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デタラメ健康科学ー代替療法・製薬産業・メディアのウソ、医療をどうとらえるべきか [健康]

『デタラメ健康科学ー代替療法・製薬産業・メディアのウソ』(河出書房新社)という書籍が、いわゆる「ニセ科学批判」に関心のある人の間で注目されています。著者は、ベン・ゴールドエイカーというイギリスの著述家・医師・ジャーナリスト(梶山あゆみ訳)です。

デタラメ健康科学ー代替療法・製薬産業・メディアのウソ
「ニセ科学批判」というのは、科学的根拠のないのに科学的な装いで喧伝されている方法論や現象などを批判するものです。

デタラメ健康科学、というタイトルだけを見ると、いわゆる「ニセ科学批判」に燃えている人が書きそうな、民間療法をトンデモ扱いするものを連想するかもしれません。

が、この書籍はいささか趣旨が異なります。

たしかに、民間療法・代替療法と言われているものの中には、思い込みやインチキも紛れ込んでいます。

ですから、エビデンスがあると信じ込まされている人たちに、「実は医学的には認知されていない」と、その真実を明らかにすることは有用な情報です。

しかし、現実に代替療法が存在するのは、そこに様々な理由があるからです。医学的には証明できていなくても肯定できることはあるのです。つまり、「エビデンス」だけで判断するのは一面的です。

『デタラメ健康科学』の著者・ベン・ゴールドエイカー氏は現役の医師でもありますが、「ニセ科学」には「ためになる常識と医学ふうの突飛な思いつきが混在している」として、そのすべてを頭から否定はしていません。

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では同書の「デタラメ」批判のターゲットはどこにあるかというと、製薬会社やマスコミが、政治的、商業的なねらいで国民に一方的な情報をあたかも学問的なお墨付きのあるもののように宣伝して刷り込むことです。

つまり、医学的・科学的知識をもって、上から目線で一般の人々の「無知を正す」書ではなく、権力や資本といった一般の人々を支配する側が、「科学・医学」の権威を悪用して「デタラメ」を広めることを批判する内容になっています。

具体的に見ていくと、第1章では「デトックス」を、第2章で「ブレインジム」を、第3章で「高級な化粧品」を、第4章で「ホメオパシー」を俎上に載せています。

デトックスについては、「ありもしない生理的なプロセス」で、「そんなのは単に商品を売るために編み出されたアイデア」だが、もともと人間社会には宗教などで「浄化」の文化が存在する。「体にいい物を食べ、体に悪い習慣(酒を飲みすぎるなど)を避けること自体に文句があるわけではない」し、「五日間のデトックスをきっかけに野菜を食べることが習慣になるならとやかくいうつもりはない」と、「ためになる常識」としての面は評価しています。

ただ、「気に入らないのは、科学的根拠があるかのような仮面をかぶっていること。そしていかにも新しいものであるようなふりをしていること」といいます。

「高級な化粧品」については、皮膚は簡単に外の物質を通さない、とその美容面の効能は人体に影響を与えないことを指摘したうえでこう述べています。
それ以上に厄介なのは、この種の広告が怪しげな世界観を広めていることである。根拠に基づいて慎重に仮説を組みたてるのが科学なのに、彼らの考えによればそうではない。企業は世界中で巨額の広告予算をつぎ込み、複雑な名前の魔法の商品を引っさげて、科学とは理解不能の無意味なたわ言だといっているかのようなのだ。方程式と分子と、科学的に見える図表と、白衣を着た偉い人が訳知り顔で語る大ざっぱなコメントが科学であると。しかも、金儲けのためなら何もないところから科学モドキをひねり出しても許されるといわんばかりである。科学とはわけのわからないものであるという考えを彼らは懸命に売り、その主なターゲットになっているのが若い女性だ。科学界に悲しいほど少ないグループである。
科学が客観的、合理的に真実を求める行為なのに、儲け優先でその理性的方法論を踏みにじるものだ、と言っているわけです。

第5章では、プラセボ(偽薬)効果を取り上げていますが、「プラセボは正しく用いるのが肝心」と、その積極性にも着目しています。

第6章~第8章まではサプリメントについてですが、「何でも薬やサプリメントで解決しようとすることの弊害」や、「サプリメント業界に利用されるメディア」を批判しています。

以下、第9章が「製薬業界のだましの手口」、第10章が「メディアが科学をおとしめる」、第11章が「なぜ賢い人がばかなことを信じるのか」、第12章が「誤った数字が用いられることの恐ろしさ」、第13章が「メディアがありもしない健康不安をあおる」、第14章が「メディアが広めた新三種混合ワクチンのウソ」となっています。

わが国では、鳩山由紀夫首相の頃、すでに認知されている漢方薬を「仕分け」する一方で、医学的根拠が確立していない「統合」医療を保険適用する話が出ました。それ以前に健康増進法というものが施行され、健康は自己責任で、という心構えが立法化されています。そして、今回のTPPでは、国民皆保険制度が維持できなくなるのではないかと心配されています。

世界に誇れるわが国の医療体制が、近年、変わりそうな流れがあるのです。

今こそ、企業やマスコミの報道を額面通り信じるのではなく、私たちの生活のために、何を維持し、何を改めるべきなのかをこうした書籍を参考にして自覚的に考えていかねばならないと思います。

デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ

デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ

  • 作者: ベン ゴールドエイカー
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/05/19
  • メディア: 単行本


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pandan

自分たちが考えないと
いけないですね。
by pandan (2013-03-24 04:46) 

isoshijimi

そうですね。思ってもいないところで騙されていたり、のせられていたりすることがあるのですね。
いかにして正しい情報を得ていくか・・・。
by isoshijimi (2013-03-24 05:28) 

自称隊長

う〜ん。とうなってしまいました。おっしゃることは一見当たり前のようですが、そこまで考えずに宣伝文句に振り回されていました。気をつけよう。
私の記事にナイスとコメントありがとうございます。保護者の立場としては、はっきり分かる結果、それがご指摘いただいた愛の手帳などだとおもいますが、そういうものがないとなかなか次のステップに移る決意が持てず、結果中途半端に力のある子供達が放っておかれて、思春期に……というパターンにはまってしまいがちなんですよね。そうなるとは限らないから、それを期待しているしかないですが。
by 自称隊長 (2013-03-24 08:00) 

ikamasa

こんにちは。科学的な根拠ってあいまいですね。どんなことがあっても、医療体制はしっかりと継続してほしいとおもいます。
by ikamasa (2013-03-24 09:02) 

旅爺さん

本当に色んなサプリメントが氾濫してますが、
効果のほどは?ですね。
by 旅爺さん (2013-03-24 10:34) 

motosoft

野毛山の図書館の横は、何度も通り抜けていますが、利用したことはないです(汗)
図書館といえば、仕事で国立国会図書館には何度も通っていて、秋の銀杏の時期はきれいです。
by motosoft (2013-03-24 11:03) 

ひでほ

家族が科学的根拠やエビデンスのないものに走って困っています。
老人を集めて、科学的根拠のない話をして、聞いた人には安く品物を売りさばき、高額なエビデンスのない薬や健康食品を売りさばく業者が多いです。
困った世の中です。
by ひでほ (2013-03-24 11:43) 

繭

なんかスッゴイ高価なコラーゲン(でしたっけ?)の小さいドリンク剤を飲んでる女性に、知り合いの薬剤師が「まず分解して自分のアミノ酸に作り直すのになぁ」と言ってました。
豚肉を食べたからって豚にはならないのと同じだそうです(?)。
あと、化粧品の美容液で「ぐんぐん肌に入ってく!」とか「肌が食べるジェリー」とか、胡散臭いです。なんのための肌よ?外界から守るための防御システムなのに、そんなものが入るワケないでしょ?と思います。
by 繭 (2013-03-24 12:52) 

ryuyokaonhachioj

色んなサプリメントとかが、多く出てますね。
どんなものでしょうね?

気温もここ何日か上がったので、花たちも
びっくり慌てて蕾がk大きくなったんでしょう。
by ryuyokaonhachioj (2013-03-24 13:34) 

やおかずみ

健康法のいろいろな情報が氾濫していますね。
正確なものを見極めることが大切ですね。
by やおかずみ (2013-03-24 13:41) 

RuddyCat-Lalah

デタラメ批判をするこの本は面白そうですね。
マスコミは絶対に取り上げはしないような気がしますね。
スポンサーのためと、自分たちが垂れ流してきた情報を
否定したくないですものね。
国営放送ならと思いましたが、企業に補助金まで出して
いたり、時の政治家は支持母体であったり。
こちらも期待できそうにありません。
残念です。
by RuddyCat-Lalah (2013-03-24 16:45) 

さんりん

度々ご訪問くださりありがとうございます。いっぷくさんのコメントには的確でうなづけるところが沢山あります。(内容が難しいのですけれど苦笑・・)それに読書のスピードが速いですね。うらやましいです。とても勉強になります。これからも訪問させて頂きます。過去のgoogleアドセンスについて書かれた記事ではっと思い直し、参考になりました。ありがとうございます。
by さんりん (2013-03-24 16:57) 

K

サプリメント、種類がありすぎてどれを飲んだらいいのかわからず
結局買っていません。これはこれで正解なのか?
by K (2013-03-24 18:21) 

昆野誠吾

いつも興味の湧く書籍を記事にされるので
おっつきません(笑
この間の江戸しぐさ事典、買ってきました。
まだ読み始めですが実に面白そうです。
2.000円はちと懐にダメージがありましたが(笑
しかしそれ以上の価値がありそうです♪
by 昆野誠吾 (2013-03-24 18:24) 

chobi

周囲を見ていると
「騙されたい人」が「騙してくれる人」を
すすんで探しているような気がしないでもなく…
「夢を売る商売」として成立しているのではないでしょうか
現実に目を向けてほしいと頼むと
「面白くない!」と怒られたりします
by chobi (2013-03-24 18:41) 

uryyyyyy

いっぷく さん、こんばんは。

情報は武器とはよく言ったものですね。
正しい情報を握っていないと・・・
破滅への階段登っているのかな。
by uryyyyyy (2013-03-24 23:52) 

chima

化粧品を使うと効果はあると思うのですが
高価なのが問題なんでしょうか
本を読んだ方がいいですねー
by chima (2013-03-25 00:55) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございました。
みなさんのブログにお邪魔した際にまた書かせていただきます。

>さんりんさん
私は今まであまり本を読まなかったので
基礎的な知識がないことに
遅きに失しましたが気付きました。
そこで、食事や睡眠時間を削っても
できれば週3回ぐらい、ブログに
感想を書けるぐらい読書をしようと思っているのです。

>chimaさん
たとえば保湿クリームは
化粧品の濃度では書かれている原材料の
真の効果は発揮できない。
しかし化粧品メーカーは
高濃度における成果を宣伝に利用している
コラーゲンや○○のDNAなどは
原材料として入っているのは事実でも
皮膚からは吸収できない
と書かれています。
化粧品は効果がない、まったくうそっぱちだと
いっているのではなく
宣伝を額面通りに受け取れない
という意味だと思います。

by いっぷく (2013-03-25 05:13) 

ackylacky

いんちき臭い団体がおかしなことを言っていると批判するのは簡単なんですが、国立大学など権威のあるところが発している情報を疑うっても、あまり聞いてもらえないこと多いです。
でも、歴史を見ていると権威って後から批判されてる事が多いですよね。
by ackylacky (2013-03-25 21:07) 

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