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青木雄二、マチ金(消費者金融)描き5億稼いだ『ナニワ金融道』 [懐かし映画・ドラマ]

青木雄二、マチ金(消費者金融)描き5億稼いだ『ナニワ金融道』

青木雄二氏(あおきゆうじ、1945年6月9日~2003年9月5日)の祥月命日です。『ナニワ金融道』という金融業界を描いたマンガは、売上が1000万部を突破し、5億円稼いだといいます。大金持ちのマルクス主義者として、漫画家引退後もエッセイや講演活動を行っていました。



現在も、『ザ・ナニワ金融道』(グランドジャンプ)というマンガは連載されていますね。

青木雄二氏はとっくに亡くなっているのに、変だなと最初はおもいました。

でもよく見ると、作者は、大きな文字で「青木雄二」と書かれ、その下に小さく「プロダクション」と書いていますね(笑)




青木雄二氏の『ナニワ金融道』。ストーリーを簡単に振り返りますと……

零細工場の工員・灰原達之は、社長に頼まれて自分の健康保険証を使い、サラ金から金を借りて資金繰りに協力しましたが、その甲斐もなく会社は不渡りを出して倒産してしまいました。

就活をしようにも、サラ金から“つまんだ”ことが明らかになると不採用に。

やっと雇ってもらえたのが、帝国金融というマチ金(中小規模消費者金融)でした。

灰原達之は葛藤しながらも、金融屋として生きることを決意。

困って借りにきた人を、会社の利益のために身ぐるみ剥がし、女性は風俗に沈めていきます。

『ナニワ金融道』が大ヒットしたのは、ネットのコンテンツの極意にも通じる、面白くてタメになってエロ、という3拍子が揃い、さらに切なさが加わったからだとおもいます。

1.闇金融というそれまで描かれたことのなかった世界が舞台だったこと。
2.『仁義なき戦い』のような“様式美”として極端な表現の大阪弁が使われマチ金の世界の独自性が演出されていたこと(会話の中にいちいち「お前ダボか」などと入れるなど)
3.設定や登場人物名がエロと皮肉で貫かれていること
4.灰原達之は人格的には極悪人ではないけど葛藤の末仕事を遂行していること

たとえば、街金から借りることを「つまむ」と表現したり、地上げの方法や逆にそれを阻止する方法を描いたりマンガは、『ナニワ金融道』が初めてでしょう。

登場人物の命名は、「肉欲棒太郎(にくよくぼうたろう)」「銭田掏二朗(せんだずりじろう)」「浦切平基(うらぎりへいき)」など。

フグの店の屋号は「痙攣(けいれん)屋」

ビジネスホテルの名は「カラ出張」などとつけています。

クスッと笑ってしまいますよね。

その他、ここでは書けない卑猥な言葉も出てくるし、登場人物の背広の柄がそれで描かれていたりするし。

そういうちょっとした面白さも、ボディーブローのように作品評価には反映されますね。

マルクス主義者だからあそこまで描けた


堀江貴文氏が、『ナニワ金融道』を評価しながらも、だけど惜しむらくは青木雄二氏がマルクス主義者である、ということを『稼ぐが勝ち』という自著で書いています。

要するに、もし青木雄二氏が資本主義のファンだったら、『ナニワ金融道』はさらに完成度の高い作品になったのではないか、ということらしいのですが、私はその意見に全く賛成していません。

堀江貴文氏は、同作に対して、手形や地上げの仕組みや方法など、お金を転がすうわべのテクニックの部分しか興味がないから、その程度の発想になるのです。

『ナニワ金融道』で青木雄二氏は、お金に翻弄される「人」を描きたかったのです。

そして、「そこまで描くか」といいたくなるほど、えげつなく人の転落を描きました。

つまり、私がつねづね書いている、「作家は書くことをためらってしまうようなことでも書ききってしまう、現実に埋没しない強靭な精神力が必要」ということが、ここでもいえるわけです。

青木雄二氏は、マルクス主義者だからこそ、“資本主義の闇”に泣く人々を容赦なく描けたのです。

もし青木雄二氏が資本主義のファンだったら、資本主義に不都合なことは描き控えていたかもしれません。

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緒形拳も出演したドラマ版『ナニワ金融道』


『ナニワ金融道』は単発で6度、テレビドラマ化(1996年2月16日~2005年1月3日、フジテレビ)されさました。

ドラマ『ナニワ金融道』


主人公の灰原達之を中居正広、帝国金融社長・金畑金三を緒形拳、灰原の教育係である桑田澄男を小林薫が演じています。

原作のいくつかの話を組み合わせてひとつのストーリーを構成していました。

登場人物は、少し原作とイメージは違うのですが、当時、高倉健とともに日本映画のトップ俳優にのぼりつめた緒形拳が出演するなど、話題性は高く、作品としての評価もまずまずだったと記憶しています。

平成のドラマではあるのですが、今見直してみると、たとえばスマホがないなど、やや「古き良き」の雰囲気がありますね。

DVDで発売されているので、書籍とともに、鑑賞されてもいいとおもいます。

青木雄二氏の『ナニワ金融道』。覚えてらっしゃいますか。

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末尾ルコ(アルベール)

青木雄二、マチ金(消費者金融)描き5億稼いだ『ナニワ金融道』・・・タイトルは知っていても、読んだことのなかった漫画の一つです。しかしおもしろそうですね。今度見かけたらチェックしてみます。
漫画って、現在は高級感のある作品やアートに接近した作品などが人気ですが、チープでお下劣なおもしろさを忘れてはならないジャンルだと思いますし、「お下劣」な中でのクオリティの高い漫画はわたしも大好きです(と言っても、漫画を読む時間はあまりないですが)。例えばかつてであれば、山上たつひこのお下劣ナンセンス漫画が大好きでした。
そしておっしゃるように、「何となく知りたいと思っていても、なかなかまとまって知る機会のなかった知識」が分かりやすく詰め込まれていたら、作品に対する興味はより増すことになりますね。同作品の「お金」ももちろんですし、「食べ物」漫画にヒット作が多いのも、「ほとんどの人の関心事だけれど、案外纏まった知識がない」ポイントを突いているからでしょうね。

>、「肉欲棒太郎(にくよくぼうたろう)」「銭田掏二朗(せんだずりじろう)」「浦切平基(うらぎりへいき)」など。

そう言えば、『北斗の拳』はギャグ漫画としても有効なのですが、ウケるポイントの雑魚キャラクターの造形や名前(ヌメリ、ウサ、ゴンズ、「通称でかいババァ」)は忘れられないものがあります。そういうのはやり過ぎてもシラケてしまいますし、かなりのセンスが要求されます。

>うわべのテクニックの部分しか興味がないから

現実の人間にはほとんど興味のないホリエモンらしい感想ですね。そして「左的」な要素はすべて否定すればいいと単純に信じている人が多いのにも困ります。

最盛期の緒形拳のギトギトした迫力は凄いものがありました。残念ながら緒形拳は亡くなってしまいましたが、小林薫も大好きな俳優で、このところ大活躍しているのは嬉しい限りです。そう言えばNHKのドラマ宣伝で現在のショーケンを見かけましたが、かなり変わっちゃってます。その点、小林薫はいつまでも色気十分でカッコいいです。

台風21号は高知市よりやや東にずれた位置を通ったために、昼前後にかなりの強風が吹いていた以外はさほどの雨もなかったです。それんしても「超大型」台風なんていうのにはうんざりです。21号も最大瞬間風速が「60」の予想が出ていて、そんな風速に見舞われると一体どうなるんだと、冷や冷やものです。今回は関空が大変なことになっているようですし、関西地方では58以上の風速が記録されたようです。困ったものですね。

高知では交通安全協会の勧誘は、まず更新案内の葉書には一切そのことは載っておらず、「更新手数料」のみが掲載されております。そして現地で講習の前に手数料を支払うのですが、その時の受付がなぜか(笑)交通安全協会となっており、手数料を支払うとすぐに、「では交通安全協会への加入をお願いします」的な言い方で、いかにも義務のような雰囲気を漂わせながら声を掛けるというパターンです。その際、交通安全協会の組織や活動についての説明もありませんでしたし、おそらく「任意」という言葉はタブーに近いものではなかったかと思います。わたしもずっと、非常に心外に感じながら支払っておりました。これはもう完全に意図的な「騙し」を長年続けていたのと同様なのではないかと。わたしの場合、一円でも多く払いたくないジャンル(笑)の人間ですので、「交通安全協会費」の話が急に出てきた時の衝撃は大きかったものです。おそらく、「数年に一回の更新だから、前回のことは忘れている可能性が高い」という状況も意図的に利用していたのだと思います。現にわたしは毎回、(え!?)と驚いていたわけですから。ネットの普及で簡単に調べられ、「任意」という事実が広まったとも言われておりますが、これなんかはネットのメリットの一つですね。RUKO


by 末尾ルコ(アルベール) (2018-09-05 09:10) 

えくりぷす

青木雄二氏は58歳で亡くなったんですもんね。早かったです。『ナニワ金融道』は、ドラマや映画にもなったし、『カバチタレ』も常盤貴子主演でドラマになったわけで結構稼がれたのでしょう。
『ナニワ金融道』は、Kindle Unlimited以外にも、Yahoo!プレミアム会員でも全巻読めますので、ボチボチ読んでいます。
「マルクス主義者だからあそこまで描けた」といういっぷくさんのご意見には全くその通りだと思います。(私のホリエモン嫌いも影響していますが…)
by えくりぷす (2018-09-05 09:19) 

pn

銭田掏二朗、最高の名前だ(笑)
by pn (2018-09-05 10:00) 

hana2018

原作漫画の「ナニワ金融道」は全く知らないのですけれど、ドラマ化された「ナニワ金融道」は放送の度楽しく見ていました。
晩年の緒形拳は、それまで善人や英雄として主役を張っていたのと比べて、こうした悪人めいた役柄を楽しげに演じていた。俳優としての余裕が感じられました。
RUKOさんが書かれているように、番宣で目にしたショーケンの変貌ぶりには違和感を覚えた一人です。
ドラマ「ふぞろいの林檎たち」大河ドラマ出演「極悪がんぼ」。映画「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」のオトン役と…。土曜夜の「美の巨人たち」も彼の声なくしては成り立たない番組に思えます。
by hana2018 (2018-09-05 11:12) 

ヨッシーパパ

「ナニワ金融道」は、ドラマ化もされて、なかなか面白かったです。
by ヨッシーパパ (2018-09-05 18:56) 

旅爺さん

漫画はサザエさんのように筆者が亡くなっても
連載されてるのがありますね。
by 旅爺さん (2018-09-05 19:25) 

kiki

『ナニワ金融道』という題名だけで観ないかもです(笑)
食べず嫌いはあまりありませんが、
観ず嫌いは結構あります。
損をしているでしょうね(笑)
by kiki (2018-09-05 20:25) 

ナベちはる

名前は何度か聞いたことがありますが、漫画は見たことないです。
結構な頻度でやっていたとは思っていたのですが、6回やっていたのですね。
by ナベちはる (2018-09-06 00:34) 

yamatonosuke

このドラマの時の小林薫さんのスーツが好きです♪
by yamatonosuke (2018-09-06 02:00) 

Rinko

中居くんが出ていたものですね。
原作を読んでみたくなりました!
by Rinko (2018-09-06 07:50) 

beny

漫画でなくエッセイの方の本を買いました。身につまされる思いでした。シャープな方だと思われます。
by beny (2018-09-06 16:44) 

そらへい

青木雄二さんの講演を聞いて
その後の懇親会で少しお喋りしたことがあります。
遅い結婚をされた頃で、
結婚生活の難しさをこぼしておられたのが印象的でした。
飾り気のない人でしたね。
それからあまり時を経ずして亡くなられたような気がします。
by そらへい (2018-09-06 21:01) 

犬眉母

個人客なら、手形は使わないですよね。
消費者金融のことが、知りたかったのかな。
by 犬眉母 (2018-09-06 21:09) 

tyuuri

 単行本を発刊中に購読していました。今も全巻あります。
 人は金のことになると鬼になるとは、ある交通事故に巻き込まれれ、相手の保険会社の代理人(弁護士)のひどい仕打ち(「債務不存在確認請求訴訟」)を受けたことから、実感しました。同時に、弁護士という仕事は、依頼人のために働くので、正義の味方と考えていた自分が恥ずかしくなりました。
by tyuuri (2018-09-16 08:48) 

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