「あなたは知らないと思うけど……」。会話の中にそんな一言が入ることがあります。みなさんも使っていませんか。これ、どういう意味、いや、意図が含まれているのでしょうか。たぶん、使っている方はそれほど深い意味はないのかもしれませんが、無意識・無自覚な言葉ほど、その人の本音や人格が出る場合もあります。
「ボビンて知ってる? たぶん、知らないと思うけど……」
今日、妻がいつもの調子で話し始めたので、これまでは彼女のプライドを尊重し、黙っていた私は、ついに今日、知り合って以来初めて、その悪癖に注意をしました。
「見識ある人が聞いたら、そういうさかしらな話し方は軽蔑されるだけだからやめた方がいい」
以前から妻は、話をする時、「あなたは知らないかもしれないけど」とか、「○○って知ってる?」など、こちらの知識にアナはないか、自分が優位に立てるチャンスはないか、といわんばかりに、身構えたり探りを入れたり、こばかにしたりする物言いの癖がありました。
内容については、私が知っている場合もあれば知らないこともありますが、いずれにしても、大したことではないんですね。
そう思って、これまでは気になっても黙っていたのですが、いっこうに治らないので今回注意をしたのです。
「あなたは知らないと思うけど……」
こういう枕詞は今回に限らずよく聞きますが、会話につける狙いは何でしょうか。
言葉通り、相手が知らないと思うから教えようと思うのなら、そのことだけを伝えればいいでしょう。わざわざ「どうせ知らないかも」などと、憎まれ口を付ける必要はありません。
これを聞かされる相手はどう思うでしょう。
「知らないと思うんなら、はじめから話題にしなきゃいいだろう」
と、会話に対する熱意を失ってしまうかもしれません。
含むところあって、あえて挑発的な言葉を入れたいのならともかく、まともなコミュニケーションを行うなら、そんな一言は何の意義もないと思います。
妻はこれだけでなく、辞書を引けば出てくる比喩や言い回しを、一般的には使わない文脈で使うこともあります。
使い慣れてない言葉を無理に使うから、聞いていて違和感があるのです。
性格的には、私が私が、という自己顕示欲の強いタイプではないので、たぶんこうした妻の癖は、彼女のコンプレックスのあらわれではないかと思っています。
要するに、自分を知的に見せたいという気持ちが、夫婦間の会話にもあらわれるのかもしれません。
妻にかぎらず、島国根性の我が日本国民には、ありがちな話ですよね。
私はもともと、見栄や外聞や嫉妬といった、人間のドロドロした感情を好まない人間でしたが、3年前の火災ですべてを失い、今や、見栄を張ろうにもはりようがない、いよいよ掛け値なしで手元不如意のシンプルな人生を送らざるを得なくなりました。
そのような立場になると、人間に本当に必要なものは何か、その人間の価値はどこにあるのか、といったことを考えさせられるようになります。
思うに、本当に信用される人間というのは、自分を大きく見せようとしない人ではないでしょうか。
私がいつも心がけたいことは、
自慢しない
大風呂敷を広げない
さかしらに物を言わない
という3つです。
ただ、たとえば、何をもって自慢かというのはむずかしく、本人にそのつもりがなくても、相手がそう思うことはあります。
要は、伝えるべきことに直接繋がらない形容詞や枕詞は使わない、ということです。
もし、私がそれを使っているときは、悪意のコメントを書き込んだ閲覧者と戦っている最中の挑発と思ってください(笑)
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