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父子草(1967年、東宝・宝塚映画)生きた英霊を描く昭和エレジー [懐かし映画・ドラマ]

浜村純

父子草(1967年、東宝・宝塚映画/東宝)を昨年5月18日のブログでご紹介しましたが、今日が生まれた日である浜村純さん(1906年2月7日~1995年6月21日)の出演作品でもあるので、『祭りの準備』とともにご紹介します。(画像は劇中より)



このブログでは、大きな役、決定的な代表作がなくても、映画やドラマに長年出演した“名端役”をご紹介してきましたが、浜村純さんはその典型ではないかと思います。

浜村純
『祭りの準備』より

Wikiによると、出演映画は約300本に上るそうですが、セリフもほとんどない1~2シーン程度の出演も多数あるのに存在感は十分。

今日ご紹介する2作品などはその象徴ですが、70歳過ぎても女性を妊娠させてしまう役など個性的な役柄が多く、痩身でギョロリとした眼光が画面いっぱいに動き回る“怪演”ぶりが、印象に残るのだろうとおもいます。

父子草


父子草は、1967年の東宝・宝塚映画制作で、もちろん東宝の封切り。

木下恵介脚本、丸山誠治監督のコンビで、音楽はこれまた「もちろん」木下忠司です。

舞台は、地元に詳しいマニアのブログによると、阪急石橋駅前の新御堂筋陸橋下、だそうです。
http://www.geocities.jp/hadasamu/diary1212.html

父子草.jpg

私は、その場所を全くわかりません。

東京人の悪い癖で、ロケ地というと、風光明媚なところ以外は、東京のどこかだろうと思ってしまうのです。

子供の頃は、てっきり日比谷線の北千住辺りだと思っていました。

それはともかくとして、その陸橋下にあるおでんの屋台に、ふらりとやってきた労働者が渥美清。

おかみさんが淡路恵子。

受験に失敗して、守衛のアルバイトをしながらその屋台に、ご飯持ち込みで食事をしていくのが石立鉄男です。

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酔った勢いで絡んだことがきっかけで、石立鉄男に関心を抱く渥美清。

石立鉄男が、働きながら浪人生活を送っているのを知って、経済的な援助をします。

赤の他人に、なぜそんなことをするのか。

第二次大戦が終わり、渥美清がシベリヤの捕虜生活を終え帰国したものの、父親(浜村純)しか迎えに来ませんでした。

渥美清がすでに戦死したと思った妻は、その弟と再婚してしまい、渥美清は“生きた英霊”になっていたのです。

渥美清は、妻と弟の生活を考え身をひきましたが、残してきた息子のことだけは心残りで、石立鉄男を自分の息子に見立てているのです。

実際にこういう話はあったそうですね。

昭和40年代ぐらいまでは、戦争にまつわる悲劇が映画やドラマにしばしば使われました。

浜村純が、渥美清を説得するのですが、渥美清(当時39歳)が全力で駆け出してバスに飛び乗ると、実年齢61歳の浜村純が、バスを追いかけて乗せてもらうという体力勝負のシーンがあります。

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映画は、何度もリハーサルがあるだけでなく、3台のカメラで同時に撮るテレビドラマと違い、1台のカメラで同じシーンを違う角度から何度も撮るので、このシーンだけでも、浜村純は相当な運動量だったと思います。

石立鉄男は、星由里子という恋人がいたのですが、

父子草06.mp4_000215715.png

彼女の実家が事業に失敗したため、支えは渥美清だけになりますが、それでも最後に大学に合格します。

ありふれた結末ですが、コメントを見るとやはり評価が高いですね。

>故渥美清主演の隠れた名作

>さすが木下恵介氏の脚本です。もう泣けて泣けて、淡路恵子さんの演技も良いし、渥美清さんがの演技も最高に良かったです。若い星由里子さんも見れました。阪急石橋駅周辺に45年前に住んでいました。そこがロケ地とは嬉しいです。アップ有難うございました。

>還ってきた英霊と待たされた花嫁。 若き日、このリバイバル映画でみっともなく大泣きに泣きました。相思相愛の夫婦が戦争という無惨に泣かされて翻弄されていった昭和のエレジーですよ。この若者は若き日の石立鉄男lさんです。  ぁも戦争さえ無ければ・・・・、戦後、日本が未だ貧しかった頃、意綾というほど聞かされたんです。・・・・戦争の本当の悲しさを・・どう伝えたらいいか、この作品は伝えてくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=T6eA_qEX6Q8 よりママ引用)

コメントをご紹介していいものかどうか迷いましたが……、とにかく昭和の名作のひとつです。

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祭りの準備


祭りの準備

祭りの準備』(1975年、ATG)も以前書きましたが、今回は浜村純の出番を中心にご紹介します。

脚本家中島丈博が、高知県中村市(現四万十市)時代の青春を書いた半自伝的作品といわれています。

銀行で働きながら、シナリオライターを夢見る主人公(江藤潤)ですが、周囲の性生活が奔放なこともあり、いつもモヤモヤしています。

東京で薬物中毒にされて脳が麻痺し、いつも徘徊している若い女性(桂木梨江)にムラムラっときた江藤潤は、夜中に家を抜け出し、浜辺で女性の上にのしかかり事を始めますが、途中で後ろから江藤潤の体を引き離し、自分が代わりに女性と事を始めたのが、江藤潤の祖父役である浜村純です。

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その後、女性は懐妊して浜村純と暮らしますが、出産後正気に戻り、浜村純から怖がって逃げるようになり、浜村純はショックで自殺してしまいます。

桂木梨江を追いかけて全力で走り回るさまは、

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当時71歳としては過酷な演技だったのではないかと思います。

その意味で浜村純は、アクション派バイプレーヤーと呼んでその功績を大いにたたえたいと思います。

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末尾ルコ(アルベール)

父子草(1967年、東宝・宝塚映画)生きた英霊を描く昭和エレジー・・・司会者で有名な人は、浜村淳なのですね。恥ずかしながら、混同してしまうことがありました。『父子草』は未見なのですが、90分足らずの作品、そしてこのキャスト・・・きっと濃密な内容の映画なのでしょうね。しかも若き日の石立鉄男。映画『愛の渇き』の石立鉄男は、ある意味衝撃的でした。子どもの頃慣れ親しんだ、カーリーヘアでコミカルな石立鉄男になる前の、しっかりした骨格で、野生を感じさせる「男」がそこにいたのです。『父子草』の石立鉄男は、このお写真で見たところ、ちょっと繊細な感じを醸し出しておりますね。顔立ちも端正で、とても後年、ぎょろ目になって笑いを誘ったりする姿は想像がつきません。力のある俳優は違いますね。
そしてご存知のように、このところ星由里子推しのわたしですが、考えてみればまだ、喜劇や怪獣映画の星由里子を中心に観ております。シリアス作品の星由里子もぜひ観てみたいですね。同時に、『父子草』のように戦争のもたらした悲劇を描く作品もなかなか作られなくなりました。作られたとしても、お涙頂戴に堕してしまいがちな昨今、今作のような映画はより貴重に感じられます。

『祭りの準備』・・・高知県民でありながら、この作品まだ観ておりませんが、黒木和雄監督なのですね。これは是非とも観てみたいものです。浜村純は71歳ということですが、若く見えます。現在とはまったく異なる雰囲気だったであろう中村市がどう描かれているかにも興味があります。40年前ですから、実際は平穏で素朴な人たちが多かったのではと想像いたしますが(笑)。それにしても・・・とまたなってしまいますが、こういう生々しい人間性を描く作品も今はお目にかからなくなりました。

昨日2回目の母の歯医者へ行ってきましたが、家から車で5分もかからない場所です。やはり近いのはいいですね。ブログにも書きましたが、最寄りの歯科医がここ10年くらいでグッと増えました。費用も、初診が縫合を含めて1800円くらいで、2回目はレントゲンなども含めて600円くらいでした。ずっと歯科へ行ってなかったのですが、意外と安いなという印象です。もちろん母は後期高齢者の保険証で受診しているのですが。
結局上下ともに新しい入れ歯を作ることになりました。あらためて驚いたのは、母がずっと、とうに使い物にならなくなっていた入れ歯を装着しっぱなしにしていたことで、摩耗して歯に当たる部分も無いも同然でした。当分は定期的に歯科医通いになります。
実は1回目の縫合の際、「血圧が高過ぎたら、ここではできないから、医療センターかどこかを紹介します」と言われていたのですが、医療センターとなると片道30分前後かかりますし、待ち時間も大変です。幸いなことに、その時じょじょに血圧が安定してきて(はじめは興奮状態だったので、高かったのです)、そこで処置してもらえました。これは歯科医通いがしばらく続くことを考えれば、大きな違いです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-02-07 03:14) 

pn

39歳でもバスのシーンはきつそうだ(^_^;)
by pn (2019-02-07 06:23) 

Rinko

父子草、観てみたいと思いました。
戦後の混沌とした時代を象徴するようですね・・・。
by Rinko (2019-02-07 07:41) 

むうぴょんこ

ホント・・・当時の世相は酷かっただろうけど・・・
その分、人情味があったよね・・・
それに比べて今の社会は・・・
他人を陥れ、切り捨てのし上がっていく=それが人生の成功だ・・・的な感じで・・・
みんなで助け合って生きていく事を美徳とした日本人はどこに行っちゃったんでしょ(泣)
ホント・・・クマったもんだ!!
by むうぴょんこ (2019-02-07 09:42) 

えくりぷす

『父子草』こんな隠れた名作があったのですね。
『男はつらいよ』が始まる前の作品ですか。渥美清も寅さん役が有名になり過ぎたので、以降は『父子草』で見せたような役ができにくくなったのだろうな、と想像してしまいます。
浜村純(私も司会者の浜村淳と一瞬混同しました(;^_^A)は、なんとなくブレーク前の出川哲朗を連想させます。彼も長年レギュラー番組は1本もないのに、ずっと第一線でやってきましたので…。
by えくりぷす (2019-02-07 10:00) 

チナリ

こんにちは。

観たことがなくても、名前は知っているので、そうそうたる出演者の方々と思います。

写真を見ると時代を感じますが、最近のキレイ過ぎる撮影の仕方よりも味があるので、昔の映画は好きですね。

ただ、ここ数年、まともに観た映画がないのですが・・・。

by チナリ (2019-02-07 10:31) 

なかちゃん

父子草、是非観てみたくなりました。
もしかしたらボクが渥美清さんのファン、というか、寅さんのファンだからかもしれませんね。

by なかちゃん (2019-02-07 12:04) 

扶侶夢

浜村純さんは三国連太郎にも匹敵する名優で素晴らしいバイプレーヤーだったと思います。私が子供の頃に衝撃を受けて印象に残っているのは『野火』(昭和34年)での人糞を食べる演技でした。
by 扶侶夢 (2019-02-07 12:34) 

ナベちはる

『父子草』、隠れているのが勿体ないぐらいの名作のようですね…
by ナベちはる (2019-02-08 00:49) 

そらへい

「祭りの準備」映画館で見ましたね。
青春時代のモヤモヤした感じと、旅立つ前の若者を描いた
良い作品だったと思います。
竹下景子さんも出ていたと思います。
浜村淳さんの老人の狂気のようなもの凄かったです
桂木梨江演じる女性の入浴で
身体を洗ってやるシーン
若い私には刺激的でした。
by そらへい (2019-02-16 19:56) 

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