八波むと志、トリオのユニットで“ビジネスモデル”を確立した男 [懐かし映画・ドラマ]
八波むと志さん(はっぱ むとし、1926年12月1日~1964年1月9日)の命日です。脱線トリオという喜劇役者のユニットで知られていますが、喜劇俳優としても有望視されていました。これまで、このブログでご紹介したことのある昭和の喜劇邦画にも何本か出演しているので、改めて振り返ってみたいと思います。
脱線トリオ
八波むと志は、森川信の一座で芸能界デビュー。
森川信というのは、『男はつらいよ』の初代おいちゃんです。
Google検索画面より
その後、由利徹、南利明と、喜劇俳優同士のユニットを組んで、「脱線トリオ」として売り出しました。
Google検索画面より
私は残念ながら、リアルタイムでその活躍を見たことがないのですが、由利徹が若い八波むと志のスラップスティックの才能に嫉妬した、という話も聞いたことがあります。
当時、世間に名前が知られた「トリオ」ですが、トリオ漫才も含めると、私が聞いたことある人たちは、ざっと以下のとおりです。
脱線トリオ(1956年~1961年)由利徹、南利明、八波むと志、(佐山俊二)
おとぼけガイズ(1956年~)東けんじ、三波伸介、玉川良一
かしまし娘(1956年~1981年)正司歌江、正司照枝、正司花江
スリーポケッツ(1959年~?)渥美清、関敬六、谷幹一、(海野かつを)
ボケナストリオ(1960年~?)渥美清、平凡太郎、谷村昌彦
漫画トリオ(1960年~1968年)横山ノック、横山フック(青芝フック)、横山パンチ(上岡龍太郎)
てんぷくトリオ(1961年~1973年)三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗
トリオ・ザ・スカイライン(1964年~1971年)東八郎、小島三児、原田健二
レッツゴー三匹(1968年~2014年)レッツゴーじゅん、正児、長作
喜劇俳優のユニットとしては、やはり脱線トリオが先駆的な役割を果たしました。
トリオ漫才の人たちは、本来トリオでナンボだったのですが、脱線トリオをモデルにして、ピンで仕事をしたり、トリオ解散以後は喜劇役者として活路を見出したりしました。。
その意味で、八波むと志は早逝したため実働期間こそ短かったですが、その仕事ぶりは芸能界の“ビジネスモデル”になったのではないかとおもいます。
八波むと志が亡くなってからは、佐山俊二が入りましたが、八波むと志がいなくなったことでユニットとしての人気は失速しており、間もなく解散したようです。
脱線三銃士(1958年、新東宝)
昔の新東宝映画ですが、脱線トリオとして出演している貴重な作品です。
『脱線三銃士』は、八波むと志、由利徹、南利明が、食堂の娘(観崎きよ子)に“お熱”となり、
「自衛隊の隊長さんが好き」という彼女の話を聞いて、抜け駆けしたつもりで3人とも自衛隊に入隊します。
ところが、娘が話したのは「理想」ではなく「現実」で、実はもう隊長(丹波哲郎)と付き合っていた、という他愛ないオチで終わる44分間の映画です。
3人に見せびらかしてドヤ顔の丹波哲郎とがっくり3人組
新東宝は、このようなB級映画(短期間撮影、低予算、上映時間限定)の宝庫なので、機会を見つけてまたご紹介したいと思います。
サラリーマン忠臣蔵(1960年、東宝)続サラリーマン忠臣蔵(1961年、東宝)
そういえば、昨年の年末は、『忠臣蔵』の映画やドラマはどこかの局で放送されたのでしょうか。
『サラリーマン忠臣蔵』『続サラリーマン忠臣蔵』は、歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』を、役名だけでなくビジネスシーンも東宝映画お得意の「サラリーマンもの」に翻案したストーリーです。
八波むと志は、森繁久彌社長についていく若手社員の一人ですが、他の俳優がまだ未完成なので、ボケ役を受け持っています。
左から、お尻を向けているのが、お姐ちゃんシリーズに出ていた中島そのみ、男性社員は、藤木悠、江原達怡、八波むと志、児玉清です。
左から二番目は夏木陽介です。
みんな東宝ニューフェースから入ってきた期待の若い俳優ですが、彼らを頭一つリードする重い役どころだったわけです。
社長道中記(1961年、東宝)
『社長道中記』は、森繁久彌社長シリーズの第10作目です。(全33作)
森繁久彌社長が出張時、小林桂樹秘書の隣の妙齢の女性(飛鳥みさ子)目当てに席を替えてもらうものの、女性は祖母(飯田蝶子)の代わりに席をとっていただけだったというシーンは先月、ご紹介しました。
その後、森繁久彌社長が出張先でマッサージを頼みましたが、夫人(久慈あさみ)にお目付け役を頼まれていた小林桂樹秘書は、マッサージ師が女性(塩沢とき)であることを知ると、別の男性マッサージ師(八波むと志)に差し替え、女性は自分が引き受けます。
八波むと志は「元プロレスラー」と称して、森繁久彌の体をボキボキならします。
一方、小林桂樹も、塩沢ときの荒っぽいマッサージに閉口するというオチもあります。
『東宝昭和の爆笑喜劇Vol.25』より。真ん中は森繁久彌。右端は八波むと志
息子は八波一起
しかし、1964年、期待されながらも、自動車を運転中の事故で亡くなりました(37歳没)
その後は、息子の八波一起が、テレビの司会やリポーターで活躍しています。
「八波むと志の息子」といっても、もうほとんどの人はピンとこないかもしれません。
いずれにしても、八波むと志の太く短い喜劇俳優生活については、引き続き関心を持っていこうととおもっています。
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八波むと志、トリオのユニットで“ビジネスモデル”を確立した男・・・「脱線トリオ」という名前は、「日本芸能史」を扱った記事などで目にしたくらいで、どのような人たちかなどはまったく存じませんでした。そう言えばわたしはエノケンも観たことないんです。
トリオの名前もおもしろいですね。おとぼけガイズというのもなかなかですが、ボケナストリオという身も蓋もないネーミングは捨て難いですね。
『忠臣蔵』もこのところ作られませんね。討ち入りという事件自体は、いろんな評価があってとても興味深いものですよね。それをどう描くかが問題なのですが、あまりお涙頂戴になるのは好みではありませんでした。かなり以前の年末時代劇ドラマで風間杜夫が浅野内匠頭を演じた作品がありましたが、あの大芝居と号泣は、(ある意味)すごかったです。時代劇自体が作られなくなってますが、このままでは国民が共有していたいろんな歴史エピソードも語られなる可能性がありますよね。
『社長道中記』のマッサージシーンは実におもしろかったです。新幹線のギャグシーンもそうですが、閉鎖的な空間で、しかも登場人物をさほど動かすことなく、おもしろい笑いを生み出しているセンスのよさを感じます。
八波一起の朝のワイドショーはよく目にしておりました。けっこうアクが強かった印象です。
>宗教というものを根本的にわかってないのでは
おそらく日本で「クリスチャン」となっている人たちの中のかなりの割合で、その教義を理解してない人たちがいるのだと思います。そもそもキリスト教だけでなく、イスラム教を含めた一神教の教義は一般日本人が容易に理解できるものではなく、日本のクリスチャンの多くは、キリスト教と神道、そして仏教を都合よく混在させた思考を育てているのだと思います。日本のキリスト教会も不況のためにはそちらの方が手っ取り早いので、ある程度は分かった上で黙認している部分はあるのではと。わたしは10代後半くらいから、キリスト教を含めていろいろな宗教関係の書籍を読んだのですが、そこから思い返すと、わたしの祖父母もかなり曖昧なクリスチャンだったようです。
縁起や運についてのお話を少し続けさせていただきますと、幼少の頃からそうしたものに囚われることはほとんどなかったわたしのあのですが、それでも「まったく関係ない」とはいかず、例えば1月7日ですが、夕食はカレーということで既に作ってしまった後で、七草がゆの日だと思い出しました。例年1月7日には夕食に七草がゆを食べておりまして、しかし今年は忘れてたのですね。別に次の日にするとかもできたのですが、どうも7日にしなければしっくりこない感覚があり、急遽当日の朝食に七草がゆを作りました。たいしたことではないですが、わたしもそういうのが「ゼロ」ではありませんね。
>『喝采』における婚約者ギミックを広めた人
そうなのですか!あの穏やかな表情の裏(笑)に、そのような才覚があったのですね。やはりギミックをおもしろがる大人のディープな感性があったのですね。ギミックも、やる人が幼稚では成立しませんから。
>由紀さおりは最初の結婚をしていたんです
へえ~。21歳であの成熟し、耽美な雰囲気ですが、新妻(←昭和ボキャブラリー 笑)、あるいは若妻(←昭和ボキャブラリー再び 笑)だったのですね。この時点で大スターだったわけですが、時代の波を乗り越えて、現在の堂々たる姿、そして歌唱の充実ぶり・・・尊敬すべき一人だと思います。また、トークがいいのです、今の由紀さおり。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2019-01-09 03:10)
脱線トリオにてんぷくトリオ懐かしい名前ですね。
by ヤマカゼ (2019-01-09 06:29)
出されているトリオで知っているのは、かしまし娘とてんぷくトリオとレッツゴー三匹くらいですね。
メンバーの方個人としては他にもいらっしゃいますが、そういう方たちのトリオとしての芸を観てみたいです。
by なかちゃん (2019-01-09 08:48)
こんにちは!
昔の俳優の名前は面白いですね。
8X8=64ですものね。
他にも3X3=9で山茶花究さん。
字が読めないーー>南都ゆうじさん。
by Take-Zee (2019-01-09 08:56)
はっぱと読むのかぁ、やなみだと思ってた。もちろんせがれの方の話ですが(^_^;)
by pn (2019-01-09 09:43)
浅草演芸ホールの松倉氏の本を読んだことがあります。
八波むと志については、なんて書いてあったかな、探してみようと思います。
>そういえば、昨年の年末は、『忠臣蔵』の映画やドラマはどこかの局で放送されたのでしょうか。
BSでの再放送は各局でけっこうやってましたよ。花の巻・雪の巻とか。私はBS日テレの年末時代劇の再放送の後編だけをちょっと目にしたら、止まらなくなって全部見てしまいました。オーソドックスな忠臣蔵でした。
『忠臣蔵』は、オールスターを揃えたり、セットも大掛かりで作るのにたいへんお金がかかるそうで、『忠臣蔵』を作れるというのは一種のステータスだと聞きました。
費用のこともあって、最近はあまり作られなくなっているように思います。
by えくりぷす (2019-01-09 10:02)
こんにちは。
今回の記事では「てんぷくトリオ」と「レッツゴー三匹」しか知らず、その二つのコンビも実際に見たことがなくて、名前を聞いたことがるくらいでした。
息子さんも知らないのですが、何の番組に出演されているのでしょうか。
by チナリ (2019-01-09 10:17)
新年あけましておめでとうございます
早々に拙ブログへのお越し、まことにありがとうございます!
今年もよろしくお願いします
by MONSTER ZERO (2019-01-09 10:32)
名前は存じ上げてます~
懐かしいトリオ名ですねぇ
へ~日曜日には良くテレビで懐かしい
昔の映画放映されて
いたから~当たり前のように
観ていました ご子息さんだったんだねっ
娯楽という言葉が当てはまる
面白さだったと思います(^^♪
なんかぁ懐かしいです
昭和がドンドン遠ざかって行きますねぇ
by みうさぎ (2019-01-09 12:55)
脱線トリオは知っていましたが、この方の名前は初耳です。
by ヨッシーパパ (2019-01-09 19:03)
八波むと志さん
私が中学生の頃亡くなっているのですが
子供心にも覚えています。
この方と、南伸介さんの早逝は
ちょっとショックでした。
by そらへい (2019-01-09 20:33)
遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
by 沖田 翼 (2019-01-09 21:13)
トリオと聞くと漫才が真っ先に出てくるのですが、俳優においてもそういうことをやっていたということに驚きました。
中には今でもご健在の方もいらっしゃって、なおさらです。
by ナベちはる (2019-01-10 00:32)
大変遅くなりましたが
今年もよろしくお願いいたします。
by 美美 (2019-01-10 18:47)