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『パパと呼ばないで』江守徹が語った“内田さん”降板の真相 [懐かし映画・ドラマ]

『パパと呼ばないで』が、チャンネルNECOで6月6日から始まりました。独身サラリーマンが、下町の下宿で亡くなった姉の娘を育てるというシチュエーション・コメディです。石立鉄男さんと杉田かおるが演じました。

40年前のドラマで、チャンネルNECOではすでに何度も放送されており、放送されるというニュース自体は「今更」と思われるかもしれません。

が、今月1日は石立鉄男さんの7回忌の祥月命日にあたるので、今回は放送を機に関連ドラマも含めて振り返ってみたいと思います。

パパと呼ばないで
「チャンネルNECO」より

それにしても、石立鉄男さんも7回忌。もうそんなにたつんですね。

『パパと呼ばないで』の制作会社はユニオン映画。日本クラウンと日本テレビの共同出資で作られた同社ですが、現場のスタッフは主に日活系の人たちであり、チャンネルNECOで放送されるのも日活つながりなのでしょう。

ユニオン映画は、石立鉄男のホームコメディーに始まり、萬屋錦之介や中村梅之介の時代劇、石立鉄男シリーズに陰りがみられると、それまで映画会社制作だった青春学園ドラマの制作も行っています。

『おひかえあそばせ』『気になる嫁さん』『パパと呼ばないで』『雑居時代』『水もれ甲介』『気まぐれ天使』『気まぐれ本格派』『子連れ狼』『伝七捕物帳』『俺たちの旅』『俺たちの祭』『青春ド真ん中』『ゆうひが丘の総理大臣』『あさひが丘の大統領』など、70年代の日本テレビにおけるゴールデンタイムの番組を次々制作していきました。

それらに共通して言えるのは、いずれも株の世界でいうところの、キャピタルゲイン型ではなく、インカムゲイン型の名作ばかりです。

つまり、オンエア時にバーンと視聴率を上げて世間の注目を集め、スポンサーや出演タレントの時価を上げるタイプではなく、再放送の繰り返しの中で、世代を超えてゆっくり時間をかけて評価が高まっていった番組なのです。

たとえば、冒頭の『パパと呼ばないで』は、水曜8時のゴールデンタイムに放送されていたのに、なんと当時の平均視聴率11%。今だったら週刊誌や夕刊紙で叩かれ、打ちきりを検討されているでしょう。

しかし、低予算の雨傘番組(野球中継が中止されたり野球がない期間につなぐ番組)であるために、大した期待もされないことが幸いしました。

『パパと呼ばないで』のもう一人の主役である杉田かおるの当時のギャラはたった1万円。ロケでは杉田かおるの自宅も使うという、何ともつましい制作現場でした。(杉田かおる著『すれっからし』小学館より)

そんな低予算の中でも、役者やスタッフたちは希望に燃えて質のいい番組を作ってきたために、放送終了後の再放送で火が付き、何度再放送しても飽きられず、それどころか番組を再評価される名作に仕上がったわけです。

『パパと呼ばないで』が世間に認知されることを証明したのが、竹中直人による石立鉄男のモネマネ(83年)ですが、本放送からなんと11年もたっていました。

視聴率11%の番組が、11年たってモノマネのネタになる。こんなことは今のドラマでは不可能だと思います。

テレビがつまらなくなったという昨今の視聴者の評価は、『パパと呼ばないで』のようなインカムゲイン型の番組が消滅したからだと私は思います。

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私は、子供のころ、衝撃を受けたものが3つあります。お笑いはコント55号、まんがは天才バカボン、そして、『パパと呼ばないで』など一連のユニオン映画製作のドラマです。

コント55号や天才バカボンは、もう火が付いたような爆発的な笑いのパワーが衝撃的でしたが、ユニオン映画のドラマの場合には、作品の質の高さとともに、その評価のされ方が教訓的でした。

「正義が勝つのは時間がかかる」というのは、私にとって同郷(同じ町在住)の先輩にあたる、森田健作千葉県知事の好きな言葉だそうですが、時間をかけて、人々の心を少しずつつかむというプロセスから、私は人生に必要な「忍耐」というものを教えてもらいました。

で、ここから先はかなりマニアックな話ですが、『パパと呼ばないで』では主人公、安武右京(石立鉄男)の同僚で内田さん(江守徹)が出演していました。

ところが、ドラマの終盤になると急に出演しなくなり、一部のマニアの間では、「杉田かおるとの不仲」が無責任に噂されたこともあります。

いくら今の杉田かおるがアレでも、子役を理由に降板することは考えにくいのですが、その件で私は2002年6月、江守徹にインタビューした際、その話をしたことがあります。

ー『パパと呼ばないで』のことでお伺いしたいのですが
江守徹 えーっ? うーん
ー内田さんとして出演されていましたね
江守徹 うん、いたねえ、内田さん。
ーそれがドラマ終盤、急に出演しなくなってしまったのですが、それはどうしてかと……
江守徹 内田さん。ずっと出てたのに、でなくなっちゃったんだ。そりゃ大変だ。
ー(笑)
江守徹 いや、もう30年も40年も前のドラマだから忘れちゃったよ。そりゃ、杉田(かおる)くんと番組で一緒になる時もあるけど、そのときは「やあ、杉田くん。大きくなったねえ」とかいうけど、別に(『パパと呼ばないで』の時の)話をするわけじゃないし。たぶん、別の仕事でスケジュールの調整がつかなかったんじゃない。


私の印象では、江守徹という人は、用心深くシャイでもサービス精神は旺盛な人なので、とくに隠しているという印象はなかったですね。

当時、大河ドラマ『国盗り物語』(NHK)に出演していたので、本人の話通り「別の仕事でスケジュールの調整がつかなかった」というのが真相ではないかな、と思います。

石立鉄男シリーズに限らず、萬屋錦之介の『長崎犯科帳』や中村梅之介の『伝七捕物帳』、中村雅俊の『ゆうひが丘の総理大臣』などユニオン映画の名作ドラマは、現在DVDボックスとして発売されています。

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