戦後史の正体がまだまだ話題性を保っています。戦後史の正体は、タイトルもさることながら、中身の意外性がウケているようです。
というのは、日本の「保守」イデオロギーは、タカ派であると同時に「親米」、というよりも「属米」です。そして、著者の孫崎享氏は、体制を支える側の元官僚(元外務省・国際情報局長、諜報部門のトップ)であったからです。
つまり、その立場から「正体」を明かすというのは、戦後史の見方が180度変わってしまうことに根拠を与えるものになっているわけです。
そして、私たちも、体制側の教育を受けてきましたから、おそらくは、「親米」を疑うことなく、というより、疑うべきではない、という前提でアンタッチャブルな問題にしていたのではないかと思います。
もう一度、「戦後史の正体」の目次をご紹介しておきます。
「はじめに」の後
序章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
第1章 「終戦」から占領へ
第2章 冷戦の始まり
第3章 講和条約と日米安保条約
第4章 保守合同と安保改定
第5章 自民党と経済成長の時代
第6章 冷戦終結と米国の変容
第7章 9・11とイラク戦争後の世界
あとがき
Amazonのレビューには、日を追うごとにでも様々な評価がいっそう積み上げられています。
ある人は、アメリカの顔色をうかがいながら政策遂行してきた政治家がいる一方で、多少アメリカとのあいだに波風が立っても、日本の国益上守るべきものがあるときや、アメリカのいいなりになると国益上マイナスになるときは、はっきりと主張する人間もいたことも、豊富な証言と資料で明らかにしていることを評価しています。
つまり、同書は、「反保守イデオロギー」ではあっても「反保守」ではないのです。むしろ、保守の一部の政治家に対しては深い敬意をはらっています。
そこが、戦後史の正体の特異なところです。
中には、「こういう視点から書かれた本は、今までありませんでしたし、おそらくこれからもないでしょう」という著者の自画自賛を「自分ひとりが知っている、書いたというのは不愉快だ」という意見もあります。
それもまた正しい指摘です。
しかし、です。革新政党系の識者やブレーンなら、そうしたことをかけるだろうし、今までにも書かれてきたのです。
ですが、戦後史の正体は、保守の側から保守を暴露したわけです。その点が今までにない説得力をもっているということです。
戦後史の正体、興味は尽きません。
2012-09-02 12:00
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