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ネット画像無断使用の判決「100万円」は、高いか安いか…… [社会]

戦後史上、無体財産に対する法整備が今こそ求められているときはない。なぜなら、ネットが普及して、それにともなう著作権や名誉起訴などのトラブルが続発しているからだ。

インターネットが一般の家庭や職場に普及して20年足らず。その真ん中へんにあたる2004年にこんな裁判があった。

東京地裁(三村量一裁判長)は04年6月11日、インターネットのサイトの写真をテレビニュースで無断で使われ著作権を侵害されたとして、米国コロラド州で邦人向け週刊誌を発行する今田英一さんが日本テレビに4500万円余の損害賠償などを求めた訴訟で、計100万円の支払いを命じた。

判決によると、日本テレビは2001年7月、元米デンバー総領事をめぐる公邸修繕費の水増し請求問題をニュース番組などで取り上げた際、今田さんの写真を無断で使った上に、ホームページ全体を映した場面では「元総領事のホームページ」などと事実と違うナレーションまで付けた。写真は12回放送されたが、判決は損害額を「放送1回あたり5万円」と認定して、それに誤報の慰謝料などを加えたという。

今田英一さんは「認められた損害額が少なくて残念だ。これではネット上からの写真盗用の抑止力にならない」(「毎日」)と話している。「100万円」という数字は、被害者が個人(のホームページ)だからだろうが、他の訴訟と比べて、金額が妥当であるかどうかは疑問だ。

確かに、個人ネットワーカーなら裁判と言うだけで腰を抜かすだろうが、“天下の”日本テレビは、この程度の判決ではいささかも痛痒を感じまい。

げんに、今も一部の出版社では、ネットの素材をそのまま出版化しているところもある。

そこには、著作権や肖像権以前に、はたしてネット情報をそのまま出版物にできるのか、という質の根本的な問題がある。

画像はアップしてしまえばそれだけを取り出すことはできる「コピペ文化」の世界だからそうなってしまうのもやむを得ないのかもしれないが、だからこそ良識が求められるはずだ。

このブログでも書いたが、かつて東京地裁は、大原麗子に対する“たかが”ご近所の悪口を記事にしただけで、光文社に名誉毀損で何と500万もの損害賠償を命じている(2001年2月26日)。

美容院で暇つぶしに見る女性週刊誌における、一介の女優の取るに足らない記事の方が、キー局のニュース番組における著作権侵害や(人を傷つける)誤報よりも5倍も賠償額が高いというのは、どう考えてもおかしいんじゃないのだろうか。

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コメント 2

通りすがり

故 大原麗子さんは、押しも押されぬ大女優。週刊誌の影響による、500万以上の実質的な損害(CM・映画のオファー減)はあったと思います。このテーマで引き合いに出されてもそぐわないと感じました。
でも、著作権や肖像権を考える、よい勉強になりました。ありがとうございます。
by 通りすがり (2012-06-18 08:25) 

いっぷく

通りすがりさん。コメントありがとうございます。
名誉毀損裁判で、「大原麗子事件」「清原和博事件」が高騰化の
きっかけになったというのは、弁護士、学者、ジャーナリストみな
口にしていますが……。
そうではないということでしょうか。

それと、「500万以上の実質的な損害」の具体的な
根拠がわかりませんが、これまで「逸失利益」が
そのまま賠償額にならないものがなったというのが問題なのです。

書かれてナンボの芸能人が
いちいち都合の悪いことを書かれたからといって
逸失利益を賠償するような判例ができてしまったらどうなるか。

たとえば、芸能人が収入補償の目的で
マスコミをハメて賠償を勝ち取ることもできます。

この時点で、すでに大原麗子さんは人気にかげりが出ていました。
私は、そうしたことに対する大原さんの焦りもあったと思っています。

ちなみに私は、大原さんが落ち目になっても
年賀状のやりとりは続けていました。
by いっぷく (2012-06-18 17:04) 

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