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『会社物語 MEMORIES・OF・YOU』放送でハナ肇を思い出す [懐かし映画・ドラマ]

『会社物語 MEMORIES・OF・YOU』放送でハナ肇を思い出す

『会社物語 MEMORIES・OF・YOU』(1988年、松竹)という作品が、6月2日~6日まで連続で放送されると、日本映画専門チャンネルの公式サイトで発表されています。主演はハナ肇。クレージーキャッツのメンバー全員が出演する、いわば最後のクレージー映画です。

このブログではたびたび書いてきましたが、クレージーキャッツといえば、1955年に結成されたジャズバンドのグループです。正式なグループ名は、ハナ肇とクレージーキャッツ。

フジテレビが開局した時に始まった『おとなの漫画』(59年)という番組で名前が知られるようになり、『シャボン玉ホリデー』(日本テレビ)で、決定的な人気を得るようになったと言われています。

が、私は、『おとなの漫画』の頃はわかりません。

子供の頃はすでに、当時“ナベプロ帝国”といわれた渡辺プロダクションを支えた人気者でした。

映画は、東宝喜劇の黄金時代といわれた1960年代、いわゆる“東宝クレージー映画”に30本出演。

テレビも、いつも見ても出ていた記憶があります。もちろんそれは、すべての番組にでていたということではなく、我が家がクレージーキャッツの出演番組をよく見ていたということだと思いますが。

クレージーキャッツからは、スキャンダルやグループ内部のゴタゴタなどが聞こえず、また彼らの笑いは、萩本欽一いわく「浅草の笑い(従来の東京の笑い)ではない」。もちろん大阪の笑いとも違う、育ちのいいミュージシャン特有の、お洒落で実はシャイな、出演番組のタイトル通り「大人の漫画」の世界でした。

私の少年時代にとって、ジャイアント馬場のプロレスとクレージーキャッツの笑いは、まさに高度経済成長を象徴する、「明るく楽しい」晴れ晴れとした世界だったと思います。

その中でリーダーだったハナ肇は、グループとしては植木等や谷啓を前面に立て、ビジネスでは渡辺晋(渡辺プロの社長)を体を張って支えてきたと言われています。

30本制作された、いわゆる“東宝クレージー映画”は、植木等と谷啓以外、単独主役がいません。

ハナ肇はその当時、『馬鹿まるだし』(1964年、松竹)『なつかしい風来坊』(1966年、松竹)などで主役をつとめ、映画賞(ブルーリボン主演男優賞)も受賞していたすでに一枚看板の俳優でしたが、植木等や谷啓の才能と人気を尊重し、クレージー映画の中では助演に徹していました。

そのハナ肇が、グループ結成33年目にして、“31本目のクレージー映画”で初めて主演をはったのが、『会社物語 MEMORIES・OF・YOU』だったのです。

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これから放送するのでネタバレはご法度かもしれませんが、ストーリーは、商事会社のサラリーマンを30年以上つとめてきた中年社員(ハナ肇)が、かつてのバンド仲間を集める話です。

70年代後半から各自の活動が中心になったクレージーキャッツにとっては、久々にメンバー全員が集まりましたが、そうした現実とも重なるストーリーです。

ハナ肇は、この作品で23年ぶりにブルーリボン賞を受賞しました。

CSを視聴できる方にはぜひおすすめしたい作品です。

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興味深いハナ肇と山田洋次監督との関係


というわけで今日は、ハナ肇の付き人だった、なべおさみが、ハナ肇の看病を記録した『病室のシャボン玉ホリデーーハナ肇、最期の29日間』(文藝春秋)を読みました。

肝臓がんが原因で「余命1.75日」(2晩は持たないだろうという意味)といわれてから20日頑張ったハナ肇と、明治大学裏口入学問題で芸能界を離れていたため、かつての師匠のお世話に専念したなべおさみによる記録です。

細かい病状や具体的なお世話に関心のある方は、同書をお読みいただくとして、私が気になったのは、山田洋次監督と倍賞千恵子がお見舞いに来た件です。

なべおさみが山田洋次監督に、ハナ肇の病状を伝える手紙を書いて実現したそうですが、本来なら意識がないはずのハナ肇が、山田洋次監督に、「謝らなきゃならないと思っていた」と涙を流して語ったというのです。

なべおさみは、「大御所同士の葛藤」は自分には知る由もない、として何も書いていませんが、もともと山田洋次監督が世にでるきっかけは、『馬鹿まるだし』(1964年、松竹)などハナ肇主演の作品を撮ったことでした。

先に述べた、ハナ肇のブルーリボン賞初受賞も、山田洋次作品である『なつかしい風来坊』です。

にもかかわらず、山田洋次監督はハナ肇との関係を続けず、渥美清にシフト。『男はつらいよ』を国民的映画にしました。

人を束ねることに定評があり、多くの人に愛されていたハナ肇が、唯一敵愾心を抱いていたのが渥美清であるといわれます。

山田洋次監督とは反対に、放送作家の小林信彦氏は、ハナ肇らの人柄の方をとり、渥美清と袂を分かったともいわれています。

山田洋次監督を巡る“闇”は興味深いですが、そのハナ肇と渥美清が、ともに同じ病気で亡くなったのは何かの因縁でしょうか。

病室のシャボン玉ホリデー―ハナ肇、最期の29日間

病室のシャボン玉ホリデー―ハナ肇、最期の29日間

  • 作者: なべ おさみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 単行本


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