの組の組長が、ともに神戸を本拠地とする大きな組の組長から舎弟盃をもらい、“神戸の戦い”の代理の戦いの意味合いが強くなった暴力団抗争が、かつてありました。

その当事者の手記をもとに、飯干晃一が上梓した『仁義なき戦い:広島やくざ・流血20年の記録』(サンケイ新聞社出版局)の映画化です。

加藤武は、『仁義なき戦い 代理戦争』(1973年)と、『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年)で、一方の組の組長役を演じています。

仁義なき戦い 代理戦争

正業は広島でも有数のタクシー会社の社長ですが、性格は優柔不断。

「いい人じゃ」「いい社長じゃ」という評判はあっても、「いい親分じゃ」という声はなかった、というエピソードがある人物ですが、盃のしきりたりも知らず、任侠の人間としての性根にも疑問符がつくふるまいを、加藤武がうまく演じています。

それにしても、裏社会のことが、実名で詳細に書かれた書籍として大変に価値があり、映画史的にもジャーナリズム史としても、特筆すべき作品だと思います。

金田一耕助シリーズ


私は全作見たわけではないのですが、毎回役職や役名が変わるものの、警察の捜査をする人で、早合点してしまう役でした。

よぉし、わかった!

「よぉし、わかった!」

というシーンは、テレビCMでも使われました。

目明しモノとして、“ハズす人”というのはお約束なのか、時代劇の捕物帳では、必ずといっていいほど冤罪をつくる岡っ引きが出てきますし、現代の刑事ドラマでも、藤田まことの『はぐれ刑事純情派』(1988年4月6日~2009年12月26日、東映/テレビ朝日)では、上司の刑事課長(島田順司)がいつも間違った推理をして署長(梅宮辰夫)に諌められていました。

釣りバカ日誌


『釣りバカ日誌』では、第3作目からラストまで専務役をつとめました。

釣りバカ日誌

舞台となった鈴木建設は、なぜか回によって役員や社員が時々交代するだけでなく、前田武彦のように専務役が次の回では別人物の常務役で出演するなど、限られた役以外は、演者の色をつけないようにしていました。

その中で、数少ない固定されたキャスティングの一人が、加藤武でした。

1度だけ、『釣りバカ日誌9』で、親友の北村和夫が別の名前の専務役を演じましたが、また次の回から加藤武専務に戻っていました。

シリーズものの重要な役どころを演じ続けたというのは、それだけ余人をもって代えがたい存在だったのでしょう。

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小沢昭一、北村和夫らとの出会い


加藤武の晩年の仕事は、親友小沢昭一の仕事を語ることもあったように思います。

2014年10月、松竹蒲田撮影所跡地であるアプリコで開催された第2回蒲田映画祭(シネパラ蒲田)では、スペシャルトークショーとして、『続・小沢昭一的こころの部屋…戦争っていやだ。平和で行こうよ』と題して、加藤武が蒲田出身の小沢昭一を語りましたが、2015年以降のテレビ、映画の出演歴がないところを見ると、これが俳優としての最後の仕事だったかもしれません。

続・小沢昭一的こころの部屋…戦争っていやだ。平和で行こうよ

小沢昭一は女塚、今の大田区西蒲田の写真館の息子で、隣町の池上出身のフランキー堺とは、麻布中学・高校の同級生でした。

そして、大学になると、フランキー堺は慶應義塾大学へ、小沢昭一は早稲田大学に進み、加藤武や北村和夫らと出会います。

加藤武は、大学卒業後、教員になりますが、在学中から研究生だった北村和夫に誘われて文学座へ。

その後、小沢昭一に誘われて、いったんは文学座をやめて、永六輔や山口崇らと芸能座を結団。

しかし、長続きせず劇団は解散し、加藤武は文学座に出戻ります。

杉村春子の文学座で、よく出戻りが許されたと思いますが、その上、晩年は文学座の代表にまで上り詰めています。

それはともかくとして、そのときのトークショーのテーマ「戦争っていやだ。平和でいこうよ。」は、反戦を標榜する俳優の小沢昭一を語る、文学座の加藤武らしいテーマでした。

加藤武さん出演作品で、印象に残るものはありますか。

仁義なき戦い 代理戦争
仁義なき戦い 代理戦争

犬神家の一族(1976)
犬神家の一族(1976)

昭和悪友伝 (1976年)

昭和悪友伝 (1976年)

  • 作者: 加藤 武
  • 出版社/メーカー: 話の特集
  • 発売日: 1976
  • メディア: -


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コメント 7

犬眉母

逆に小市民だから、演じるのが難しいのかもしれませんね。
by 犬眉母 (2019-05-24 02:24) 

末尾ルコ(アルベール)

加藤武、“余人をもって代えがたい”小心で早合点の小市民役・・・最近『獄門島』を久方ぶりに観たのですが、加藤武が画面に映るだけで嬉しくなりました。主役ではないけれど、勢いと色気を感じました。演出の妙もあったのでしょうが、加藤武を観るだけでも愉しめるシリーズでしたね。
あらためてプロフィールを見てみると、黒澤明作品への出演が多くて驚きます。と言いますか、黒澤作品以外でも多くの邦画史上重要な作品へ出演しているのですね。もちろん大きな役ではないのでしょうが、このフィルモグラフィーは凄いです。『にごりえ』『幕末太陽傳』『豚と軍艦』『キューポラのある街』『白い巨塔』『月曜日のユカ』『けんかえれじい』『日本のいちばん長い日』『黒部の太陽』、さらに『仁義なき戦い』シリーズですからね。ちょっとこれは、(どうなっているんだろう)と首をかしげてしまうような凄い出演歴です。これだけの作品群にすべて出演しているとか、加藤武以外いないのではないでしょうか。これはわたしのとっては大きな発見でした。とは言えこれら作品中の加藤武を意識したことはありません。今後も繰り返し鑑賞するであろう作品が多く、ぜひ加藤武を探してみたいと思います。
『仁義なき戦い』シリーズもいろいろ再鑑賞したいと思っているところです。もちろん概ね観てはおりますが、もう一つその価値が分かりかねていたのです。最近また同シリーズについての批評を読んだり、ラジオ番組でそのおもしろさについて語られていたのを聴いたりと、がぜん関心が増しておるところです。

・・・

>夜勤などは人手はギリギリだった

そうなのですよね。だから母が転倒リスクが高いことは病院側も重々分かっているわけですが、どうしても目が行き届かない時間ができてしまいます。結局現在生じている転倒リスクの問題は、母が理性よりも感情が先走るタイプであるところに根本的原因があるのだと思います。ある意味、自己中心的な性格でもありますね。「遠慮してナースコールを押さない」というのではなく、慣れないから押さないし、それ以上にトラブルを起こすのが詰所全体の業務負担を大きくしていることもまったく理解できておりません。ただそのような性格のままずっと生きてきたわけですし、今更「変えよう!」でもないですから、いいところも一杯ある母の性格を受け止めつつ、できることは何でもしていこうと考えております。それにしても本当にちょっと気の持ちようを変えてくれるだけで転倒リスクはゼロに近づけられるのにと、その辺りが辛いところです。

>人の命のはかなさを知らされるそうです。

病院とはつくづく凄い場所だと痛感しております。こうした業務を死度ととして毎日やっている人たち、もちろん技量や性格は千差万別なのでしょうが、やはり敬意の念は深まります。

お話まったく違いますが、丸山穂高とか長谷川豊とか、日本維新の会って何なのでしょうね。長谷川豊はまだ当選はしてなかったですが、このような人間であることはとうの昔から分かっていたはずなのに。でもこれは維新の会だけの問題ではないですね。現在の政治状況には背筋が寒くなります。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-05-24 03:15) 

ヤマカゼ

金田一シリーズ見ていました。味わいのある役をこなしていましたね。
by ヤマカゼ (2019-05-24 06:13) 

pn

子供の頃金田一シリーズ見てたけど、同じ人なのに違う役って気付いた時はちょっと感動した(笑)。
毎回最初は金田一を煙たがって最後は和解のパターンなので2作目?で警部が出てきた時知り合い感が無かったので最初はなんで?と思った記憶があります。
by pn (2019-05-24 06:17) 

kohtyan

加藤武は、釣りバカ日誌の印象が強いです。
by kohtyan (2019-05-24 17:26) 

Take-Zee

こんにちは!
とても良い声の俳優さんでしたね。
飛馬のお父さんだったかしら("^ω^)・・・
by Take-Zee (2019-05-24 17:49) 

ナベちはる

>毎回役職や役名が変わるものの、警察の捜査をする人で、早合点してしまう役

加藤さんが、「シリーズに欠かせないようなポジション」にピッタリとハマっていたのですね。

by ナベちはる (2019-05-25 01:03) 

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