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川上哲治氏に感謝する広野功氏が語った“真実”とは? [スポーツ]

川上哲治氏が亡くなって1年あまり過ぎました。『週刊ポスト』(11月28日号)の連載「私だけが知る『巨人V9の真実』」に今回登場したのは広野功氏。中日や西鉄でレギュラークラスだったのに、巨人では代打の切り札でした。しかし、広野功氏は川上哲治監督に今も感謝しています。それはどうしてでしょうか。

記事は、V9(9年連続日本一)を果たした川上哲治監督率いる巨人について、在籍していた元選手が毎回当時を回顧する連載です。

当時の巨人は、川上哲治監督がマスコミに対して愛想が良くなかったため、マスコミは“哲のカーテン”などと揶揄して当時の巨人を悪く書きました。

それが、成績だけでなく、イメージに対する“アンチ”を作り上げましたが、実際はどうだったのかを在籍者にヒアリングしているわけです。

広野功氏は、慶応大学から中日→西鉄→巨人→中日と在籍。

代打逆転サヨナラ満塁本塁打を2本打った、プロ野球界唯一の人です。

引退後は、中日、西武、ロッテなどのコーチや二軍監督などをつとめました。

ただし、巨人時代はいわゆる外様で、現役引退してからは一切巨人とは関わっていないので、巨人に対していいイメージを抱いていないのかな、と私は思っていました。

が、今回の記事を読むと、決してそんなことはなく、とくに川上哲治監督に対する深い感謝の気持があらわれていました。

週刊ポスト・広野功

記事によると、一塁手だった広野功は、王貞治という絶対的なレギュラーがいる巨人だけは行きたくなかったのですが、トレードでやってきた3球団目が、“よりによって”巨人でした。

そんな心中を察するかのように、川上哲治監督は、広野功と腹を割って話してくれたそうです。
「複雑な思いで巨人に来たのだろうが、チームメートはみんないい奴だ。心を閉ざさず、悩み事があれば遠慮なく相談してくれ」といってくださった。そしてこう続けたんです。
「ウチには一塁に王がいるから、君をレギュラーでは使えない。しかし堀内からサヨナラ本塁打を打った君の勝負強さは十分心得ている。だから代打の切り札になってもらう。明日から山内一弘コーチ(この年から巨人入りしていた)を専属でつけよう」
 そこまで役割を明示し、丁寧に説明をしてくださった監督さんはいなかった。この人は凄い、この人のために代打で頑張ろうと思いましたね。
広野功はそれまでの5シーズン、すべて90試合以上に出場し、規定打席到達やオールスター出場経験もあるレギュラークラスの選手です。

それが、「代打で頑張ろう」と納得できたのは、川上監督が広野功のプライドを尊重したからではないでしょうか。

勝負のためなら非情なことを何でもするような書き方を当時のマスコミはしていましたが、実は選手との対話はちゃんとあったことを広野功は証言しているわけです。

そして、記事は、当時のチームの一体感が凄いことに驚いたとも書かれています。

そんな中で飛び出したのが、2本目の代打逆転サヨナラ満塁本塁打でした。(1本目は中日時代に巨人戦で打っています)

さらに、川上巨人がV9を決めた73年にも、広野功は星野仙一から、代打逆転満塁本塁打を放っています。

川上哲治は最後まで礼を尽くした


そんな大活躍をした広野功でしたが、V9の最後の年に戦力外通告を受けます。

原因は、中日の“報復の死球”による肋骨の骨折。怪我の影響で、シーズン終了まで1軍にカムバックできなかったそうです。

しかし、川上哲治監督は、広野功を最後まで気にかけます。

次の就職先のあっせんを自分から申し出、広野功が古巣・中日へのトレードを希望すると、親会社がライバルの球団への戦力外選手のトレードであるにもかかわらず、無償ではなく金銭トレード(200万円)にしてくれ、しかもそのお金を広野功に渡したというのです。

「お前は裏方としてオレの期待通りの働きをしてくれた。代打逆転満塁ホームランだけでなく、若い選手の手本にもなってくれた。ありがとう。あれはお前に対するご褒美だ。餞別だと思って受け取ってくれ」(記事より)

ウェブ掲示板2ちゃんねるでは、川上哲治氏のスレッドが長い間継続しています。

その中身は、川上哲治氏は選手には温かいがゆえに、彼らを守るためにマスコミには冷たかった、という意見が主流です。

ちなみに、長嶋茂雄氏は正反対であり、だから2人は合わなかった、とも書かれています。

これはあくまで意見ですから、これを読まれている方で、とくに長嶋ファンはまた別の意見もあるでしょう。

が、少なくとも、1980年に大事件となった長嶋茂雄監督解任について、川上哲治黒幕説は、さすがに誰もまともには取り上げていないようですね。

しかし、当時はそれを真に受けた国民、というか長嶋ファンのヒステリックな騒ぎ方が、なんともいや~な雰囲気を作り、後任の藤田元司監督はずいぶんやりにくかったと思います。

川上悪人論と両立しない広野功氏の体験をどうみるか


当時を知っている人の中には、川上哲治嫌いの人もいるでしょう。

ではその方々にお尋ねしたい。

その根拠はいったいなんですか?

あなた方、川上哲治さんの何をご存知なんですか。

どうせ、いつものようにマスコミ報道を鵜呑みにしているだけではないのですか。

もちろん、上記のことは広野功氏の体験に過ぎず、川上哲治さんが無謬ということではありません。

もとより、どのような理由で誰を好きになろうが嫌いになろうが、その人の自由です。

しかし、その理由が、一面的な(悪意の)報道のみによるものだとしたら、それは人間を知るという精神的にもっとも大切な営みにおいて、大いなる機会の損失とはいえないでしょうか。

人間には、いいところも悪いところもあります。

それを自分の価値観で判断してから評価しても遅くはないと思うのです。

たとえば、昔は嫌いな俳優だったのに、年をとってから出演作品を見たら評価が変わった、なんて経験ありませんか。

年をとって成長したことで、人間評価に幅ができて、その俳優や、演技をより深くみることができるようになったのでしょう。

いつも書いてますが、マスコミ報道なんて、別に“天の声”じゃないんだから、いちいちそんなものに右往左往することはないのです。

マスコミがことさら強調することは、真実だからではなく、マスコミ側にそうしなければならない理由があるからだろう、と勘ぐっておけば間違いないでしょう。

マスコミが悪役に仕立てあげた人びとが、本当に「悪い人」かどうかなんて怪しいものです。

マスコミだけではありません。

人間というのは誰であっても無謬ではなく、学習していく(発展していく)生き物なのですから、自分の今の考えが、絶対正しいと思いあがったりうぬぼれたりしないことです。

たとえ、その時点で論理的、物理的にそれ以外考えられないと思える持論であろうが、いつも“ひょっとしたら間違っているかもしれない”という、懐疑の余地を持つことが大切ではないでしょうか。

週刊ポスト 2014年 11/28号 [雑誌]

週刊ポスト 2014年 11/28号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/11/17
  • メディア: 雑誌


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